カナダのケベック州で発生した山火事による煙が、アメリカ北東部の大部分を厚さ3,000mの層で覆っており、まるで終末映画の様な景色を見せている。地球低軌道の人工衛星は、煙が広がるのを監視しており、彼らは驚くべきことを発見した。岩石の層が地球の地質学的歴史を記録するように、巨大な噴煙の層は、今年のカナダの山火事の巨大さを表している。
巨大噴煙の構造
地上に最も近い煙の層は、大気圏の3,000m上空までそびえ立ち、その後、比較的晴れた空に変わる。約6,000m上空では、より薄い煙の層がその上に漂っている。5月にカナダ西部のアルバータ州で発生した火災では、地上から約12,000mの地点で、ごくわずかな煙の層が残っている。
アメリカ海洋大気庁の大気科学者Michael Fromm氏は、「これらの層にはそれぞれ異なる歴史があり、それを紐解くのは興味深いことです」と最近の声明で述べている。
カナダ西部の山火事で発生した煙は、しばしばアメリカ北東部の上空を通過するが、大陸を横断する頃には高度が上がっているため、地上の人々にはほとんど気づかれない。しかし、カナダ東部のケベック州はニューヨークから約800kmしか離れていないため、煙はまだ地表に近い位置にある。カナダ南東部沿岸の頑強な低気圧が、米国北東部の人口密集地に煙を引き寄せているため、このような事態になっている。
これらの情報を入手出来たのは、レーザーを使用して物体や雲層などの表面までの距離を測定する LIDAR機器の2つのネットワークのおかげでもある。LIDARとは、レーザーを使って物体や雲層などの表面までの距離を測定する装置だ。地上のマイクロパルスライダーネットワーク(MPLNET)と衛星のCALIPSO(Cloud-Aerosol Lidar and Infrared Pathfinder Satellite Observation)は、どちらも煙の異なる層の高さを測定するのに役立っている。
カナダの山火事の煙はなぜオレンジ色に見えるのか?
煙といえば灰色のイメージだが 北東部の空が不気味なオレンジ色に見えるのはなぜだろうか?
NASAの大気科学者Ryan Stauffer氏は、「煙の粒子は、波長の長いオレンジや赤に比べ、青、緑、黄色といった短い波長の太陽光を散乱・吸収しやすい」と述べている。
つまり、煙は、最も波長の長い赤とオレンジの光だけを通す、フィルターのような役割を果たすのだ。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が宇宙の塵の雲を見通すことができるのも、同じ原理によるものだ。赤外光のさらに長い波長を見ることで、短い波長を閉じ込める雲を通過することが出来る。
NASAの衛星「Terra」「Aqua」「Aura」は、さまざまな煙の層が、地球の大気が太陽光を吸収・反射する量や波長にどのような影響を与えているかを測定している。
Sources
- Earth Observatory: Smoke Smothers the Northeast
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