子どもはハイハイからよちよち歩きを経てスタスタと歩けるようになる。これは、普遍的な人間の成長の過程であり、その差は個人の身体的な差によるところが大きいと考えられてきたが、どうやら育つ地域によって変わってくると言うことが研究によって徐々に明らかになってきた。
世界のどこで育つかによって、歩行の成熟度は微妙に異なる
多くの研究では、7歳になるまでに、子供の足音の距離とタイミングが、大人の歩行の一貫性と協調性に一致するようになると言われている。
しかし同時に、他の研究では、年長の子供の歩き方に「一歩一歩」の微妙な変動があることが分かっている。このような変化は、ひょろ長い下肢が成長し続ける限り、つまり思春期初期まで続くようで、文化の影響を受けることもあるようだ。
例えば南アフリカでは、小学生ですでに腰の回転角度が成熟していることが分かっている。しかしフランスでは、同じように成熟した歩行パターンを身につけるのに、12歳くらいまでかかると言われている。
日本の新しい研究でも、大人の歩き方の習得には、さらに微妙な違いがあることがわかった。
南アフリカの子どもたちとは異なり、日本の子どもたちは年齢を重ねても股関節の回転運動に大きな変化を示さなかったのだ。
名古屋大学の研究グループが、大勢の小学生を観察した結果、12歳に近い子どもたちの方が、若い子どもたちよりも足首に大きな力があることを発見した。
また、6歳、7歳、8歳の子どもたちに比べて、歩幅や歩幅が小さく、ケイデンス(1分間に歩く回数)も速かった。
メキシコなど他の地域でも、子どもの歩行に関する研究で、成長とともに歩幅や歩幅が小さくなることが分かっているが、そのケイデンスは7歳以降も変わらないか、小さくなることが分かっている。
したがって、今回の研究の著者らは、「日本の6~12歳の子供の歩容と運動学は、他の国の子供で報告されているものと異なっている。ケイデンス、歩幅、歩幅の加齢変化は世界的に類似しているようだが、正規化した値は我々の研究とは若干異なっている。」とのことで、諸外国と比べても、日本の子供達には更に差がある事を報告している。
微妙な違いではあるが、有用な情報だ。子供の歩行を評価することで、小児科医は患者の一般的な健康状態や身体的発達、また、子供が典型的に成長しているかどうかなど、多くのことを知ることができるからだ。
そのため、近年、世界各国で国家基準を作ろうという動きが出てきている。
今回、日本で行われた研究は、その基準を提供するための試みだ。研究者たちは、6歳から12歳の子どもたちがどのように下肢を使って歩いているのかを、3D歩行分析システムを使って把握した。
今回、日本の424人の子どもたちの中から、4つの重要な発達の違いが見つかっている。
年少の子どもたちに比べて、年長の子どもたちは、ケイデンスが増えていた。また、歩幅も9〜10歳児に比べて小さくなっていた。
さらに、年長者は歩くときに膝の可動域が狭くなり、つま先立ちになる傾向がある事が分かった。
名古屋大学の伊藤 忠 客員研究者(愛知県三河青い鳥医療療育センター三次元動作解析室:動作解析専任研究員 兼務)は、「生活習慣の違い、体格の違い、文化の違い、すべてが日本の子どもの歩行に影響していると考えています。このことは、日本の子どもたちの健康に影響を与えるとは思えません。しかし、他の国の子どもたちとは異なる特徴を示しています。この結果は、正常歩行と病的歩行を評価する重要なツールとなり、歩行障害に対する整形外科的治療やリハビリの効果を判断することができます。」と述べている。
子どもの歩き方は、大人の歩き方とは明らかに違う。これは、医師ではなくとも、その違いを一目で見分けることができるほど明らかだろう。
なぜ、そのような違いがあるのかは、世界共通の関心事だ。大人のように歩くには、自然な学習が必要なのだろうか?それとも、子どもの身体は成長とともに変化していくのだろうか?それとも文化が関係しているのか?
人間の歩行の文化的差異に関する研究はこれまでにもあまり行われてきておらず、さらに様々な年齢層を対象にした研究は特に稀だ。
今回の結果は、確かに関係性があることを示唆している。
コメントを残す