マイクロプラスチックは地球上のほぼすべての場所に存在し、摂取すると動物に害を与える可能性があると近年問題になっている。しかし問題ではあるのだが、このような微小な粒子を環境から除去することは非常に難しく、特に水路の底の隅々まで沈んでしまうと、その除去は困難だ。我々一般の市民はプラスチック製品をなるべく使わないようにすることで、マイクロプラスチックの原因を減らすことでその問題に取り組んでいるが、科学者達はそういったマイクロプラスチックの除去にも取り組んでくれている。
激しい水流でも壊れない耐久性と柔軟性を獲得
研究者たちは、光で作動する魚型ロボットを開発した。このロボットは、すばやく「泳ぎ」、環境からマイクロプラスチックを拾い上げ、除去してくれるという。
マイクロプラスチックは割れ目や隙間に入り込むことがあるため、水環境から除去することは非常に困難だった。そこで、小型で柔軟性のある自走式ロボットを使って、マイクロプラスチックを除去することが提案されている。しかし、従来こういった用途でロボットに用いられてきた素材はハイドロゲルやエラストマーが主であり、柔軟性の面では問題ないが、水中環境では簡単に破損してしまうのが問題だった。
ロボットを作るのに、強度と柔軟性を備えた物質として、研究者らは「貝殻」に着目した。貝殻の内面に存在する“真珠層”と呼ばれる素材は、強度と柔軟性に優れており、炭酸カルシウムのミネラルとポリマーの複合体が多い側から、絹タンパク質のフィラーが多い側まで、ミクロサイズのグラデーションが見られる。研究グループの張新星教授は、この天然物質からヒントを得て、同じようなグラデーション構造を持つ、耐久性があり曲げやすいソフトロボット用材料を作製しようと考えた。
彼らは、β-シクロデキストリン分子をスルホン化グラフェンに結合させ、複合ナノシートを作成した。次に、このナノシートの溶液を、ポリウレタンラテックス混合物に異なる濃度で混ぜ合わせた。層ごとに組み立てる方法によって、ポリウレタンラテックスの中にナノシートの濃度勾配を作り出し、そこから長さ15mmの小さな魚ロボットを作り上げることに成功した。
近赤外線レーザーを魚の尾に当てて高速でオン・オフすると、尾がはためき、ロボットが前進する。この速度は、これまで報告されている他の軟質遊泳ロボットよりも速く、水中で活動する植物プランクトンとほぼ同じ速度とのことだ。研究者らは、泳ぐ魚ロボットが近くにあるポリスチレン製のマイクロプラスチックを繰り返し吸着し、別の場所に運ぶことができることを示している。また、この素材は切断されても自己修復し、マイクロプラスチックを吸着する能力を維持することができたという。この魚ロボットの耐久性とスピードから、研究者は、過酷な水中環境におけるマイクロプラスチックやその他の汚染物質のモニタリングに利用できるとしている。
研究はまだ初期段階ではあるが、水中環境からのマイクロプラスチック除去について、1つの道筋を示す研究として注目を集めている。
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