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Intel、ドイツに2.2兆円で18A(~2nm)に対応した半導体工場建設計画を発表

Intel Ireland Fab 34

Intelはドイツに最先端の半導体生産施設を建設するため170億ユーロ(約2兆2000億円)を投じる計画を発表した。同社は今後10年間で800億ユーロ(約10兆円)をEUで投資する計画であり、今回の発表はその最初の物となる。

Intelは現在、製造能力の拡充に多額の投資を行っており、TSMCなどの同業他社と同レベルの生産能力を実現し、他の企業のチップ製造を受託できるように運用モデルを拡大している。本日の発表には、ドイツの新しい施設、イタリアとアイルランドの新しいセンターに関する詳細が含まれている。ドイツの工場は、操業開始時にIntelの最新のチップ製造プロセスで半導体を製造し、イタリアの工場は、昨年提供されたIntelのロードマップによると、今年後半に生産を開始する同社のIntel 4(7nm)製造プロセスを採用するとしている。今回発表された計画では、計330億ユーロ(4兆3,000億円)の投資が行われる。

ドイツの工場はオングストロームレベルの製造が可能で2027年稼働予定

Intelは初期段階で、ザクセンアンハルト州の州都であるドイツのマクデブルクに、2つの半導体ファブを建設する予定だ。欧州委員会の承認を待って計画は直ちに進められ、2023年前半に建設が開始、2027年にチップの製造が開始となる。新しいファブは、Intelの最先端18A(オングストローム。1.8nm)プロセスでチップを製造する計画だ。これは欧州および全世界のファウンドリー顧客とIntel自身のニーズに対応する物としている。

ドイツのマクデブルクに建設予定のIntel新工場のレンダリングイメージ
ドイツのマクデブルクに建設予定のIntel新工場のレンダリングイメージ(出典:Intel)
ドイツのマクデブルクに建設予定のIntel新工場のレンダリングイメージ2
ドイツのマクデブルクに建設予定のIntel新工場のレンダリングイメージ(出典:Intel)

Intelは、ドイツ国内および地域内の他のイノベーションと製造の中心地への接続点となるこの新拠点を「シリコンジャンクション」と名付け、発展させていく予定だ。同社はドイツについて、「欧州の中心に位置し、優秀な人材、優れたインフラ、サプライヤーと顧客の既存のエコシステムを有する、先端半導体製造のための新しいハブ『シリコンジャンクション』設立に理想的な場所だ」と評価している。

工場建設の過程で7,000人の建設雇用、工場稼働時にはIntelで3,000の恒久的な雇用、そしてサプライヤーやパートナー全体で数万の追加雇用を創出する予定だという。

アイルランドで建築中の工場に追加投資を発表

また、ドイツの新工場に加えて、Intelはアイルランドの新工場を発表した。既にIntelは2019年からアイルランドのレイクスリップに「Intel 4」プロセスに対応した工場「Fab 34」を建設しているが、今回、120億ユーロを追加投資して製造スペースを倍増すると発表した。このプロセスは、競合他社の5ナノメートルと3ナノメートルの製造技術の中間にあたるものと考えられる。

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Intelは、アイルランドのレイクスリップでの製造拡張に120億ユーロを追加で投じる。この拡張工事が完了すれば、同社のアイルランドにおける製造可能スペースは2倍になり、同国への投資総額は300億ユーロを超えることになる。(出典:Intel)

イタリアにも新工場を計画

さらにIntelは、イタリアに最先端のバックエンド製造施設を実現するための交渉を開始したと発表した。この計画では最大45億ユーロの投資を行う可能性があり、2025~2027年の間に操業を開始する予定だという。同工場では、Intelで約1500人、サプライヤーとパートナー全体でさらに3500人の雇用創出を見込んでいる

この計画は、Tower Semiconductorの買収計画に基づいて行われる物で、Towerがイタリアのアグラーテ・ブリアンツァ(地名)に工場を持つST Micoroelectoronicsとパートナーシップを結んでおり、そのパートナーシップをより強化するために行われるという。

フランスに研究センターを計画

Intelは最先端の半導体製造を進めるためには、研究開発と設計が不可欠であるとの見通しから、フランスのプラトー・ド・サクレー周辺にR&Dハブ(研究開発拠点)を建設し、1,000人のハイテク雇用を創出する計画も発表した。Intelは、「フランスはIntelのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)およびAI(人工知能)設計能力の欧州本社になります。HPCとAIのイノベーションは、自動車、農業、気候、創薬、エネルギー、ゲノム、ライフサイエンス、セキュリティなどの幅広い産業分野に恩恵をもたらし、全ての欧州市民の生活を大きく向上させることになります」と述べている。

フランスにはさらに主要なファウンドリーデザインセンターも設立し、世界の業界パートナーや顧客にデザインサービスやデザインに伴う副次的なサービスを提供する予定だという。

また、ポーランドのグダニスク拠点でもディープニューラルネットワーク(DNN)、オーディオ、グラフィックス、データセンター、クラウドコンピューティングの分野でのソリューション開発に重点を置き、2023年までに研究所スペースを50%拡張する予定だとのこと。

