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顔がそっくりな人は遺伝子レベルで共通点があり、行動や習慣なども似る傾向にある事が研究により明らかに

世界には、「自分と同じ顔をしている人が3人はいる」というのは、以前から言われてきており、最近の研究でも示されているが、彼らはどうやら、私たちと相貌だけではなく、生活習慣や行動などにも多くの類似点が見られるという事が、新たな研究から明らかになった。

現在、地球上には約79億人もの人々が暮らしているが、彼らはそれぞれのDNA組成、周囲の環境、人生経験によって、生物学的にユニークな存在となっている。しかし、ある日、道を歩いていると、自分とそっくりな顔をした人、「ドッペルゲンガー(Doppelgänger)」に出くわす事があるかも知れない。

ドッペルゲンガーとは、古くから神話や迷信で語られてきた、自分自身の分身で、中にはドッペルゲンガーに出くわすと死んでしまうと言った類いのものもあり、これを題材とした多くの文学作品も生まれている。だが、ここでは生物学的に無関係なそっくりさんの話だ。テレビ番組でも、時々有名人のそっくりさんとして、顔がよく似た全く無関係の人が登場することを見ることがあるだろう。

そんな“ドッペルゲンガー=そっくりさん”に関して、カナダ人アーティストのFrançois Brunelle氏は、1999年から世界中で彼らの画像を収集しているという。彼のプロジェクト「I’m not a look-alike」は、世界中の似たような顔の人々を撮影し、記録しているのだ。

今回、スペイン・バルセロナにあるジョセップ・カレラス白血病研究所所長のManel Esteller博士率いる科学者たちは、Brunelle氏の研究を利用し、顔の特徴を客観的に共有するランダムな人間の特徴を分子レベルで明らかにした。

既に彼らは2005年に、同じDNAを持つ双子の兄弟(一卵性双生児とも呼ばれる)が、なぜ全く同じではないのかについての研究を発表している

今回の研究では、同じ顔を持つが生物学的には血縁関係にない人たちに的を絞った。これによって、我々の顔立ちが、生まれつき、あるいは、育ちによって決まるのかという長年の疑問に答える一助になったという。

研究チームは、Brunelle氏の研究の中から、23歳から78歳までの女性42人と男性22人の計33組の “そっくりさん “を募集した。研究チームは、集められた人たちに、客観的な類似性を定量化するために、3種類の独立した顔認識アルゴリズム(学術的なもの、Microsoftのもの、セキュリティ企業のもの)を適用した。

参加者には、身長と体重、血液型、環境、食事、ライフスタイル、人間関係などの生体情報およびライフスタイルに関するアンケートが実施された。また、遺伝学エピジェネティクスマイクロバイオーム(腸内微生物叢)のデータに注目したマルチオミクス解析を行うため、DNAサンプルを採取した。DNAは、検査可能なサンプルの中で最も安定した成分となる。これらから、ゲノムエピゲノム、細菌やウイルスの含有量(マイクロバイオーム)を特定することができるのだ。また、これら3つはすべて、細胞や組織の活性を決定するための重要な要素となる。

顔が似ている被験者に類似の遺伝子変異を発見

32組のペアから、16組が3つの顔認識アルゴリズムすべてによってクラスタリングされた。

この16人の唾液から採取したDNAをゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施したところ、このうち9組が遺伝子レベルでクラスター化が見られ、遺伝子の変異の一種である一塩基多型が19,277個も共有されていることが判明した。

研究者らは、大規模なGWASデータベースを用いて解析したところ、そっくりさんたちが共有する遺伝子部位は、5つのカテゴリーに対応することを発見した。

  • 一般集団において、目、唇、口、鼻孔などの顔面パーツの形状や形態に関連することが過去に報告されている遺伝子
  • 頭蓋骨の形に関係する骨の形成に関係する遺伝子
  • 肌の質感に関係する遺伝子
  • 顔にさまざまなボリュームを与える、液体の保持に関わる遺伝子
  • 未知の遺伝子で、現在では顔の特徴に関連する可能性があるもの

ゲノムワイド関連解析(GWAS)とSNP

ゲノムワイド関連解析(GWAS)は、ゲノムをスキャンして、特定の表現型(例えば、病気)に関連する遺伝的変異を集団全体で同定するものだ。もし、ある遺伝的変異が同じ表現型を持つ個体間で起こった場合、その遺伝的変異と表現型の間に関連があるとみなされる。関連性は相関関係であり、原因を証明するものではない。

SNPは最も一般的に見られる遺伝的変異の一種だ。例えば、DNA配列のアデノシンからチミンへの入れ替わりなど、1つのヌクレオチドに変化が生じる。

次に研究チームは、クラスター化したペアのエピジェネティックプロファイルの間に類似性があるかどうかを調査した。エピジェネティックなプロセス(DNAメチル化など)は、DNAコードそのものではなく、遺伝子の読み方を変化させる複雑な分子メカニズムである。

DNAメチル化は、DNA分子にメチル基が付加されることを伴う反応で、エピジェネティクスに深く関わり複雑な生物の体を正確に形づくるために必須の仕組みであると考えられている。メチル基は、タンパク質がDNAに結合して転写するのを妨げ、遺伝子が「活性化」される過程を停止させることができる。研究グループは、DNAメチル化解析の結果、1つのペアだけがクラスター化することを発見した。SNP解析でも同じペアがクラスター化しており、研究グループは、「根底にある共有遺伝学」によるものだろうと考えている。

一方、マイクロバイオームの類似性と相違性を評価したところ、共通するのは1組のペアのみとのことで、ここでは大きな違いがあった。

マイクロバイオームは、栄養や運動、喫煙などの環境要因に強く左右されるため、似たような遺伝子を持つ人でも、個人差が出やすいようだ。

生体情報およびライフスタイルに関するアンケートについては、Esteller氏らは、そっくりさんペアで相関する結果を発見した。顔のアルゴリズムと遺伝子の共通性で高い一致を示したそっくりさんたちは、顔の類似性だけでなく、それ以外の特徴、例えば、身長や体重などの身体測定上の特徴、タバコ中毒、IQと関連しうる教育段階などについても共通していることが観察されたのだ。

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そっくりさんには、経歴や生活習慣の点で多くの相関が見られた(画像: Manel Esteller et al., Cell Reports(2022))

著者らは、サンプル数が少なくヨーロッパ人が多いこと、白黒の2D画像を用いたことなど、この研究が制限のないものではないことを認めている。しかし、この研究結果は、顔が非常によく似た人々が共通の遺伝子型を持ちながら、エピジェネティクスおよびマイクロバイオームプロファイルによって区別されることを示している。

研究者らは、「ゲノミクスが彼らを一つにまとめ、それ以外が彼らを引き離しているのです」と結論付けている。


論文

参考文献

研究の要旨

人間の顔は、個人としてのユニークなアイデンティティを示す最も目に見える特徴の一つだ。興味深いことに、一卵性双生児は、ほぼ同じ顔立ちと同じDNA配列を持つが、他の生体指標では違いを示すことがある。ワールドワイドウェブが普及し、地球上の人間の写真を交換できるようになったことで、オンライン上で仮想の双子や家族とは関係のない二重人格と認識される人が増えている。今回、我々は、顔認識アルゴリズムによって定義された「そっくりさん」たちを、そのマルチオミクス的景観について詳細に特徴づけた。これらの個体は、遺伝子型が似ている一方で、DNAメチル化およびマイクロバイオーム景観が異なることを報告する。これらの結果は、私たちの顔を決定する遺伝学についての洞察を与えるだけでなく、他の人間の身体測定特性や性格の確立にも影響を与える可能性がある。

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