地球外知的生命体が存在すると仮定して、彼らが発した探査機が太陽系で見つかった場合、どんな物になるだろうか?新たな研究では、それは地球人が送り出したボイジャー探査機のような物ではなく、もっと高度に進化した物になることが予想されるとのことだ。
この研究の著者である、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学者Graeme Smith氏によれば、本研究は「未確認飛行物体」の解釈の仕方、地球外生命体の痕跡の探し方、将来の恒星間ミッションの計画などに影響を与える可能性があるとのことだ。
Smith氏の前提条件は至極単純な物で、文明は時が経つにつれてその技術を向上させるだろうという物だ。彼はこの考えに基づき、考察を進めている。そして、実は既に人類が実証していることでもあるのだ。
NASAは、1972年に宇宙船パイオニア10号を打ち上げた。その5年後、NASAは、推進力、システム、観測機器を若干進歩させたボイジャー2号を打ち上げた。ボイジャー2号はパイオニア10号より速いスピードで宇宙を旅し、着実に追いついていったのだ。そして2023年4月、ボイジャー2号はパイオニア10号を追い抜き、両探査機は太陽系の彼方の銀河系へと駆け出していく予定だ。これは、技術の進歩によって可能になったことだ。今後も技術の進歩に伴って同様のことが予想される。22世紀に打ち上げられた宇宙船は、きっと21世紀中に打ち上げられた宇宙船を追い越してしまうことだろう。
Smith氏が考えたのは、上記のエイリアンバージョンだ。もし、太陽系に恒星間を飛び越えて地球外文明からの何らかの物体が届くとすれば、それは極めて高度な物であると考えた。「もし、星間地球外文明から送られた物体が太陽系に侵入するとしたら、それは使い古されたボイジャーのような探査機に似た遺物ではなく、もはや機能していないとしても、はるかに洗練された乗り物を期待できるかもしれません。」と、Smith氏は述べている。
また、Smith氏が今回考察したのは、乗組員のいるコロニー船ではなく、乗組員のいない探査機に関心を持った点が、これまでの研究と異なる点だ。これまでも、地球外文明が銀河系に進出する可能性については様々な研究者が行ってきている。
結局のところ、もし宇宙人とのファーストコンタクトが起こるとすれば、パニックSF映画のような事態は起こらず、それは静かに、しかし驚きを持って迎えられることだろう。地球外知的生命体探査(SETI)の研究者たちは、明らかに誰かがメッセージを送っている電波信号を発見することになるだろうと言うことだ。また、我々がボイジャーを宇宙に送り出したのとほぼ同じ目的、つまり、データを収集し、我々の存在を証明するものを運ぶために送り出された未搭乗の探査機を発見することもできるだろう。
Smith氏が「back-of-the-envelope model」と呼ぶ膨大な量の計算を含むこれらの情報は、もちろん純粋な推測に過ぎない。しかし、2つの大きな疑問に答えるために、心に留めておく価値がある。
また、Smith氏の考察は、地球外知的生命体を探すにあたって、一つの方向性を示してくれている。
第一に、既知の未確認飛行現象(UAP)は実際にエイリアンの探査機なのかという点だ。Smith氏はこれについて、未確認飛行現象を評価する一つの手っ取り早い方法を提案している。「未確認飛行現象の特徴として、地球上の技術革新が現在達成できることをはるかに超えており、恒星間宇宙計画を持つ遠方の地球外文明からの乗り物の最初の到着と一致するのか?」を見ればいいとのことだ。
そして、彼の最近の研究に基づいて、その特定のハードルはかなり高く設定されている。
第二に、SETIの研究者は、太陽系内で、使用されなくなった探査機のような宇宙人の遺物について、何を、どのように探せばいいのだろうか?
「地球外文明からの仮説的なファースト・エンカウンター・ビークルは、太陽系に到着したときにもまだ機能しているほど洗練されているかもしれないのか?ホーキング博士や他の研究者が注目しているように、このようなファースト・コンタクトがもたらす結果は、人類にとって深刻な懸念材料となるかもしれない。これは、SFの領域で再び実りある土壌を見つけた話題であるが、この論文が組み立てられた文脈からは外れている。」と、Smith氏は述べている。
また、Smith氏は興味深い指摘を行っている。もし、我々が送り出した(出す)無人探査機に偶然出くわした異星人の文明についてだが、その反応は想像とは異なる物になるかもしれないと。
「もし、パイオニア11号やボイジャー2号が地球外文明の母星系に到着したならば、もっと高度な地球型宇宙船が先行していた可能性がある。この場合、この二つの宇宙船にそれぞれ搭載されているプレートや蓄音機(ボイジャーゴールデンレコード)を調べても、好奇心の強い地球外文明には、地球とその住民について新たな知識はあまり伝わらないかもしれません。」
つまり、人類が既に交流を持った宇宙人の星に遅れて過去の遺物がたどり着く可能性もあると言うことだ。過去の取り組みが否定されてしまうような事態だが、技術の革新とはそういうのもなのかもしれない。
論文
- International Journal of Astrobiology: On the first probe to transit between two interstellar civilizations
参考文献
研究の要旨
もし、ある宇宙文明が恒星間航行に探査機を送る計画に着手した場合、その目的地に最初に到着する探査機は、初期の探査機ではなく、より高度な能力を持つ探査機である可能性が高い。この結論は、ある地球外文明が恒星間計画に着手し、その計画期間中、時間の関数として出発速度が増加するような高度な探査機を打ち上げるというシナリオに基づいている。2つのモデル(発射速度が発射時刻に対して直線的に増加するモデルと、発射時刻に対して指数関数的に増加するモデル)が検討された。この論文では、地球外文明から太陽系内に到着する探査機を想定している。上記のシナリオでは、ファーストエンカウンター探査機は、地球外生命体による恒星間計画の開始後、かなり時間が経ってから打ち上げられた探査機となる。したがって、そのような探査機は、地球外文明の技術の比較的進んだ段階での産物であると考えられる。探査機を打ち上げる場所が遠ければ遠いほど、最初に出会う探査機と地上の技術とのギャップは大きくなる。また、未確認飛行現象(UAP)の解釈にも影響を与える可能性がある。UAPの飛行特性は、遠くの地球外文明から飛来したものと一致するほど特異なものなのだろうか。
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