最初のトランジスタが発明され、市場に出回ったのはもう何十年も前の話だが、それから今日まで、様々な改良が行われてきた。そして今も次世代に向けて開発が行われているが、このトランジスタの歴史をタイムラインにまとめたものが、IEEE Spectrumにて公開されている。
- IEEE Spectrum: THE ULTIMATE TRANSISTOR TIMELINE
この年表は、様々なトランジスタが発明されてから、実用化されるまでの時間を示したものだ。既存のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)の寸法を縮小することによって、同じコストで2年ごとに速度が倍増するコンピュータを実現できたことで、順調に性能の向上が実現されてきたが、その後微細化の限界が見えてきたこともあり、現在では様々な材料、構造などが試されている。
年表にあるように、2010年移行はFinFETが主流になっているが、それも限界を迎えつつあるようで、これからの3nmプロセス世代移行は、GAA(Gate-All-Around)トランジスタが主流になっていくものと見られている。
既に、ナノシート方式を採用した独自のGAA(MBCFET)による3nmチップの量産をSamsungが開始しており、TSMCも2023年以降これに続くと言われている。
IEEE Spectrumの年表には、発明自体は2000年代前後に行われているが、未だ実用化されていないものとして、「Carbon nanotube transistor(カーボンナノチューブ・トランジスタ)」や「Single-atom transistor(単原子トランジスタ)」、「Tunnel FET(トンネル電界効果トランジスタ)」も挙げられている。
カーボンナノチューブ(CNT)トランジスタは、CNTの金属や半導体の様に振る舞う性質を利用し、エネルギー効率が高いナノトランジスタの製造を目指すものだ。これは、現在のシリコンを超えるマイクロプロセッサの構築につながると言われている。
単原子トランジスタは、1つの原子を制御することによって、電気回路を開閉できるデバイスを構築し、トランジスタとして利用しようというものだ。
トンネル電界効果トランジスタは、電子のトンネル効果を利用したトランジスタで、原理的にMOSFETの限界を超えた低電圧でオン・オフの切り替えができるため、低消費電力化が期待されている。
これらは可能性が示されてはいるが、様々な課題があり現状実用化に至っていないのが現状だ。
最後に、年表の最も新しいものとして掲載されているのが「Complementary FET(相補型FET・コンプリメンタリFET)」だ。これは、pチャンネルFETの上にnチャンネルFETを重ねた3次元(3D)積層構造のトランジスタ対となる。2nmプロセス移行、1.5nm世代あるいは1.0nm世代で、CFETが必要になるとみられている。実用化の観点からは、このCFETが現状では、GAAの次に来るものとして最有力のようだ。
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