妊活のためにサプリメントを服用する方も多いが、もっと気軽に始められる方法として、ナッツ類を習慣的に摂取するのが良いかも知れない。
モナシュ大学が主導した最近の研究によると、ナッツを食事に取り入れることで、精子の質を最適化し、男性の生殖能力を高める可能性があることが明らかになったのだ。
研究者らは、875人（男性646人、女性229人）が参加した4つの研究をレビューに含めた。そのうち2件は観察研究であり、残りの2件はいずれもランダム化比較試験（RCT）であった。
2つのRCTは、同じような年齢層（18歳から35歳）の健康な男性223人を対象としたもので、典型的な欧米式の食事をしていると報告されている。一方は、殻をむいたイングリッシュウォールナッツを1日75g、12週間摂取させたもので、もう一方は、クルミ30g、アーモンド15g、ヘーゼルナッツ15gを混ぜたものを60g（両手いっぱい）、14週間摂取させたものである。両試験とも、対照群にはナッツを含まない通常の食事を摂取させた。この研究では、西洋食の一部として毎日少なくとも2つかみ以上のナッツを摂取することで、活力、運動性、形態といった精子の質のマーカーが改善されることがわかったが、精子濃度は改善されなかった。
研究結果は、ナッツの摂取が男性の精子の質を向上させる可能性があることを示唆している。ナッツに含まれる栄養素が、精子の健康に良い影響を与えると考えられそうだ。ナッツは、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質、ビタミン、ミネラルなど、精子の健康に有益な成分を豊富に含んでいる。
このレビューの筆頭著者であり、モナシュ大学栄養・食餌学・食品学部のBarbara Cardoso博士は、ナッツの消費量は、運動量など他のライフスタイル要因に左右されないと述べている。
「試験参加者は、必ずしも健康的とはいえない欧米風の食生活を送っていた。つまり、普段の食事にナッツを加えることで、それ以上食生活を変える必要なく、プラスの効果が得られたということです」と彼女は語った。
この研究は、男性の生殖能力を高めるための食生活の重要性を強調している。ナッツの摂取は、精子の質を改善するだけでなく、全体的な健康にも良い影響を与える可能性がある。したがって、ナッツを日常の食事に取り入れることは、男性の生殖健康を向上させるための簡単で実用的な方法となるかもしれない。
「ナッツは太ると思っている人が多いようですが、研究によると、毎日1～2つかみ食べる人は、食べない人に比べて、実は痩せている可能性が高いのです。また、ナッツには一価不飽和脂肪酸、抗酸化物質、食物繊維など、健康に欠かせない栄養素が含まれています」と、この研究の責任著者の一人であるNicole Kellow氏は述べている。
しかし、すべてのナッツが同じように作られているわけではない、とも警告する。
「生のナッツかローストしたナッツのどちらかです。糖分は高血圧やインスリン抵抗性など、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があるので、塩漬けや加糖のナッツ類は避けたいですね」。
この研究は、男性の生殖健康に関する重要な情報を提供し、生殖能力を高めるための食生活の選択に関する新たな洞察を与えている。ナッツの摂取が男性の生殖能力に与える影響については、さらなる研究が必要であるが、このレビューは、食生活が生殖健康に与える影響についての理解を深める一助となるであろう。しかし、博士はまた、ナッツ類が女性の不妊に及ぼす影響について、これまで研究がなされていないため、さらなる研究が必要であるとも述べている。
論文
- Advances in Nutrition: Nut consumption and fertility: a systematic review and meta-analysis
参考文献
- Monash University: Nuts may enhance fertility for men: study
研究の要旨
ナッツ類にはオメガ3系多価不飽和脂肪、食物繊維、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールが豊富に含まれていることから、ナッツ類の定期的な摂取は生殖機能を改善するための簡単な戦略であることが示唆される。本系統的レビューおよびメタアナリシスは、男女におけるナッツ摂取と不妊治療成績との関連に関する最新のエビデンスを提示することを目的とした。Ovid MEDLINE、Embase、CINAHL、Scopusを、開始時から2023年6月30日まで検索した。対象とした論文は、生殖年齢（18～49歳）のヒトを対象とした介入研究または観察研究で、食事からのナッツ摂取（最低3ヵ月）が妊孕性に関連する転帰に及ぼす影響（または関連）を評価したものであった。健康な男性における精子の総運動率、活力、形態、濃度に対するナッツ摂取のプール効果推定値を算出するために、ランダム効果メタアナリシスを実施した。875人（男性646人、女性229人）が参加した4件の研究がこのレビューに含まれた。健康な男性223人が参加した2件のRCTのメタアナリシスでは、60g/日以上のナッツの摂取は対照群と比較して精子の運動率、活力、形態を増加させるが、精子濃度には影響を及ぼさないことが示された。非ランダム化研究では、食事からのナッツ摂取と男性における従来の精子パラメータ、あるいはARTを受けている男女における胚着床、臨床妊娠、生児出生との関連は報告されていない。我々のメタアナリシスは、健康な男性において、欧米式の食事の一部として毎日少なくとも2食分のナッツを摂取することが、男性の受胎可能性の予測因子である精子パラメーターを改善することを示している。ナッツはその栄養学的プロフィールから、生殖を成功に導く可能性があることがわかった。
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