研究者らが、メタンガスを掘り当てるためにフランス南東部フォルシュヴィレールの郊外にある古い炭鉱地帯の地下を調査していた所、全く別のものを掘り当てた。それは彼らが求めていたものよりも更に魅力的なもので、EUの脱炭素化を推進するカーボンニュートラルな燃料となる可能性のあるものだ。
地質学者らが掘り当ててたのは、ホワイト水素の鉱床だった。推定ではこの地域に4,600万トンものホワイト水素が埋蔵されており、埋蔵量としては過去最大規模のものとなる。
ホワイト水素と、名前に色が付いているのは、水素自体に色が付いているというわけではなく、その生成過程によって便宜的に色分けされているものだ。「ホワイト水素」は、人工的に製造されたものではなく、地下の堆積物中で自然に生成された水素の事を呼ぶ。これ以外にも褐炭 (亜炭) を使用した伝統的な製造方法で生成される水素である「ブラック水素」や、再生可能エネルギーを用いて電気分解された「グリーン水素」がある。ホワイト水素が優れているのは、その製造過程で人工のエネルギーを必要とせず、既に自然に埋蔵されているものである点だ。しかし、このパワーを利用するのは容易なことではない。
このホワイト水素が見つかったのは、かつて石炭採掘で有名だったが、現在はキッシュで有名なフランスのロレーヌ地方にある。ロレーヌ大学とフランス国立科学研究センター(CNRS)の研究チームは、石炭が豊富なこの地域の盆地でメタンガスを探していたところ、地中の土壌を調査し、予想外に高レベルの水素を検出した。
下層に行くほど濃度は高くなった。深さ1,093メートルで水素の濃度は約15%、さらに深さ1,250メートルでは20%であった。彼らの計算では、深さ3,000メートルでは、濃度は98パーセントに達する可能性があるが、まだここまでは到達していない。
「私たちのデータは、ロレーヌ鉱山盆地の地下が白色水素に非常に富んでいることを示しています。もし確認されれば、この発見はクリーンで気候変動に優しいエネルギー源への移行において大きな一歩となるでしょう」と、CNRSの研究ディレクターでありロレーヌ大学の研究者でもあるPhilippe de Donato氏は声明で述べている。
さらに研究者たちは、この貴重なガスは私たちの足下に隠された真の水素「工場」によって継続的に生産されており、その原料は水分子と炭酸鉄(FeCO3とCa(Fe,Mg,Mn)(CO3)2)からなる鉱物であると考えている。「フォルシュビラー鉱山周辺の大地には、この2種類の化合物が豊富に含まれています。それらが接触すると、酸化還元と呼ばれる物理化学反応が起こり、鉱物が水分子(H2O)を酸素(O2)と水素(H2)に分離するのです」と、研究者のJacques Pironon氏は説明する。
水素は宇宙で最も豊富な元素であるが、純粋な形で存在することは稀で、酸素と結合して水を作るなど、他の元素と結合して存在するのが一般的である。
ホワイト水素はカーボン・フリーの観点から、未来の燃料となる可能性を秘めているが、克服すべきハードルは非常に高い。何よりもまず、ホワイト水素を利用するための明確な戦略は今のところない。
フランスにあるこの鉱床に関しても、膨大な作業が待ち構えている。まず、現在の探査機で到達可能な深さ1,200メートル以上で水素濃度が上昇し続けることを証明する必要がある。それ以上に、この燃料をどのように利用するのか、そしてそのために実行可能な市場が存在するのかについて、多くの疑問符がつく。
とはいえ、このプロジェクトは徐々に勢いを増している。こうした最近の発見を踏まえ、フランスを拠点とするガス探査会社Française de l’Énergie社は、ロレーヌ地方の2,254平方キロメートルに及ぶ地域で採掘探査許可を申請している。
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