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米国の核融合反応実験で史上初めて投入エネルギーよりも多くのエネルギーを生み出すことに成功

米国・ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の発表によると、地球上で初めて、制御された核融合反応によって、運転に必要な電力を上回る電力が生成された(正味のエネルギー獲得:Net energy gain)ことが正式に確認されたとのことだ。これは、人類が化石燃料や従来の核分裂反応による原子力発電所に代わる、ほぼ無限の、クリーンな代替エネルギー源を獲得するための、重要な一歩となる歴史的な結果である。

既に前日、Financial Timesによって内部関係者の話からこの偉業が発表される可能性が示唆されていたが、本日改めて公式な発表が行われた形となる。

核融合プロセスでは、2つの軽い原子核が結合して1つの重い原子核を形成し、その過程で大量のエネルギーを放出する。

反対に、現在原子力発電所で行われている反応である核分裂反応は、重い原子を分裂させ、それによりエネルギーを得るもので、その過程で多くの廃棄物が発生し、長期間にわたって放射線を出し続ける。福島第一原子力発電所の事故を考えてみれば明らかなように、放射性物質は危険で、安全に保管する必要がある。

だが核融合ははるかに大きなエネルギーを生み出し、短寿命の放射性廃棄物は少量にとどまる。そして重要なのは、このプロセスは温室効果ガスを排出しないので、気候変動に影響しない。まさに人類にとって夢のエネルギー源なのだ。

だが、核融合で元素を強制的に結合させ、それを維持するためには、非常に高い温度と圧力が必要だ。これまで、核融合を実現するために投入された量以上のエネルギーを生み出すことに成功した実験はない

だが、それが今回初めて達成されたのだ

実験はローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設にて12月5日に行われた。重水素三重水素(トリチウム)という2種類の水素同位体からなる燃料が入った小さな金のカプセルに、192本のレーザーが照射された。このレーザーは非常に強力で、カプセルを太陽の中心よりも熱い1億5000万度まで加熱し、地球大気の1000億倍以上に圧縮することができる。これにより、外側のダイヤモンド層がプラズマ化し、この力によって、カプセルは自ら崩壊し始め、水素原子が融合して膨大なエネルギーを放出する。

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核融合点火は、国立点火施設のレーザーエネルギーを、hohlraumというカプセルの中でX線に変換し、燃料カプセルを爆縮するまで圧縮し、高温高圧のプラズマを発生させることで行われる。 (Credit: LLNL)

具体的には、205メガジュールのレーザーを照射することにより、核融合反応によって315メガジュールのエネルギーが放出されたとのことだ。つまり与えられたエネルギーよりも約50%多いエネルギーを放出されたのだ。これは、事前のリーク情報よりもさらに良い結果であった。ローレンス・リバモア国立研究所のチームは、先週、データを解読し、正確な結果を明らかにした。

「実験室での核融合点火の追求は、人類がこれまでに取り組んだ最も重要な科学的課題の一つであり、その達成は科学、工学、そして何よりも人々の勝利である」とLLNL所長のKim Budil博士は述べている。

重水素-三重水素の燃料のうち、核融合反応で燃焼したのはわずか4%で、改善の余地は十分にあることが示唆された。金のシリンダーの製造には約2週間、ダイヤモンドでコーティングされた燃料ペレットの製造には約7ヶ月を要した。

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2022年12月5日、LLNLの国立点火施設で点火を達成するために使用されるタイプの極低温ターゲットを収納するカプセル。 (Credit: LLNL)

これは重要なマイルストーンだが、注意すべき点がある。今回の結果は入力されたレーザーのエネルギーに対する出力エネルギーについて焦点を当てていることだ。実際に2メガジュールのレーザーを照射すためには、送電網から300メガジュールのエネルギーが用いられている。今日の発表は「正味のエネルギー獲得」の限定的な定義に依存している。つまり、本日の結果を持って、ただちに核融合が実用化されるわけではなく、まだまだ道のりは長いと言うことだ。

また、核融合を実現する方法は、レーザーだけではない。JETを含む他の取り組みでは、トカマクと呼ばれる磁気装置を使ってプラズマを閉じ込め、加熱している。どのような方法であれ、発電所でこの方法でエネルギーを生み出すのは、まだ何十年も先の話だろう。今日の発表もその一つである。

だが、実際に核融合発電への道筋が開かれた意義は大きい

Budil所長は発表でこう述べている。「私たちは長い間、そのタイムスケールを縮めることができない状態にありました。なぜなら、私たちはこの最初の基本的なステップを必要としていたからです。ですから、今日、私たちは、次のステップを踏み出すために何が必要かを理解し始めることができる、素晴らしい立場にいるのです。」

インペリアル・カレッジ・ロンドンのプラズマ物理学教授で、慣性核融合研究センターの共同ディレクターであるJeremy Chittenden氏は、「真のブレークスルーの瞬間」と述べ、「これは、核融合の “聖杯”と呼ばれる、長い間求められてきた目標が本当に達成できることを証明するものです」と、BBCに語っている。

「民間企業がこのゲームに参加することが必要です。この画期的な技術のために、これほど多額の公的資金が投入されたことは本当に重要です。しかし、これを商業レベルに持っていくために必要なすべてのステップは、依然として公的研究と民間研究を必要とするのです。」とBudil所長は言う。

実際に、既に民間からの核融合エネルギー実現への投資は増加している。今回の発表はその流れに拍車をかける可能性がある。そしてそれが更なるブレークスルーを生む可能性にも繋がるだろう。

また、Budil所長は、機能的なプラントは我々が考えるほど遠い未来の話ではないとも言及した。「協調的な努力と投資により、数十年の基礎技術の研究により、発電所を建設できる状態にすることができる」これは、過去に予測された50年や60年よりも短いものだ。つまり、あなたが生きている間に、最初の商業核融合炉を見ることができるかもしれないのだ。


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