ペロブスカイト太陽電池は、高効率である一方で、光や湿度、熱の存在下で不安定であることが知られている。だがこのたび、米ライス大学の技術者が、安定して、効率の高い二層ペロブスカイト太陽電池を製造する方法を開発した。
研究者らは、2次元ペロブスカイト太陽電池の最上層を、最下層の3次元層を破壊することなく塗布するために適切な溶媒設計を発見したという。
2次元ペロブスカイトセルは安定しているがエネルギー変換効率が低いのに対し、三次元ペロブスカイトセルはエネルギー変換効率が高いが安定性が低い。
だが、この 2 つのタイプを組み合わせると、両方の長所が前面に出てくるのだという。このバイフェイシャルセルは、両面から光が入る用途に使用することができる。2次元のペロブスカイトセルが青色や可視光を吸収し、3次元のペロブスカイトセルが近赤外線を吸収する。
「2つの層が同じ材料である場合、溶液処理された2層膜を作ることは基本的に困難です。問題は、どちらも同じ溶媒に溶けてしまうことです。3次元の層の上に2次元の層を重ねると、溶媒によって下の層が破壊されてしまうのです。しかし、我々の新しい方法はこれを解決します。」と、化学・生体分子工学者のAditya Mohite氏は語る。
3D/2Dペロブスカイト太陽電池は、ガラス基板を除いて、約1ミクロンの厚さで、変換効率は24.5%だという。この太陽電池は、実験室で100%の太陽光に相当する光に2,000時間以上さらされたが、1%も劣化しなかったとのことだ。
研究者らは、この方法によってペロブスカイト層を「驚異的な制御性」で開発することが可能になると述べている。
Mohite教授は、「太陽電池だけでなく、光電子デバイスやLEDの電荷やエネルギーの流れも制御できるようになります」と述べている。科学者たちによると、ペロブスカイトセルを、下の3次元層を破壊することなく2次元層でコーティングできる溶媒を見つける鍵は、溶媒自体の2つの特性のバランスにあるとのことでだ。「もし、それらの間の相関関係を見つけたら、3D層を破壊せずにペロブスカイトを溶解してスピンコートできる溶媒が、4つほどあることがわかります。」
科学者達は、この新しいセルが、グリーン水素製造、オフグリッドソーラーアプリケーション、ドローン、建物一体型太陽光発電(BIPV)に役立つと期待していると述べている。
論文の概要
ハライドペロブスカイトでは、溶媒の非相溶性により下層が破壊されるため、溶液プロセスによるヘテロ構造の実現は長年の課題であった。我々は、溶媒の誘電率とグートマン供与数を利用することで、下地の基板を溶かすことなく、3次元ペロブスカイト上に所望の組成、厚さ、バンドギャップの相純粋2次元ペロブスカイト積層を成長させることに成功した。その結果、3次元-2次元転移領域は20ナノメートルであり、主に最下層の3次元層の粗さに依存することが明らかになった。2次元ペロブスカイト層の厚み依存性から、n-i-pおよびp-i-n構造で予想される傾向が明らかになり、2次元ペロブスカイトのバンドアライメントおよびキャリア輸送限界と一致する。光電変換効率は24.5%であり、T99(光電変換効率が初期の99%を維持するのに必要な時間)は2000時間以上と極めて安定していた。これは、3D/2D二層が効率を損なうことなく2Dペロブスカイト本来の耐久性を受け継いでいることを示唆している。
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