NASAと欧州宇宙機関(ESA)は、史上初の火星の土壌と大気のサンプルを地球に持ち帰るための軌道に乗りつつある。両宇宙機関は、「Mars Helicopter Ingenuity:マーズ・ヘリコプター・インジェニュイティ」の実験成功と計画の概要を発表した。
NASAの実験用火星ヘリコプター「インジェニュイティ」は、火星での実験で大成功を収めた。初飛行前は、火星の大気の影響で飛べないのではと心配されたが、現在では29回の飛行を記録し、これまでの予想をはるかに超える成功を収めている。
今回の火星サンプルリターンミッションでは、「インジェニュイティ」の成功を受け、その設計に基づいた2機の新しい火星用ヘリコプターが使用される予定だ。サンプル回収ヘリコプターと名付けられたこの2機は、NASAによると、「火星の表面にキャッシュされたサンプルを回収するための二次的な能力を提供する」とのことだ。
また、NASAの火星探査機「パーサヴィアランス」の寿命予測は、サンプルリターンミッションの計画にも影響を及ぼしている。
「この先進的なミッション構造は、最近更新されたパーサヴィアランスの予想寿命の分析を考慮に入れている。パーサヴィアランスは、火星上昇機を搭載したNASAのサンプル回収ランダーとESAのサンプル転送アームへのサンプル輸送の主要な手段となる。」とNASAは発表している。
当初の計画には、万が一の事態も含まれていた。ロケットが着陸した後に「パーサヴィアランス」が接近し、サンプルを直接ロケットに転送するのだが、もしそれがうまくいかなかった場合は、ESAが火星に送り込んだ2台目のローバーが仲介役となり、サンプルが隠されている場所を訪れてサンプルを回収し、ロケットに受け渡すというものだった。
新しい計画では、この2号機が廃止された。代わって、新たに先述のインジェニュイティを元に新たに作られたヘリコプター2機が用いられる。このヘリコプターは、サンプルを軌道に運ぶロケットと同じペイロードの一部として届けられる予定だ。その結果、新しい計画では、ロケットとヘリコプターの両方を運ぶ着陸船は1機だけになり、計画全体のリスクが大幅に軽減された。
火星探査機「パーサヴィアランス」は、すでに11箇所の岩石コアと火星の大気を採取している。
NASAとESAは共にサンプルリターンミッションのための資金を完全に確保しなければならない。NASAは、ESAとの合意を “来年中に”正式なものにしたいとしている。ESAに参加している22のヨーロッパ諸国も、ミッションの変更について投票し、承認する必要がある。ミッションのコンセプトは5月に提示され、9月に投票が行われる予定である。
スケジュールとしては、両宇宙機関は2027年秋に必要なアースリターンオービター、2028年夏にサンプルリトリーバルランダーの打ち上げに向けて動いている。これが成功すれば、2033年には、人類史上初の火星のサンプルが地球の研究室に届くことになる。
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