AV1エンコーダーは、Intelの新しいGPUであるArc Alchemist GPUに統合され、ついに一般に公開された。今回、この新しいエンコーダーが搭載されたArc A380を使って、YouTuberのEposVox氏がテストを行った結果、ライバルであるNVIDIAのNVENCエンコーダーなど、現存のあらゆるH.264ハードウェアエンコーダーを圧倒する、その驚くべき性能が明らかとなった。
Intel AV1 エンコーダーは、ライバルのNVIDIAのNVENC H.264ビデオコーデックを上回る性能
AV1は、2015年に設立されたコンソーシアムであるAlliance for Open Mediaによって開発されたオープンソースでロイヤリティフリーのビデオコーディングフォーマットであり、インターネット上で誰でも使える無料の最先端コーデックだ。H.264と比較して、ファイルサイズが最大50%小さくなるなど、圧縮性能が大幅に向上していることも特徴となる。
AV1は近年、ビデオストリーミング業界で大きな支持を得ている。AV1のデコードエンジンは、NVIDIAのRTX 30シリーズAmpereアーキテクチャ、AMDのRX 6000シリーズのRDNA2 GPU、Intelの最新統合グラフィックスGPUなど、多くの最新グラフィックスエンジンにすでにサポートされている。また、PlayStation 4 Proのような古いゲーム機でも、AV1コーデックをサポートしている。
EposVox氏によると、YouTubeなどの動画配信プラットフォームも近年AV1を広く採用しており、YouTuberの彼が日常的に見ている動画のほぼ半分が、この新しいコーデックをサポートしているとのことだ。
ただし、コンテンツ制作や動画配信のためのAV1エンコードは、現状ほとんど行われていない。特に、最新のグラフィックエンジンは、どれもAV1エンコードエンジンをサポートしていない。CPU上のソフトウェアエンコードでAV1エンコードを利用できるのは間違いないが、これまでどこもハードウェアアクセラレーションによるAV1エンコードを実装してこなかった。結果、IntelがArc GPUでリードすることになったわけだが。
EposVox氏は、Intelの新しいAV1エンコーダを、Intel独自のQuick Syncテクノロジー、NVIDIAのNVENC、AMDのAMF、OBSにあるようなソフトウェアベースのH.264エンコーダなど、さまざまなH.264エンコーダと比較してテストした。
テストは、NetflixのVMAFベンチマークツールを使って、3.5Mbps、6Mbps、8Mbpsで行われた。このベンチマークツールは、ビデオの品質を0から100のスコアシステムで分析する(0は視聴不可能、100は完璧なビデオ品質、非圧縮ビデオとの比較)。
AV1の結果は印象的で、新しいIntelエンコーダーは3.5Mbpsで83点、6Mbpsで90点と、これらのビットレートにおけるH.264エンコーダーと比較して最も高いスコアを獲得している。(この最初の例は、「バトルフィールド2042」で記録されたビデオから取られたものです)。
ちなみに、下馬評では最有力と思われたNVIDIA NVENCエンコーダは、驚くべきことに、最も低いテスト結果を記録しており、 3.5Mbpsで71点、8Mbpsで85点だった。AMDのAMFエンコーダはNVIDIAに近いスコアだが、IntelのQuick Syncエンコーダ(Alder Lake版)は同じビットレートで76点と87点と高いスコアを記録していた。この結果から、Intelの新しいAV1エンコーダは、NVIDIA NVENCとAMD AMFの両エンコーダよりも16%「優れている」ことになる。
AV1の結果に唯一近づいたH.264エンコーダは、OBSのx264 VerySlow H.264ソフトウェアエンコーダプリセットで、3.5Mbpsで78点、6Mbpsで88点のスコアを記録した。OBSのVerySlowプリセットはリソースを大量に消費するため、リアルタイムで実行できない(したがってライブストリーミングには使えない)ので、この結果はAV1コーデックにとって印象的なものだ。
AV1エンコーダーは特に低ビットレートで威力を発揮
IntelのAV1エンコーダの性能が最も発揮されるのは、3.5Mbpsのようだ。このエンコーダは3.5 Mbpsでのパフォーマンスが非常に優れており、NVIDIAとAMDの6 Mbpsでの結果を、ほぼ半分のビットレートで上回っている。
しかし、6Mbps以上のビットレートになると、その差は小さくなった。特にIntelのAV1エンコーダーでは、8Mbps(Twitchの制限値)において、6Mbpsよりも2.2%しか画質が向上していない。
そのため、ストリーミングプラットフォームがAV1へ移行する際には、ビットレートが大幅に低下することが予想される。新しいエンコーダーは、H.264と同じ画質で動画を見るために必要なインターネット帯域を大幅に削減し、インターネット全体への負担を軽減するため、ユーザーにとって朗報だろう。
今回のAV1コーデックの結果は、全体として非常に印象的だ。AV1がH.264を完全に打ち負かした結果は、世代の交代を予感させられる。
今のところ、IntelのAV1エンコーディングでしかその性能を感じる事は出来ないが、今後はNVIDIAとAMDが次世代GPUに独自のAV1エンコードエンジンを実装すれば、AV1の性能をよりよく理解できるようになるだろう。実際にH.264ハードウェアエンコーダについても、ブランドやバージョンによってエンコーディングの効率が大きく変わることが分かっている。
NVIDIAとAMDのAV1エンコーダーの実装は、Intelが現在提供しているものよりもさらに効率的で高品質になる可能性があるが、実際の性能を見るには、RTX 4000シリーズとRX 7000シリーズの発売を待たなければならない。
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