日本を含む4大陸の21カ国が、2050年までに世界全体の原子力発電の設備容量を3倍にすることを目指す、まさに「原子力エネルギー3倍化宣言」と呼ぶにふさわしい、世界的な原子力エネルギーの大幅な増産を目指す宣言に賛同した事が発表された。この決定は、アラブ首長国連邦のドバイで開催されている国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP)の世界気候行動サミットで発表された。
宣言は、2050年までに温室効果ガスの排出量を世界全体で正味ゼロにし、世界の平均気温を産業革命前から1・5度上昇に抑えるという世界的な目標を達成するために、原子力エネルギーが果たす重要な役割を強調している。原子力は、気候変動の緩和に効果的に貢献できる低炭素エネルギー源であると考えられてきた。
低炭素エネルギー源
低炭素エネルギーの未来における原子力の具体的な役割は、現在進行中の議論と論争のトピックである。懸念事項には、原子力の安全性、放射性廃棄物管理、核兵器拡散の可能性、原子力に対する一般市民の認識などがある。
1986年のチェルノブイリ原発事故や2011年の福島第一原発事故のような事故は、問題をさらに悪化させている。しかし、このエネルギー源の人気は高まっているようだ。新宣言は、2050年までに世界の原子力発電能力を3倍にすることと、国際金融機関の株主に対し、エネルギー融資プログラムに原子力を含めるよう提唱することを求めるという2つの主要目標を概説した。
この新しい協定には、アメリカ、ブルガリア、カナダ、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、日本、大韓民国、モルドバ、モンゴル、モロッコ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、ウクライナ、アラブ首長国連邦、イギリスなどの国々が署名した。
その際、国際原子力機関(IAEA)の活動や、OECD原子力機関および世界原子力協会の分析を支持するなどのいくつかの提案に同意した。
土地占有面積の縮小とその他の利点
宣言はまた、発電用だけでなく、水素や合成燃料の製造など脱炭素化のための幅広い産業用途のための小型モジュール炉やその他の先進的な原子炉など、原子炉の開発と建設を支援することにコミットする事も盛り込まれた。また、再生可能エネルギーを補完し、電力部門以外の脱炭素化を可能にする柔軟性も備えている。
原子力発電所の建設には、高い初期資本コストと長い建設期間が必要であるため、文書では、世界銀行、国際金融機関、地域開発銀行に対し、それぞれの組織のエネルギー融資政策に原子力を含めるよう促すよう各国に呼びかけた。
これらの動きはすべて、原子力エネルギーが成長する可能性を示している。しかし、再生可能エネルギーとの競争は激化するだろう。再生可能エネルギーのコスト低下と、よりクリーンな代替エネルギーに対する国民の嗜好は、原子力の経済性に影響を与えるに違いなく、代替エネルギーに比べて非効率な電源になるかもしれない。
COP会議での決定は、国際的な気候変動交渉プロセスの重要な部分である。その目的は、日々進化する気候変動問題への対処の進捗状況を評価し、新たな環境公約を交渉し、地球温暖化を抑制するための実行可能で実施可能な戦略を策定することである。
今回の宣言は世界全体で原子力発電の設備容量を「3倍」を目指すものだが、経済産業省幹部は「この宣言をもって国内の原発を増やすという話にはならない」と、日本でただちに原子力発電の再開や増設に繋がる訳ではないと述べている。
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