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電気自動車用の全固体電池の新材料が発見、充電時間や電池寿命の改善に繋がる可能性

日本の横浜国立大学とオーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究者の共同研究により、固体電池に使用できる新しい電極材料が開発された。この電極は何度充放電を繰り返しても減衰せず、電気自動車用の耐久性のある電池の製造に繋がるという。

世界的に、電気自動車シフトの流れは大きくなってきており、以前にも増して、バッテリーの重要性が高まってきている。

電気自動車で1番の問題は、充電時間だろう。急速充電の開発も進んでいるが、現状では、電気自動車の充電には何時間もかかるというのが一般的だ。

また、現在主流のリチウムイオンバッテリーでは、電解質に可燃性の有機化合物を使っているため、何らかの形で電池への負荷が大きくなり電池の温度が上昇すると、最悪の場合、燃えてしまう可能性もある。

これらの課題を解決するために、リチウムイオンバッテリーの改良も進められているが、今後のEV革命の中で、最も期待されているのが、従来のリチウムイオンバッテリーに変わる「全固体電池」だ。

全固体電池は、従来のリチウムイオンバッテリーとは異なり、電解液がなく、すべて固体材料でできているため、このような名称がつけられている。穴が開いても有害な化学物質が漏れないため、安全性が高いのが大きな特長だ。しかし、耐久性に問題があり、普及が遅れていた。

全固体電池では、電極にリチウムイオンを出し入れする充放電の過程で、充電サイクルに応じて材料の結晶構造が変化し、膨張と収縮を繰り返す。この体積変化は、電極と固体電解質の界面を損傷し、結晶化学に不可逆的な変化を引き起こすのだ。

今回、横浜国立大学の藪内直明教授を中心とする研究チームは、固体高分子形燃料電池の正極材料として、新しい材料を研究した。チタン酸リチウム(Li2TiO3)と二酸化バナジウム(LiVO2)の一部からなる、Li8/7Ti2/7V4/7O2に注目したのである。

この材料をボールミルでナノメートルの粒子サイズにすると、充放電の過程で可逆的に挿入・抽出できるリチウムイオンが多いため、高い容量が得られるようになった。

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(Credit: 横浜国立大学)

この材料は、これまで正極に使われてきた材料とは異なり、充電しても放電しても同じ体積を占める。研究者らは、このユニークな性質が、充放電の過程で起こる2つの独立した現象の絶妙なバランスによるものであることを突き止めた。

電極からリチウムイオンを取り除くと、結晶構造の自由体積が増加して収縮するが、一部のバナジウムイオンがこの新たに空いた空間に移動し、より高い酸化状態を獲得する。この後、酸素との反発相互作用により、結晶格子構造が膨張し、電極の大きさが保持される。

研究者らは、この新材料を300mAh/gの容量をもつ全固体電池で試験した。400回以上の充放電を繰り返したが、電極の劣化は見られなかった。今後、電極材料をさらに改良することで、電気自動車に適した電池の製造が期待される。

研究の要旨

リチウムイオン電池の安定性確保は、重要な課題である。電気化学的なリチウムの挿入や抽出は、電極の結晶化学を大きく変化させ、電気化学的なサイクルによる劣化の一因となることがよくある。さらに、電極は単独では機能しないため、特に全固体電池では管理が難しい。したがって、電気化学サイクル中の安定性を内在したまま、大量の電荷キャリア(Li+)を可逆的に挿入・抽出できる材料、すなわち高容量材料の発見が必要である。ここでは、高容量・長寿命の正極材料として、無秩序な岩塩構造を有するリチウム過剰バナジウム酸化物について検討した。ナノサイズのLi8/7Ti2/7V4/7O2を最適化した液体電解質中に入れると、V3+/V5+の2電子カチオン酸化還元で300mAh g−1を超える大きな可逆容量を示し、金属リチウムに対して750 Wh kg−1に達することがわかった。また、硫化物系固体電解質を用いた全固体電池では、高い可逆的なリチウム貯蔵と400サイクルの容量低下がないことが確認された。オペランド放射光X線回折と高精度ディラトメトリーにより、電気化学サイクル中の優れた可逆性とほぼ寸法不変の特性が明らかになり、これはリチウム化および脱リチウム化に伴う可逆的なバナジウム移動と関連していることがわかった。本研究は、多電子遷移金属レドックスにより高容量・長寿命電池を実現する電極・電解質カップルの一例であり、サイクル中にほぼ不変な構造を持つことを実証している。

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