人々は紀元前2400年頃から、銅の抗菌性を利用して病気や感染症の治療や予防に役立ててきた。ウイルス、バクテリア、カビ、酵母が金属と直接接触すると、不活化するのだ。そのため、ドアノブなど、よく触れるもののコーティング剤としても使われてきた。今回新たに開発された新しい銅ナノワイヤースプレーを使えば、スプレー缶を使ってコーティングしたい場所をより簡単にコーティング出来る様になるかも知れない。
- 論文
- 参考文献
- Ames National Laboratory : Scientists use copper nanowires to combat the spread of diseases
- AZoNano : Sprayable Copper Nanowire Coating Could Help Prevent Infections
この技術は、米国エネルギー省のエイムズ国立研究所、アイオワ州立大学、ニューヨーク州立大学バッファロー校が共同で開発したものだ。この技術は、エイムズ大学がフレキシブル電子機器に回路を印刷するために開発した銅インクの過去の研究成果を基に開発されている。
研究者たちは2種類のスプレーを評価し、それぞれに長所と短所があった。1つは幅約60ナノメートル(人間の髪の毛の100分の1の幅)の純銅ナノワイヤーセグメントを組み込んだもので、もう1つは同じサイズの銅-亜鉛ナノワイヤーを用いたものだ。
どちらも、水やエタノールなどの溶液にワイヤーを懸濁させる。この液体をプラスチックやガラス、ステンレスなどの表面にスプレーし、室温で乾燥させると、薄い抗菌皮膜が形成される。
SARS CoV-2ウイルス(新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス)を殺す実験では、このコーティングを施した銅製ディスクは、コーティングしていない銅製ディスクと同じように殺菌効果があることが示された。さらに、ナノワイヤーによって表面積が大きくなったため、コーティングを施した銅製ディスクはわずか20分で殺菌が完了したのに対し、銅製ディスクは40分もかかった。
さらに、最初の10分間で、純粋な銅ナノワイヤーを含むスプレーは、銅亜鉛を含むスプレーに比べ2倍早くウイルスを不活化した。しかし、銅と亜鉛のコーティングはより長い時間効果が持続するため、再塗布の頻度が少なくなる。このため、研究者らは、実際の使用には銅亜鉛の方が適していると考えている。
「人類社会に永続的な影響を与えられる可能性があるのです。」と、この研究の著者で、アイオワ州立大学エイムズ校材料科学・工学部研究主幹・科学者のJun Cui氏は語っている。
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