SpaceX社のStarshipロケットは、数ヶ月に及ぶ待機の後、11月18日午後10時3分(日本時間)に、テキサス州ボカチカの試験場から離陸した。世界最大のロケットであるStarshipは、エンジンが実際に点火してブースターを押し出す「ホットステージング」と呼ばれる斬新なステージ分離技術を使い、これが成功した事を報告している。
Congratulations to the entire SpaceX team on an exciting second integrated flight test of Starship!
— SpaceX (@SpaceX) November 18, 2023
Starship successfully lifted off under the power of all 33 Raptor engines on the Super Heavy Booster and made it through stage separation pic.twitter.com/JnCvLAJXPi
打ち上げ時、Super Heavyブースターに搭載された33基のRaptorエンジンはすべて点火され、ミッション中にエンジンが停止することはなかった。計画では第1段Super Heavyブースターは降下と着水を続行する予定だったが、ステージ分離後にうまく再点火せず代わりに地表上空75キロの空中で爆発した。だがStarship自体は宇宙へと向かった。数分後、SpaceXチームはStarshipからの信号を受信しておらず、船を見失った可能性があると述べた。
SpaceXX社は打ち上げ後の投稿で、分離後に「ブースターが予定外の急速な分解に見舞われた」ことを確認したが、Starship自体については「宇宙へ向かう途中でエンジンが数分間噴射された」ということ以外コメントしなかった。FAAは後に、Starshipが失われたことを確認した。
This information is preliminary and subject to change:
— The FAA ✈️ (@FAANews) November 18, 2023
A mishap occurred during the @SpaceX Starship OFT-2 launch from Boca Chica, Texas, on Saturday, Nov. 18. The anomaly resulted in a loss of the vehicle. No injuries or public property damage have been reported.
Starshipの2回目の飛行は、4月のテストと比べるとかなり洗練されていた。当時、3基のSuper Heavy Raptor2エンジンがロケット上昇と同時に停止した。4月の試験でステージ分離に失敗した大きな原因は、発射台の爆風でコンクリートの塊が飛び散り、Super Heavyのいくつかのシステムが損傷したことだった。
今回は、3分弱で行われたステージ分離の前に、Raptorのエンジンはひとつも停止しなかった。ステージ分離はスムーズで、第1段と第2段は予定通りきれいに分離した。しかし、Super Heavyにとってはステージ分離自体が目標であり、第2ステージが残りの飛行のために投棄された直後に爆発した。
Stage separation! pic.twitter.com/PipaCW1PDT
— SpaceX (@SpaceX) November 18, 2023
Starshipの第1段と第2段の分離後、Super Heavyの13基のセンターコアエンジンのうち12基が再点火に成功した。しかし、それも束の間、エンジンは再び停止し始め、爆発時にはすべてのエンジンが停止していた。この時点の直後に、Super Heavyブースター搭載の自動飛行終了システム(FTS)が作動し、「予定外の迅速な分解」、つまり爆発に至った。なぜこのような現象が起きたのかは不明だセンターコアエンジンの再点火に失敗したことが、ロケットの方向性を乱し、Super Heavyが早期に沈没する一因となった可能性がある。
これが、最終的にStarshipの上段にも訪れた。Starshipが6基のエンジンを停止して上昇を続けるはずだった第2エンジンのカットオフ前に、SpaceXは第2段からのデータが失われたと発表した。その後、自動FTSが作動したと語ったが、その理由はまたもや不明である。SpaceXのJohn Insprucker氏は、2段の飛行停止システムの作動が予想より遅く、ロケットがコースを外れて自爆を引き起こした可能性があることを示していると付け加えた。
ミッションは離陸から約7分後に終了した。機体には人もペイロードも乗っていなかった。最終的な飛行テストの目標は、Starshipがエンジンカットを成功させ、地球を半周以上滑空し、太平洋に着水することであった。
「Super Heavyブースターと船体の両方で “予定外の迅速な分解 “が行われましたが、信じられないほど成功した一日でした」とSpaceXのシニア・クオリティ・システム・エンジニアリング・マネージャーのKate Ticeはウェブキャストで語った。
宇宙への到達は今回の飛行テストの目標の一部であり、SpaceX社はStarshipが地球を短時間周回し、ハワイ近郊に落下することを期待していた。NASAの有人着陸システム・プログラムを率いるLisa Watson-Morgan氏は、昨日公開されたArs Technicaのインタビューで、打ち上げがその目標に成功したかどうかにかかわらず、「素晴らしい学習イベント」であることに変わりはなく、SpaceXとNASAが将来のテストのためにStarshipのシステムを反復し続けるためのより多くの情報を得ることができると語った。
高さ121メートル、直径約30メートルのStarshipは、人類がこれまでに建造した中で最大のロケットである。Super Heavyの33基のRaptorエンジンの推力は1670万ポンドで、SpaceXの主力ロケットであるFalcon 9の推力170万ポンドの10倍近くもある。
現時点では、Starshipの運用開始がSpaceXのミッションのカギを握っている。近い将来には、より重いStarlink衛星を一度に何十機も打ち上げることができるようになることであり、より長期的には、改良されたStarlink衛星コンステレーションから得られるキャッシュフローを火星へのミッションに充てることである。
しかし、Starshipの成功に賭けているのはSpaceXだけではない。NASAもSpaceXの船と契約し、宇宙機関のアルテミス計画のために宇宙飛行士を月に運ぶStarshipを使った月面着陸システムを開発するため、同社に最高約40億ドルの契約を与えた。その最初の着陸ミッションであるアルテミスIIIは、現在2025年に予定されている。
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