世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリ)であるTSMCは、その顧客企業に対して、2023年からの値上げを伝えているようだ。
Digitimes Asia : TSMC plans 5-9% price hike starting in 2023
- TSMCが顧客企業に対して最大9%の値上げ要請を行っているとの噂
- 値上げは、先端プロセスと成熟プロセスの両法に適用
- この値上げは2023年1月から適用される
TSMCが最大9%の値上げ要請
DigiTimesの取材によると、Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.(TSMC)は、2023年に5%から9%の値上げをする必要がある旨を顧客に伝えているとのことだ。この値上げは、TSMCの先端プロセスおよび成熟プロセスの両方に適用される。
TSMCは、2021年、2022年と2年連続で値上げを行っている。特に2022年には10%~20%の値上げを行っている。TSMCの顧客に名を連ねるのは、Apple、AMD、Intel、NVIDIA等、多くのユーザーを抱える超大手だ。
DigiTimesによると、TSMCはより強気な見通しを立てており、年間売上高が30%増加し、長期的な年平均成長率(CAGR)が15%から20%になると予想している。TSMCが2022年第1四半期に前年同期比35.5%増と過去最高の増収を記録したことを考えると、これはそれほど外れてはいないかもしれない。
民生機器や在宅ワーク用デバイスの需要急増により、パンデミックが半導体業界にどのような影響を与えたかは、多くの消費者が認識していることだろうが、世界的な規制緩和の流れから、これらの民生機器市場セグメントは縮小してきている。また、ロシア・ウクライナ戦争と燃料価格の高騰という2つの影響によって、消費意欲が減退し、必需品以外の電子機器への支出も減少している。
しかし、先ほど示したTSMCの顧客は、コンシューマー領域以外にも大きな市場を持っている。DigiTimesによると、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)分野と5Gにおける強い需要と長期的な構造アップグレードの必要性が、成長を促進するとしている。また、特に電気自動車の需要が増えていることから、自動車産業における半導体の需要も高まっている。
DigiTimesはまた、米国がSMICやHua Hong Semiconductorといった中国の半導体企業に対してさらなる制裁を課した場合、TSMCはそういった政治的な要因さえも味方に付けられると見られている。制裁の噂さえあれば、企業はサプライチェーン崩壊の可能性を避けるために、TSMCのような中国以外のメーカーに移行する可能性があるからだ。
DigiTimesによると、TSMCの今回の値上げは、海外の工場建設の遅れと試運転の支出による財務的な負担が原因である可能性があるという。DigiTimesは、米国の建物、スタッフ、リソース価格などが、世界的なインフレの影響もあって、当初の予想よりも高くなっていることを指摘している。
TSMCによる5%〜9%の値上げは、2023年1月に開始される。
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