地球から約25光年離れた場所に、夜空で最も明るい星のひとつであるフォーマルハウトがある。フォーマルハウト星系は何十年にもわたって天文学者を魅了してきたが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の驚異的な性能のおかげで、その理解が更に深まりそうだ。アリゾナ大学とNASAのジェット推進研究所の天文学者を中心とする科学者グループは、月曜日に学術誌『Nature Astronomy』に発表した研究において、フォーマルハウト星系がこれまで考えられていたよりもはるかに複雑であると述べている。
今回、研究チームはJWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)を使って、フォーマルハウトの周りにある破片の内円盤を解像することに成功した。この星は地球から25光年、約4億4千万年前の星なので、この星系の形成期を見ていることになるす。研究チームは、内円盤に塵や小石があることはこれまでの調査で明らかになっていたが、これが太陽系の小惑星帯に相当するのかどうかは正確には分からなかった。
調査では、星を囲む3つの異なる残骸の領域が見つかった。そのうちの1つ、フォーマルハウトに最も近いものは、太陽系の小惑星帯に似ているが、予想よりはるかに広大なものだった。『New Scientist』誌によると、フォーマルハウトの内側の小惑星帯は、恒星から約7天文単位離れたところから約80天文単位離れたところまで広がっているとのことで、この数字は、天文学者が予想したよりも10倍も広い内小惑星帯である。
しかし、フォーマルハウト星系の最も興味深い特徴は、それだけではない。星系の内側の小惑星帯の外側には、恒星の軌道上にある他の全てから23度傾いている第2の破片帯があるのだ。「これは、この星系の本当にユニークな点です」と、この研究の主執筆者であるAndrás Gáspár氏はScience Newsに語っている。彼は、この傾いたベルトは、天文学者がまだ発見していないフォーマルハウトの軌道上の惑星の結果である可能性があると付け加えた。
この星系は初期太陽系についての洞察を与えてくれる一方で、フォーマルハウトは太陽とは大きく異なる。より明るく、より高温の星であるため、核燃料をより早く使い果たすことになる。フォマルハウトは、すでに人生の3分の1を終えており、赤色巨星になるまでにあと10億年。我々の太陽系の将来の姿を垣間見るようだ。
論文
- Nature Astronomy: Spatially resolved imaging of the inner Fomalhaut disk using JWST/MIRI
参考文献
- Webb Space Telescope: Webb Looks for Fomalhaut’s Asteroid Belt and Finds Much More
- NewScientist: Absolutely enormous asteroid belt discovered around a nearby star
- Science News: The James Webb telescope revealed surprise asteroids in the Fomalhaut star system
研究の要旨
他の星の周りにある惑星デブリ円盤は、太陽系の小惑星帯やカイパーベルトに類似している。その構造は、小天体の配置を明らかにし、惑星の存在を示唆するものである。ハッブル宇宙望遠鏡、スピッツァー、ハーシェル、そしてアタカマ大型ミリ波干渉計によって、近傍の恒星フォマルハウトは最も顕著なデブリ円盤の一つを形成している。JWST/MIRIによるこの星系の中間赤外線画像は、狭いカイパーベルト類似の外輪を示すだけでなく、(1)間接的な証拠から小惑星類似の構造であると考えられていたものが、代わりに広く外側に伸びていること、(2)おそらく未知の惑星に見守られた中間ベルトがあることを示す。新たに発見されたベルトは、約78auに位置する内側の隙間によって区切られており、外側のベルトに対して位置がずれていることがわかった。これまで知られていた衝突によって発生した塵雲、フォマルハウトbはこのベルトから発生した可能性があり、このベルトでは動的な攪拌と衝突の割合が増加していることが示唆される。また、外側のリングの中に大きな塵雲を発見し、別の塵を発生させる衝突の証拠である可能性もある。これまでの観測結果を総合すると、フォマルハウトは複雑でダイナミックに活動する惑星系の舞台である可能性がある。
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