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精子の機能を1日“オフ”に出来る男性用避妊薬がマウスで有望な結果を示す

Weill Cornell Medical College(WCM)の研究者が、非ホルモン性で可逆的な男性用避妊薬として機能する、革命的な化合物のマウス試験に成功したことを発表した。

現状、男性の場合、現在利用できる避妊法は精管切除とコンドームの2つだけだ。研究者によると、前者は元に戻すのが難しく、後者は失敗率が最大で15%にものぼるとのことだ。

しかし、WCMの科学者が開発した新薬は、これらの問題をすべて解決してくれそうだ。この薬は、精子の機能に不可欠な可溶性アデニル・サイクラーゼ(sAC)と呼ばれるタンパク質を標的にすることで効果を発揮する。これまでの研究で、sACの遺伝子を自然に欠いたマウスや男性は不妊であるが、それ以外は健康であることが判明していた。そこで研究チームは、sACを阻害することが避妊に有効かどうかを調査することにした。

研究グループは、sACを阻害するTDI-11861という化合物をマウスに投与し、生殖能力と性行為に及ぼす影響を観察した。

TDI-11861を雄のマウスに注射し、経口投与した後、雌のマウスと交尾させた。交尾の約30分後、マウス体内の精子細胞と交尾中に雌の生殖器に放出された精子細胞を調べた。

その結果、TDI-11861は精子細胞をほとんど無機化し、成熟させないことがわかった。この酵素は、精子の活動を阻害することに成功したのである。

sAC阻害剤をマウスに注射してから2時間半ほど経過すると、精子細胞は若干の運動性を示すようになった。しかし、完全に運動性を取り戻すには、24時間かかった。

そして、この雄マウスが24時間後に別の雌マウス群と交尾したところ、雌は妊娠した。このことから、sAC阻害剤(TDI-11861)が体内で完全に代謝され、マウスが生殖能力を取り戻したことが確認された。

また、TDI-11861の使用によるマウスの性行為や機能への副作用は確認されなかったという。マウスにこれらの薬を6週間与え続けても悪影響がないことを確認した。

研究者らは、これまでの男性用避妊薬の開発努力は、主に精子の生成(造精)を阻害するホルモン法に集中していたことを示唆している。このような慢性的な治療法は副作用が出やすく、すべての男性に効果があるわけではない。

バルバック氏とそのチームは、生殖器系が人間とよく似ているウサギを対象に、今後さらにsAC阻害剤の試験を行う予定である。しかし、今回の発見からすると、TDI-11861は画期的な男性用避妊薬の開発に有望であることは間違いなさそうだ。

この研究には参加していない英国アングリア・ラスキン大学の避妊の専門家であるSusan Walker氏は、このピルが実際に市場に出るかどうか「少し疑問だ」とAFPの取材に対して述べている。

この柔軟性は、他の実験的な男性用避妊薬よりも魅力的な選択肢となる。数週間かけて生殖能力を低下させたり、子どもを作ろうと思えば回復させることができる。

しかし、ほとんど即効性があるという「目を引く利点」は、「性的パートナーがピルを服用するのを見ることができる可能性」を提供すると彼女は言った。

研究者たちは、3年以内に最初の人体実験を行い、最終的には8年以内に製品化したい計画とのことだ。


論文

参考文献

研究の要旨

妊娠の約半数は意図しない妊娠であるため、既存の家族計画の選択肢は不十分である。男性にとっては、コンドームかパイプカットしか選択肢がなく、現在行われている男性向けの新しい避妊法の開発のほとんどは精子の発育に影響を与えるため、避妊には数ヶ月の前処置を継続する必要がある。ここでは、男性が性行為の直前に必要な分だけ避妊薬を服用する、オンデマンド避妊の革新的な戦略について概念実証を行った。可溶性アデニルシクラーゼ(sAC)は、精子の運動性と成熟に不可欠である。我々は、安全で滞留時間の長い急性作用型sAC阻害剤の単回投与により、雄マウスが一時的に不妊になることを示した。マウスは正常な交尾行動を示し、翌日には完全な生殖能力を回復する。これらの研究は、sAC阻害剤が男性のオンデマンド避妊薬のリード化合物であることを明らかにし、これまで検証されていなかった避妊のパラダイム、すなわちたった1回の投与によるオンデマンド避妊と男性の薬物的避妊を生体内で証明するものである。

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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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