MediaTekの現行フラグシップチップの「Dimensity 9000」は、パフォーマンス、省電力性能、そして温度管理など、多くの面で現在のAndroid機に搭載される最高水準のSoCであり、その後継者は当然のことながら多くの期待が寄せられるものだ。本日同社がデビューさせた最新のフラッグシップチップ「Dimensity 9200」は、Armの新しいCortex X3 CPU、Immortalis GPU、およびミリ波5Gをサポートする同社初のフラッグシップチップとなり、最高クラスの処理性能と、理論的には最大6.5Gbpsの速度をデバイス上で実現し、信頼性の向上と遅延の低減が図られているという。
Dimensity 9200の主なスペック
MediaTekの最新ハイエンドSoCは、第2世代のTSMC 4nmプロセスで製造され、Armの最新CPU技術がフルに活用されている。Armv9世代の最高クラスのパフォーマンスを実現する「Cortex-X3」コア1個(3.05GHz)、ミドルクラスの「Cortex-A715」3個(2.85GHz)、そして省電力性能に特化した「Cortex-A510」コア4個(1.8GHz)からなるオクタコアCPUとなる。これに8MBのL3キャッシュと6MBのシステムレベルキャッシュが搭載される。キャッシュに関しては、Dimensity 9000と同様だ。
また、MediaTekはDimensity 9200が初の64ビット専用スマートフォンSoCであると述べている。そのため、このプロセッサを搭載したスマホでは、一部の古い32ビットアプリは動作しないことになる。これはGoogleやPixel 7シリーズとは異なるアプローチで、Tensor G2は技術的には32ビットサポートを提供しているが、ソフトウェア自体は32ビットアプリをサポートしていない。
MediaTek Dimensity 9200 | MediaTek Dimensity 9000/9000 Plus | |
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CPU | • Cortex-X3 @ 3.05GHz x1 • Cortex-A715 @ 2.85GHz x3 • Cortex-A510 @ 1.8GHz X4 | • Cortex-X2 @ 3.05GHz (3.2GHz for Plus) x1 • Cortex-A710 @ 2.85GHz x3 • Cortex-A510 @ 1.8GHz x4 |
GPU | Arm Mali-G715 Immortalis MC11 | Arm Mali-G710 MC10 |
ディスプレイ | 240Hz at FHD+ 144Hz at WQHD | 180Hz at FHD+ 144Hz at WQHD+ |
機械学習ユニット | APU 6.0 APU 690 | APU 5.0 6コア |
モデム | Helio M80 アーキテクチャ サブ6GHz ミリ波 | Helio M80 アーキテクチャ サブ6GHz |
カメラ | 不明 8K/30fps 録画対応 | 320MP シングル 32MP+32MP+32MP トリプル 8K/24fps 録画対応 |
製造プロセス | 4nm (TSMC N4P) | 4nm (TSMC N4) |
最も気になるのは、性能面だろう。同社は、GeekBench 5ベンチマークテストでシングルコアのスコアが12%、マルチコアのスコアが10%向上するとしている。さらに、Dimensity 9000と同じ性能を、25%削減された消費電力で実現できるとしている。
また、放熱性能も10%向上しており、Dimensity 9000と比較して、温度上昇時間を4倍遅らせることができるとしている(摂氏20度から摂氏95度まで上昇する時間で計測)。
GPUによるハードウェアレイトレーシングを実現
Dimensity 9200では、GPUもArm Mali-G715 Immortalis MC11を搭載し、Manhattan 3.0のベンチマークスコアが従来のSoCに比べて32%向上しているという。また、同じ性能であれば41%の消費電力の削減が期待できるとしている。
さらに、このGPUによって、初めてハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングのサポートが可能になった。これにより、この技術をサポートするゲームでは、よりリアルな反射や影を再現することができる。
スマートフォンのハードウェアレイトレーシング自体はこれが初めてではなく、Galaxy S22の一部モデルに搭載されている悪名高い「Samsung Exynos 2200」もハードウェアベースのレイトレーシングを提供しているが、実際に対応しているゲームはほとんどなかった。MediaTekによると、具体的なタイトルは明らかにしなかったものの、Dimensity 9200のレイトレーシング機能をサポートする最初のゲームは、2023年上半期に発売されるのことだ。
Dimensity 9200 GPUは、可変レートシェーディング、Vulkan 1.3、HyperEngine 6.0ゲーム機能群などの機能もサポートしている。後者には、モーションブラーの低減、タッチレスポンスの向上、リソース管理の改善などが含まれる。
カメラサポートの強化
MediaTekは、Imagiq 890イメージシグナルプロセッサ(ISP)の提供により、カメラの改善も実現している。同社によると、AI技術を使って、シーンの前景と背景(人物、海、空など)を理解し、それに応じて彩度と色を調整する事が可能になるとのことだ。
また、デュアルストリームAIシャッターテクノロジーでブレの軽減を目指しており、2つのカメラストリーム(短時間露光用と長時間露光用)を使用し、それらを融合することで、ブレの軽減を図っていると言う。
また、RGBWカメラセンサーのネイティブサポートや、電子式手ぶれ補正を用いた8K/30fpsビデオ撮影時の12.5%の省電力化も謳っている。
その他.
Dimensity 9200は、M80ベースのモデムにより、ミリ波5GをサポートするMediatek初のフラッグシッププロセッサであり、最高で下り7.9Gbpsの速度を実現するとのことだ。このモデムは、ミリ波用の8CC、サブ6GHz 5G用の4CC、および当社の5G UltraSave 3.0ソリューションも提供する。
AI関連では、MediatekはAPU 690第6世代機械学習シリコンを投入し、ピーククロック速度を18%高速化し、電力効率を30%向上させているとのことだ。
その他、Bluetooth 5.3、FHD+解像度時のリフレッシュレート240Hz、WQHD解像度時の144Hz、LPDDR5X RAMサポート(8,533Mbps)、UFS 4.0ストレージサポート、Wi-Fi 7機能(「WiFi 7 ready」)などが注目されるところである。
最初のDimensity 9200搭載スマートフォンは、2022年末までに発売される予定とのことだ。これらの最初のデバイスが実際にグローバル市場で発売されるのか、それとも中国のみで発売されるのかは不明だが、MediaTekはジャーナリストに、Dimensity 9200搭載スマートフォンはDimensity 9000のデバイスよりも「幅広く入手できる」だろうと語っている。
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