中国が、米国の技術規制に反対してWTOに訴えをしたことが報じられたばかりだが、DigiTimesの新たな報道によると、米国政府は今週、中国の3D NANDメーカーYMTCを、中国の他のハイテク企業数十社とともに、商務省の「エンティティリスト」に追加する予定であるという。このリストに掲載された企業は、米国企業が商務省の特別輸出許可を取得しない限り、米国企業から機器やソフトウェア、その他の技術を調達することができなくなると言うことで、事実上の輸出禁止措置となる。
- Financial Times: US to add Chinese chipmaker to trade blacklist
- DigiTimes: US to add more than 30 Chinese companies to trade blacklist
この決定に先立ち、米国では10月に既に一部のチップ製造装置の中国への輸出を規制している。これによって3D NANDメーカーのYMTCは、128層以上の3D NANDを製造するための米国のウエハー製造装置(WFE)を調達することができない状態になっていた。
加えて今回、米国製のウェハーファブ装置や、米国の知財(検査用工具を含む)、ソフトウェアなどの技術を含むあらゆるウェハーファブ装置へのアクセスを失うことになり、YMTCはさらに困難な状況に陥ることになる。
米国商務省産業安全保障局(BIS)は10月上旬、YMTCをはじめとする30社を、製品の善意(エンドユーザー)および当該善意が中国の軍事力強化に関与しているかどうかを特定できないとして、未検証者リスト(UVL)に追加していた。
UVLに掲載された企業は、60日以内にその製品が輸出規制の規則に違反していないことを証明しなければならない。これは通常、企業が米国商務省に検査と検証を行うことの許可を得なければならないことを意味する。もし、米国商務省が満足するようなチェックができなかった場合、その企業はエンティティリストに掲載される。
先週、中国政府は、(YMTCを含む)いくつかの企業に対する米国の輸出管理当局の査察を許可し、譲歩したように見えたが、こうしたチェックにはある程度の時間がかかる。まだ完了していないようなので、YMTCと他の企業は当分の間、エンティティリストに掲載されることになる。
FTは、YMTCがHUAWEIにNANDチップを供給していたと報じているが、これは米国の輸出規制に違反することになる。また、YMTCはEntity List入りに向けて、必要な機器を備蓄していたようだ。
エンティティリストは実質的にブラックリストであり、ブラックリストに載ると、YMTCは規制の対象となる米国のすべての技術にアクセスできなくなるため、YMTCにとっては死活問題だ。HUAWEIとその子会社がエンティティリストに掲載された結果、チップ設計に用いられるEDA(電子設計自動化)ソフトウェアやTSMCが製造するチップなど、米国で設計されたあらゆる技術を用いたソフトウェアやハードウェアにアクセスできなくなった。これにより、HUAWEIのシステムオンチップの開発能力は大幅に制限され、大量生産する能力もほぼ失われてしまった。
Reutersによると、中国が世界貿易機関(WTO)に、米国のチップ技術輸出規制は違法だと訴えたという。だがこれ自体、米国に反中国技術政策を撤回させることに成功する可能性はほとんどない。
今後、YMTCをはじめとする30社の中国企業がHUAWEIと同じ問題に直面することになるが、そのすべてが米国の技術を利用せずに生き残ることができるかどうかは、時間が経ってみないと分からない。
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