火星探査機InSightは、火星の表面から送信された写真が、最後の写真になった可能性がある。この数週間、ソーラーパネルからのエネルギー生成能力が低下しているため、ランダー(着陸船)は火星の埃っぽい環境に屈してしまったようだ。
ランダーやローバー(探査車)が沈黙してしまうのは、いつも悲しく、どこか切ないものだ。それぞれのミッションによって個性があり素晴らしいものだが、この日が来ることは何ヶ月も前からわかっていたことなのだ。
InSightはローバーではないが、複雑で野心的なミッションであることに変わりはない。InSightのHP3(Heat Flow and Physical Properties Package)装置(別名:モグラ)は、惑星に打ち込まれ、内部から表面への熱流を測定するように設計されていた。ドイツ航空宇宙センター(DLR)が設計・製造し、HP3が直面する障害を克服しようとしたが、結果を出すのに十分な深さまで機器を到達させることができなかった。
12月18日、InSightが地球からの通信に応答しなくなった。電源の低下は完全に予想されていたことだが、我々は常に何らかの幸運によって事態が継続することを望んでいる。NASAには、火星探査機が予想されるミッションの期間を長引かせた実績がある。しかし今回は、どうやら終わりが見えてきたようだ。
12月15日が、NASAが着陸機と通信した最後の日だった。つまり、InSightのミッションは、2018年11月に地表に降り立ってから4年間続いたことになる。HP3の苦戦が注目を集めたが、ランダーの他の機器は問題なく動作した。
SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)計器はInSightの主要計器で、フランス宇宙庁(CNES)が製作した。 着陸船は2018年12月19日にSEISを展開した。SEISは、マーズクエイクと、直径150kmのクレーターを引き起こした隕石の衝突を検出することに成功した。
SEISはミッション中に1300回以上の地震現象を測定し、50回は火星での位置情報を明らかにするのに十分なクリアな信号だった。
そのうちの50件は、ケルベロスフォッサという最近の地質活動の痕跡が見られる興味深い地域から発生したものだ。
SEISは、火星の内部構造を解明するために作られた。その結果、地殻は思ったよりも薄く、25〜40キロメートルしかないことがわかった。また、地殻には3つの層があり、一番上の層の厚さは10kmほどしかないことも判明した。
さらにSEISは、火星の核は溶融しているが、考えられていたより大きく、地殻の下部より密度が低いことも明らかにした。これは、溶けた鉄に軽い元素が混ざって密度が低くなっているためで、かなり冷めてもまだ溶けたままであることが説明できる。
InSightランダーは、火星を理解し、過去に居住可能であったかどうかを確認するための全体的な取り組みの一部だった。火星の内部を探査することで、火星の地質学的な歴史の一端を明らかにした。InSightの磁力計は、火星の磁場が軌道上の測定値よりもずっと強かった可能性を示し、古代の居住可能性の根拠を強めている。
NASAが「InSightは成功した」と言うのは、その通りだ。InSightのミッションが終了した時点で、着陸前よりも火星について多くのことを知ることができたのだ。しかし、ミッションが終了してしまうのは、やはり少し寂しい。もし「HP3」が成功していたら、他にどんなことが分かっていただろうかと考えずにはいられない。
この記事は、EVAN GOUGH氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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