ChatGPTの登場により始まった生成AIブームが多くの企業に莫大な利益をもたらしているが、全てが順風満帆というわけではない。データセンター向けGPUの販売によって、NVIDIAは莫大な利益を上げ、株価も大きく上昇し、かつてない黄金期を迎えている。
だが、このAIブームに早くから参戦していたMicrosoftが、実はAIサービスにおける収益化に苦戦していると報じられている。『Wall Street Journal』紙の新たな報道は、Microsoftが最初の生成AIサービスの1つであるGitHub Copilotで多額の損失を出したという情報を持っていると主張している。
GitHub Copilotは2022年6月に初めてローンチされ、開発者はCopilot AIアシスタントにアプリケーションやサービスのコード作成を手伝わせることができる。このサービスは現在、月額10ドル、または1年間のサブスクリプション100ドルで利用できる。オープンソース・プロジェクトを立ち上げている人たちや、認定を受けた学生たちは、GitHub Copilotを無料で利用できる。
WSJによると、サービス開始以来、MicrosoftはGitHub Copilotで多額の損失を出しているという。同誌は次のように述べている:
この数字に詳しい人物によれば、今年に入ってからの数ヶ月間、同社はユーザー1人当たり平均して月20ドル以上の損失を出しており、中には月80ドルもの損失を出しているユーザーもいたという。
生成AIサービスは、1つの処理に対して莫大なコンピューティングパワーを用いると言われている。OpenAIのChatGPTも、ユーザーとの一回の対話だけで36セント(53円)かかると言われている。GitHub Copilotも、ユーザーによっては使用頻度がそこまで多くなく、月額10ドルの範囲内で賄えるユーザーもいれば、多用するヘビーユーザーによってはそのコストが上述の通り80ドル以上という巨額な物となる可能性もあるだろう。
こうした中、Microsoftは11月1日、企業ユーザー向けに「Microsoft 365 Copilot」の提供を開始する予定だ。Word、PowerPoint、Excel、Outlookなど、同社の生産性向上アプリの利用を支援するAIサービスで、価格は1ユーザーあたり月額30ドルとされている。生成AIの利便性という魅力による顧客の獲得は長期的に見れば有用な戦略だが、短期的には収益を圧迫する要因にもなりかねない。
WSJによると、MicrosoftはAIサービスをより安価に提供する方法を検討しているという。そのひとつが、NVIDIAからAI GPUを購入する代わりに、自社でAI GPUを製造することかもしれない。最近の報道では、Microsoftは11月14日に開催されるIgniteカンファレンスで、そのようなAIチップ「Athena」を正式に発表すると噂されている。
Source
- The Wall Street Journal: Big Tech Struggles to Turn AI Hype Into Profits
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