都心部に行くと、先進的な高層ビルの多くが、巨大な窓ガラスで構成されていることに気付くだろう。そして、その中で働いているオフィスワーカーは、おそらく夏の窓際近くでこもった熱を感じたことがあるのではないだろうか?建物において、窓などの開口部を通して、冬に暖房の熱が逃げる割合は58%、夏の冷房中に入ってくる割合は73%にも及ぶことが分かっており、窓ガラスは建物の断熱において、重要な役割を担っていることが分かっている。
これまでにも、窓ガラスを特殊な金属薄膜でコーティングしたり、二重ガラスにして間を真空にすることで熱の伝導率を下げる試みが行われてきたが、今回、中国の武漢大学の研究チームは別のアプローチで、太陽からの熱を遮断する「ハイドロゲル・ガラス」を開発したと発表した。
- 論文
- Frontiers of Optoelectronics : Broadband light management in hydrogel glass for energy efficient windows
- 参考文献
窓ガラスが暑さを伝える原因は、ガラスが、空間を暖める近赤外線を取り込み、中赤外線の反射率が高いために、建物からの排熱を最小限に抑えているために起こっている。
そこで、Kang Liu教授率いる武漢大学の研究チームは、新しいデザインのハイドロゲル・ガラスを開発した。
この新しいガラスは、ハイドロゲルの層と通常のガラスの層で構成されている。数ミリの厚さのハイドロゲルをガラスの上に重ねて、外からの近赤外線を多く反射させ、中赤外線を多く逃がすように設計されているのだ。その上で、可視光線に対しては通常のガラスと同じように透明度を保っている。
これまでの通常のガラスは、可視光を透過して室内を明るくするように設計されているが、赤外線(私たちが熱として感じるもの)についてはあまり考えられてこなかった。ガラスは太陽光の近赤外線を通す一方で、中赤外線を遮断してしまうため、結果的に建物を温めてしまうのだ。暑い時期には、その暑さのためにエアコンの使用頻度が高くなり、結果的にエネルギー消費量が増えてしまう。
実際、この新しいハイドロゲル・ガラスは、可視光線の透過率が従来よりもやや高く、通常のガラスの92.3%に対し、92.8%が室内に取り込まれるとNew Atlasは述べている。
また、室内を涼しく保ち、冷房のエネルギー消費を最小限に抑えるという点で、ハイドロゲルガラスは中赤外線を強く放射することが証明された。ちなみに、通常のガラスは84%までしか放射しない。
ニュー・アトラス誌によると、研究チームがモデルハウスでテストを行った結果、ハイドロゲルガラスが建物を最大3.5℃まで冷却できることを発見したとのことだ。
最終的には、この新しいハイドロゲル・ガラスは建物を涼しく保ち、冷房のためのエネルギー消費を削減することができ、環境にも優しく、電気代も抑えられることに繋がる。さらに、ハイドロゲル・ガラスは手に入りやすく、比較的安価であるため、かなり容易に展開することができるようだ。
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