Appleが現在iPhoneで導入しているワイヤレス充電規格「MagSafe」だが、同社はこの規格を発展させ、将来的には充電と同時にデータ転送も出来る様な形にするための研究を行っている事が、出願された特許から明らかになった。合わせて、MagSafe充電器の素材に関する特許も出願している。
現在リリースされているMagSafe充電器は、MagSafeに対応したiPhoneをMagSafe充電器の上に置くだけで、マグネットで充電器とiPhoneが貼り付いて、適切な位置でワイヤレス充電することが可能になっており、利便性とパフォーマンスを両立したとてもレベルの高いシステムになっている。また、MagSafe対応のiPhoneケースを装着すれば、ケースを通して充電することもできる。
しかし、Appleは、現時点ではMagSafeの仕組みに「いくつかの欠点」があると考えている。今回出願された特許から、そのAppleが考えている欠点を解消するために同社が取り組んでいる内容が明らかになっている。
出願文書の中でAppleは「例えば、アクセサリデバイスの中には、電子機器に装着することで不用意に『ヒートトラップ』を形成してしまうものがあり、さらに、プロセッサ技術の進歩は、電子機器の処理速度を速めますが、動作中に多くの熱を発生させます」と述べている。
その結果、Appleによると、「いくつかの電子機器」は、ある温度に達すると、デバイスが発熱によって壊れないように、プロセッサを「スロットルダウン」するように設計されているとのことだ。デバイスと温度によっては、デバイスが自動的にシャットダウンされることもある。
「したがって、一部のユーザーは、(付属装置で)電子機器を保護するか、(付属装置で電子機器を保護せずに)より大きな処理能力を許可するかの選択を迫られます」とAppleは続けている。
Appleは、iPhoneなどの電子機器に、「筐体の外部にある磁気アセンブリからの磁界を検出するように構成された磁界センサ を含めること」を提案している。つまり、iPhoneは、MagSafeアクセサリが装着されていることを認識することができるということだ。
さらにiPhoneは、「磁界センサーによって検出された磁界を所定の磁界と比較すること」ができるという。これにより、iPhoneは、例えばMagSafeの充電器と、MagSafeのiPhoneケースを区別することができるのだ。
磁界によってアクセサリの種類や有無などを認識することで、iPhoneの充電パーツは、異なる温度で充電を停止することができるようになる。例えば、iPhoneがケースに入った状態では、より低い温度閾値が設定されるといったようにだ。
しかし、Appleの今回の特許からは、データがアクセサリのMagSafeシステムを介して渡されるという、MagSafeのまた別の可能性についても示している。
「アクセサリデバイスは、底壁に配置された無線通信回路をさらに含んでもよく、その無線通信回路は、磁場ベクトルに基づく認証に続いて、携帯電子機器に情報を送信するように構成されても良い」とAppleは述べている。
Appleは、MagSafeアクセサリは、例えば、それの許容範囲をiOSに通知することができることが分かっているが、特許出願は、データの送受信について示唆している。
MagSafeでデータを送受信できるようになれば、充電以外に実用的な領域が広がる。今回の特許内容には「磁界ベクトルに基づく認証」という項目があるが、これを発展させれば、Macとの通信にMagSafeを使う事が出来たり、MagSafeによる鍵認証のようなことにも使える可能性が出てくる。
今回公開された2つ目の特許出願「Electronic Devices Including Glass Ceramic Components」は、このアイデアに関連しているかどうかは分からないが興味深い内容だ。
「ガラスセラミック製のカバー部材は、磁気特性を持つように構成することができる。」とあり、加えて「ワイヤレス充電システムのコンポーネントの上に使用するのに適している 」と述べている。
MagSafe充電器は現在アルミハウジングに合皮の様な素材で作られているが、今後は別の形での登場も予想される。ただし、現在でも充電中に金属部分からの発熱がかなりあることから、充電器に関しては金属素材が好ましいのではないかとも考えられるが、どのような形でガラスセラミックが用いられるのか興味深いところではある。
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