先日、Intelは欧州への積極投資による開発拠点の拡充計画を発表したが、今回欧州半導体法によりその巨費の一部を賄うための資金調達に成功したことが明らかになった。
EUによりメガファブ建設の40%の資金援助が行われる
Intelは、ザクセンアンハルト州の州都であるドイツのマクデブルクに、チップ製造を担う2つの半導体ファブを建設する予定だが、これに関し、欧州半導体法によって68億ユーロ(約9,700億円)もの資金提供を受ける事になる。これについてはマグデブルク選出の連邦議会議員(社会民主党)であるMartin Kröber氏が金曜日にこの決定の内容を明らかにし、連邦予算声明で今年度の資金提供予定額が報告された。
新しいファブを建造するには膨大な時間と費用がかかってくる。マグデブルクに建設される「シリコン・ジャンクション」は、2023年上半期に着工し、2027年までに完成する計画だ。このシリコン・ジャンクションには、2つの大型チップ工場が建設される。これらはオングストローム(0.1nm)時代を象徴する先進的なファブとなり、Intel 20A以降の次世代ノードを生産する計画であることをIntelは3月に明らかにしている。Intelブランドのプロセッサは、このファブで製造されるほか、Intel Foundry Services(IFS)経由でパートナー製品も製造される予定だ。
欧州半導体法(European Chips Act)は、European Alliance on Semiconductorsをベースに構築された法案だ。
中国政府が半導体イノベーションに数百億米ドル規模の資金を投じていることや、米国議会が半導体の戦略的価値について合意に達したことなどを受け、欧州の競争力と回復力を強化するために策定された。これにより、EUが高度なチップの設計、製造、パッケージングにおいて主導権を握り、半導体の供給を確保し、他国への依存を減らすことを目的としている。またEUは2030年に現在の市場シェアを2倍の20%にするという目標も定めている。今回、その支援の一環として、Intelのメガファブ建設に資金援助が行われた形だ。
連邦予算案では、マグデブルグ開発のための資金として、今年度27.2億ユーロ(約29.1億円)が確保されたことが明らかになった。Intelは、この特別な先端ノード施設の開発に対して、合計68億ユーロ獲得する。欧州チップ法の資金は、メガファブの総コストの40%とされており、この施設の建設には総額170億ユーロ(182億ドル)がかかると言われている。
Intelのマグデブルク・シリコン・ジャンクションは、地元ザクセン=アンハルト州の経済に大きな影響を与えることになる。7,000人の臨時雇用に加え、3,000人の正規雇用が創出されると予想されている。Kröber氏は、「この工場は、ザクセン=アンハルト州全体を活性化させるものだ」と述べている。さらに、サプライヤーやパートナー企業にも数千の雇用が生まれ、地元のサービス業や小売店など、広範な経済への影響が見込まれる。
欧州半導体法は2022年2月に制定され、ハイテク産業の投資と開発を促進するために430億ユーロ(6兆1,000億円)が計上された。ドイツは今のところ最も大きな利益を得ている国の一つだ。Intelもアイルランドに170億ユーロ(約2兆4,000億円)の巨額投資を行う予定だ。フランス、イタリア、ポーランド、スペインでは、それぞれ45億ユーロ(約6,400億円)の大規模な投資が行われる予定だ。上記の投資額は、Intelからの60%の出資に相当し、それに見合う40%の欧州チップ法の資金が各国から提供されるはずである。
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