Appleは本日、Mac向けとして初めての3nmチップである、新しい「M3シリーズプロセッサー」を発表した。発表された、「M3、M3 Pro、M3 Max」というチップは、CPUの強化も勿論行われているが、それ以上にGPUに焦点を当てて大きな改良が行われている。これは、プロフェッショナルアプリケーションとゲームパフォーマンスを向上させるためのものだ。3つのM3チップはすべて新しいMacBook Proモデルでデビューし、M3は新しい24インチiMacにも搭載される。
M3 | M3 Pro | M3 Max | |
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製造プロセス | TSMC N3B 3nm | TSMC N3B 3nm | TSMC N3B 3nm |
トランジスタ数 | 250億個 | 370億個 | 920億個 |
CPU:パフォーマンスコア | 4コア | 6コア | 12コア |
CPU:高効率コア | 4コア | 6コア | 4コア |
GPUコア | 10コア | 18コア | 40コア |
ディスプレイコントローラー | ディスプレイ 2 台 (内部 1 台 + 外部 1 台) | ディスプレイ 3 台 (内部 1 台 + 外部 2 台) | ディスプレイ 5 台 (内部 1 台 + 外部 4 台) |
Neural Engine | 16コア 18 TOPS (FP16) | ||
メモリコントローラー | LPDDR5-6400 8x 16 ビット CH (128 ビット) 合計帯域幅 100GB/秒 (統合) | LPDDR5-6400 12x 16 ビット CH (192 ビット) 合計帯域幅 150GB/秒 (統合) | LPDDR5-6400 32x 16 ビット CH (512 ビット) 合計帯域幅 400GB/秒 (統合) |
ユニファイドメモリ最大容量 | 24GB | 36GB | 128GB |
エンコード/デコード | 8K H.264、H.265、ProRes、ProRes RAW、AV1 (デコード) |
M3
ベースとなるM3には、4つのパフォーマンスコアと4つの効率性コアを備えた8コアCPUが搭載される。AppleはCPU性能についてM1より最大35%高速として、あえて前モデルとの比較を避けた。
Appleが昨年M2を発表した際、CPU性能はM1より18%高速だと述べていた事から、単純計算でM2比較で14%の性能向上と判断できる。また、M3は次世代アーキテクチャを採用した10コアのGPUを搭載しており、グラフィック性能はM1より65%高速だという。M3は最大24GBのユニファイドメモリをサポートし、(iMacやMacBookに内蔵されているものに加えて)外部ディスプレイを1台サポートする。
M2と比較すると、M3にはコアが追加されていないため、性能向上はアーキテクチャの改良とクロック速度の向上だけに頼ることになる。
M3 Pro
M3 Proは、6つのパフォーマンスコアと6つの高効率コアを持つ改良された12コアCPUと、M1 Proより最大40%高速な18コアGPUを搭載している。M3 Proのトランジスタ数は370億個で、M2 Proより30億個少ない。M2 Proは8つのパフォーマンスコアと4つの効率コア、さらに19ものGPUコアを搭載していた。M3 Proは同じく12コア構成だが、パフォーマンスコアが2つ減って6つになり、逆に高効率コアが2つ増えており、GPUは最大18GPUコアである。最大メモリ容量は32GBから36GBへとわずかに増加している。Appleによれば、CPU性能はシングルスレッド・タスクでM1 Proより最大30%高速で、こちらもM2 Proとの直接比較は避けられた。パフォーマンスコアの減少やGPUコア数の減少などもあり、性能面での大きな向上は見込めないかも知れない。
M3 ProはM3(コア数は同じ)やM3 Max(コア数を増加)よりはアップグレードが少なく、中途半端なアップデートのように見える。これはProからMaxを選択する動機を少しでも作りたかったからかも知れない。
M3 Max
M3 Maxに関しては、トランジスタ数が920億と、M2 Maxの670億から大きく飛躍している。その多くを占めるのがCPUのM3 Maxで、12個のパフォーマンスコアと4個の効率性コアが含まれており、M2 Maxよりもパフォーマンスコアが4個多い。GPUも少し大きくなり、最大38コアから最大40コアに増加している。最大メモリ容量も96GBから128GBに増えた。
Appleによれば、M3 MaxのGPU性能はM1 Maxより最大80高速だという。Appleは、M2 Maxの発表時、グラフィック性能はM1 Maxより最大30%高速だと主張していた。
GPU機能の強化
単純な処理速度以外にも大きな改良が加えられたGPUでは、グラフィックスとプロアプリケーション向けの次世代アーキテクチャが採用されている。M3チップには、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングとメッシュシェーディングが搭載されている。
既にNVIDIAの存在やAMDのGPUではお馴染みのハードウェア・レイトレーシングだが、Appleシリコンへの搭載はA17 Proに続き2例目となる。この機能追加の意義は大きく、ゲーム開発者が最新のコンソールやゲーミングPCなどでしか見られないような、改善された影や反射の表現をMacゲームにもたらすことを可能にする。ハードウェアアクセラレーションによるメッシュシェーディングは、開発者にとって、ゲームやGPUを多用するアプリケーションの複雑なシーンをより柔軟に改善することができる。
さらM3チップには新しいダイナミック・キャッシング機能も導入されている。これは、GPUを使用する各タスクに必要な正確な量のメモリだけを、ハードウェア上で動的に割り当てるものだ。Appleによれば、これは業界初であり、透過的で自動的なプロセスであるため、開発者はこれを中心に構築する必要がないという。これにより、ユーザーとしてはGPUの平均使用率が向上し、プロフェッショナル向けアプリやゲームのパフォーマンスが向上するという恩恵を受けることが出来るわけだ。
これがMacのゲーム事情にどう反映されるかは不明だが、パフォーマンスの向上、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシング、新しいダイナミック・キャッシング機能などは、ゲーム開発者や潜在的なM3 Macオーナーにとって大きなメリットとなりそうだ。あとは、Macにもっと多くのゲームが登場するのを待つだけとなる。Appleは今年初め、開発者向けにProtonのようなツールを配布し、WindowsゲームをMacに移植するよう促している。
MacユーザーはAppleのGame Porting Toolkitを使って、M1チップやM2チップ上でさまざまなDirectX 12ゲームを動かしている。Apple独自の翻訳レイヤーを使った場合、パフォーマンスはやはり落ちる部分もありそうだが、Macが現実的なゲームプラットフォームとなる日はも遠くはなさそうだ。
また、M3チップは昨今重要視されているAIへの対応も忘れていない。M3、M3 Pro、M3 Maxは、機械学習モデルを高速化するために改良された新たなニューラルエンジンが内蔵されている。Appleはまた、M3ファミリーのチップに初めてAV1デコーダーを搭載し、AV1コンテンツをより電力効率よく再生できるようにしている。
電力効率についても、AppleはM3ファミリーを3nmプロセスに移行しているため、期待したいところだ。発表では、M3でM1と同等のマルチスレッド性能を、半分の消費電力で実現することを約束している。また、Appleの発表では、新しいMacBook Proのバッテリー駆動時間は最大22時間となり、Mac史上最長となる。
AppleはM3チップを24インチiMacに搭載して11月7日に出荷し、M3とM3 Proは14インチと16インチのMacBook Pro新モデルに搭載して11月7日に発売する。M3 Maxは11月後半に出荷が開始される。
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