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IntelのEUにおける投資計画やパートナーシップの一覧(出典:Intel)

IntelのCEOである、Pat Gelsinger氏は、「これらの投資は、ベルギーのIMEC、オランダのデルフト工科大学、フランスのCEA-Leti、ドイツのフラウンホーファー研究所など、欧州大陸にあるIntelの研究機関との長年の関係をさらに強化することになるでしょう。また、Intelはイタリアでもレオナルド、INFN、CINECAと刺激的なパートナーシップを構築し、HPC、メモリー、ソフトウェア・プログラミング・モデル、セキュリティ、クラウドにおける先進的な新しいソリューションの探求に取り組んでいます。」と述べている。Intelはスペインで過去10年にわたり、バルセロナ・スーパーコンピューティング・センターとIntelがエクサスケール・アーキテクチャの共同研究を行ってきた。現在は、次の10年を見据えたゼータスケールアーキテクチャを開発しているという。スーパーコンピューティングセンターとIntelは、バルセロナに共同ラボを設立し、コンピューティングを進化させる計画だとのこと。

Intelは30年以上前から欧州に進出しており、現在EU全体で約1万人の従業員を擁している。過去2年間で、Intelは欧州のサプライヤーと100億ユーロ以上の取引をしているという。また同社はシリコン供給のグローバルなバランスの調整に取り組んでいるため、この支出額は2026年までにほぼ倍増すると予想している。

EUの気候目標に合わせ、水の節約、リサイクル、再生による水の純増の達成、消費量以上の淡水を回復する地域の水プロジェクトへの資金提供など、2030年のサステナビリティ目標の達成に向けて順調に進んでいくこと、さらに、全世界の製造拠点で100%再生可能エネルギーを使用し、埋立廃棄物ゼロを達成する予定と説明している。

欧州半導体法が計画を後押し

「半導体は産業のコメ」と言われるが、今そのコメが圧倒的に足りていない。コロナ禍におけるロックダウンとその後の需要の急拡大、果てはウクライナ戦争などの地政学的なリスクにより、世界は半導体不足のまっただ中にいる。今や「半導体を制するものが、世界を制す」とも言われている。開発競争は激化し、製造拠点を巡る地政学的な攻防にまで発展している。半導体を「誰がどこで作るのか」が重要になるというわけだ。

現在、半導体製造のシェアは台湾・韓国・中国で世界シェアの6割を占めている。特に中国の成長が著しい。理由は運営コストの低さと、政府による補助の手厚さだ。

以下に、米国を100とした場合の各国の製造コストを掲載したが、韓国で2割ほど、中国ではそれ以上に安く製造が可能なのだ。

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米国を100とした場合の製造コストの比率(出典:SIA/BCG「Government Incentives and US Competitiveness in Semiconductor Manufacturing」)

また、政府による補助についての資料も掲載する。中国は土地においては100%、工場建設についても65%もの支援が行われるのだ。それ以外にも、人件費や製造装置の購入費用などについても、全てにおいて他国よりも手厚い補助がなされており、国を挙げて半導体の国内製造を推し進めようとする姿勢が見て取れるだろう。

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製造コストにおける公的補助が占める割合(出典:SIA/BCG「Government Incentives and US Competitiveness in Semiconductor Manufacturing」)

こういった中国の動きに対して、アメリカでも先日、半導体の国内製造を推し進めるために6兆円規模の補助金を投じる法案を可決し、米国内への工場誘致を促進するようだ。

そして今回のIntelのドイツ工場建設だ。これについてIntelのCEOである、Pat Gelsinger氏は次のように述べている。

私たちの投資計画は、Intelにとっても欧州にとっても大きな一歩です。欧州半導体法は、半導体分野における欧州の地位を飛躍的に向上させるために、民間企業と政府が協力することを可能にするものです。この幅広い取り組みにより、欧州の研究開発革新が促進され、最先端の製造がこの地域にもたらされ、世界中の顧客とパートナーに利益をもたらすことになります。我々は、今後数十年にわたり、欧州のデジタルの未来を形作る上で不可欠な役割を果たすことを約束します。

欧州半導体法European Chips Act)は、European Alliance on Semiconductorsをベースに構築された法案だ。

中国政府が半導体イノベーションに数百億米ドル規模の資金を投じていることや、米国議会が半導体の戦略的価値について合意に達したことなどを受け、欧州の競争力と回復力を強化するために策定された。これにより、EUが高度なチップの設計、製造、パッケージングにおいて主導権を握り、半導体の供給を確保し、他国への依存を減らすことを目的としている。またEUは2030年に現在の市場シェアを2倍の20%にするという目標も定めている。

今回のIntelの工場建設に際して、どの程度の補助がなされたのかは不明だが、欧州半導体法では430億ユーロ(約5兆6,000億円)を超える予算が設定されているといい、大きな補助があったことは想像に難くない。今後も各国で熾烈な誘致合戦が繰り広げられていくことだろう。

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