Qualcommをはじめとした、5つの重要な半導体企業が、RISC-Vオープンスタンダードアーキテクチャに基づく「次世代ハードウェア」の開発に特化した新会社「Quintauris」を共同で設立したことが発表された。Quintaurisの主な目的は、RISC-Vベースの製品に対応するための単一のソースとして機能し、リファレンスアーキテクチャを提供し、さまざまな業界で広く使用されるソリューションの確立を支援することだという。
Quintaurisは8月に設立され、ドイツ・ミュンヘンを本拠地とする。設立にはQualcommの他に、Bosch、Infineon、Nordic Semiconductor、NXP Semiconductorsの4社が参加している。
RISC-Vは、「Reduced Instruction Set Computer」(RISC)の原則に基づいて開発されたCPU用のオープンスタンダード(またはオープンソース)命令セットアーキテクチャ(ISA)で、2014年に発表され、RISC-V Internationalによって管理されている。RISC-Vの基本的な考え方は、任意の企業がこのISAを使用して独自のCPUを開発できるようにすることで、Arm、AMD、Intelなどの閉鎖的なエコシステムを回避することだ。RISC-Vは登場以来、急速に成長し、2030年までに160億コアが販売されると予測されている。
Qualcommは元々Armアーキテクチャベースのチップを生産していたため、RISC-Vへの参入は一見矛盾しているように思えるかも知れない。しかし、実際にはQualcommは過去5年間、マイクロコントローラーにRISC-Vを使用しており、他の多くの企業も同様だ。Qualcommはまた、Googleと共にSnapdragon WearプラットフォームでRISC-Vを採用している。
RISC-Vのオープンスタンダードまたはオープンソースの性質は、業界プレイヤー間の協力を容易にしてくれる。
今回、Quintaurisに参加したBosch、Infineon、NXPは以前にTSMCと共に「European Semiconductor Manufacturing Company」を設立しており、Qualcommとの提携は当然の流れかも知れない。Qualcommは以前にNXPを買収しようとしたが、取引は完了する前に破談となった。Nordic SemiconductorはQuintaurisベンチャーの中で最も小さなメンバーだが、BluetoothとWi-Fi機能を備えた重要なワイヤレスチップを生産している。
Quintaurisの公式ウェブサイトによると、同社の製品は当初自動車産業に焦点を当て、その後モバイルおよびIoT(モノのインターネット)アプリケーションに対応する予定だという。また、RISC-Vハードウェア・ソフトウェアエコシステムの標準化を推進することにも焦点を当てている。この取り組みは、複数の大企業によって開発された製品の成功が標準化を実現する手助けになることを意図している。
QuintaurisのCEOには自動車業界向けの組み込みおよび接続ソフトウェア製品のグローバルサプライヤーであるElektrobitの社長兼CEOの経験がある、Alexander Kocher氏が起用された。Kocher氏はWind Riverの自動車事業部の副社長兼ゼネラルマネージャーを務めた経験もある。
Kocher CEOは、「これはQuintaurisにとって、また私たちがサービスを提供する業界にとって非常にエキサイティングな機会です。私たちは、次世代のハードウェア開発に革新とスケーラビリティをもたらし、RISC-Vの最良の要素を統一された商業的提案に組み合わせることに重点を置きます。半導体業界の最も確立されたプレイヤーの支援を受けていることは、Quintaurisが長期的で持続可能な提案であることを示しています。私たちはRISC-Vコミュニティとの協力の力を絶対に信じており、会社の規模を拡大するにつれて、エコシステムとの関わりを深め、より広範な半導体エコシステムのレジリエンスを高めるための開発を加速することを楽しみにしています」と述べている。
RISC-Vの世界に標準を導入しようとする組織は今回のQuintaurisが初めてではない。RISC-Vソフトウェアエコシステム(RISE)も存在し、RISC-V InternationalとGoogle、Intel、NVIDIA、さらにはQualcommなどの主要な業界プレイヤーの公式サポートを受けている。RISEはソフトウェアに焦点を当てているが、Quintaurisは次世代ハードウェア開発を推進する役割を担っている。
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