核分裂による原子力発電は、チェルノブイリや福島の原子力発電所の事故によって「放射能をまき散らす」という一般認識が浸透しており、それが我々の脱炭素社会の実現に繋がるとは言われても、中々受け入れがたいのが現状ではないだろうか。だが、空に目を向けてみれば話は別だ。NASAは今回「月面」で稼働させるための原子力発電システムを設計するため、民間企業との契約を結んだと発表した。
月面開発とその先の宇宙開発を見据えたプロジェクトの一環としての原子力発電所
NASAと米国エネルギー省(DOE)は、宇宙核技術開発のために協力しているが、月での実証のために10年以内に打ち上げ可能な核分裂表面発電システム設計のための3つの設計コンセプト案を採択したとのこと。契約はLockheed Martin、Westinghouse 、IX ( Intuitive MachinesとX-Energyによる合弁会社)との間で、DOEのアイダホ国立研究所を通じて行われた。初期設計コンセプトの開発に、それぞれに500万ドルの資金を提供するものである。契約は12か月となっている。
今回開発される核分裂発電システムは、他の発電システムに比べて比較的小型・軽量で、信頼性が高く、場所や利用可能な太陽光などの自然環境条件に左右されずに継続的に電力を供給できる物を目指しているようだ。月の環境下で少なくとも10年間使用できる40キロワット級の核分裂発電システムとなり、月や火星での長期滞在ミッションへの道を開くものであるとしている。ちなみに、40キロワットというのは、日産リーフのバッテリーを1時間で満充電出来る様なレベルだ。
これはそれほど多くないようにも見えるが、単体または複数で月面に設置することで、NASAが計画している「アルテミス計画」のような月面長期滞在の課題の多くを解決できる可能性があるとのことだ。
NASAとDOEは、既に2018年に高濃縮ウラン燃料を使用した熱伝達技術を実証する実験を実施しており、期待した条件下で正常に動作することが示されている。
NASAはまた、この契約のために行われた研究が、将来的には深宇宙探査のための長距離宇宙船の推進システムにも応用される可能性があると述べている。
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