大西洋中央海嶺北部の、今まで未踏だった深海を探査していた海洋研究者は、海底に規則正しく直線的に並んでいる奇妙な小さな穴を発見した。海底に穴が開いていること自体はそれほど驚くべきことではないのだが、これは信じられないほど整然と、そして等間隔に点在しており、2,500mの海底ではあるが、まるで人工物のように見えるとのことだ。
- NOAA : The Case of the Mysterious Holes on the Seafloor
- The New York Times : There Are Holes on the Ocean Floor. Scientists Don’t Know Why.
2004年から発見され続けている海底の謎の人工的な穴
米国海洋大気庁(NOAA)の船「オケアノス・エクスプローラー号」に乗った研究者たちは7月23日、ロボット潜水艇を使って、ポルトガル本土に近いアゾレス諸島の北にある海底火山帯を探検した。そしてこの奇妙な穴を見付けたとのことだが、NOAAの研究者たちは、彼らが見たものが一体何だったのか、一般の人たちに協力を求めている。
その約1週間後、さらに483キロメートル離れた深さ1.6キロメートルの地点にも4つの穴があることが確認された。
「穴はほとんど人間が作ったように見えますが、その周りの小さな堆積物の山は、それらが掘削されたことを示唆しています。我々は、遠隔操作車に搭載されたツールで穴を覗き、突くことを試みたが、できなかった」とNOAAはプレスリリースに書いている。
さらに謎を深めるのは、科学者がこのような穴を見たのは初めてではないことだ。少なくとも20年間は研究者を当惑させてきた。2004年の論文では、その年に同じ地域で同じような穴が目撃されたことが報告されている。研究者たちは、この穴を「lebensspuren」と呼び、ドイツ語で「生命の痕跡」と訳している。
「穴の出所や構造については不明だが、盛り上がった堆積物は無脊椎動物による掘削、あるいは掘削除去を示すものかもしれない。しかし、どの写真を見ても、穴の中に生物が生息している形跡はありませんでした。穴が堆積物表面の下でつながっているかどうかは、見えませんでした。」」と当時の著者は書いている。
それ以降、この奇妙な穴についての新たな情報はなかったが、今回の探検では、潜水艇の吸引装置を使って穴の周りの堆積物を採取することができ、そこに何かが生息しているかどうかを明らかにすることが期待されている。
今回の探査と2004年の論文の両方に携わったNOAAの深海生物学者Michael Vecchione氏は、大西洋中部の砂の下に何が潜んでいるのかを知ることに強い関心を持っている。
「そこで何か重要なことが起こっているが、それが何であるかは分かっていません。これは、そこにまだ謎があるという事実を浮き彫りにしています。」と、Vecchione氏はニューヨークタイムズ誌に語った。
印象的な16,000kmにも及ぶ中部大西洋海嶺は、世界で最も長い山脈だ。そのため、2022年5月から9月にかけて、NOAAの探検隊「Voyage to the Ridge 2022」がこの地域に焦点をあてて探索を行っている。
また、尾根を挟むチャーリー・ギブス断層帯や、大西洋中央海嶺の東側に位置し、3つの主要な地殻変動プレートが収束するアゾレス高原も調査している。
このような活動から想像できるように、大西洋中央海嶺は地震のホットスポットであり、また、マグマが深海底の極限で生きる生物が使用する熱を供給する見事な熱水噴出孔がある場所でもあるのだ。
2022年の「Voyage to the Ridge 2022」ミッションでは、奇妙な穴の発生源を含め、その生命についてさらに解明することが期待されている。
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