Intelが、その技術を活用し、将来のノートパソコンの冷却に役立てようとしているのが、ファンを使わない空冷システムである、Frore Systems社のAirJetだ。
AirJetは、標準的なヒートシンクとは異なり、小さな振動膜を使い、超高速の脈動ジェットを作り出し、デバイスから出る空気を下ではなく前方に押し出す事で冷却するという。
例えば、3つのAirJet Miniを使うと、プロセッサーに接続された熱伝導銅片で接続し、12インチの超薄型ノートパソコンの背面から27dBで空気を押し出しながら、プロセッサーパワーを10Wから20Wへと倍増させることができるというのだ。
以前も当サイトで紹介したこの魔法のような画期的技術は、理論上は可能なようにも思えるが、実際にそれが動作している姿を見てみないと中々信じられない気持ちもあるだろう。
今回、PCWorldが、CES 2023においてFrore SystemsのCEOであるSeshu Madhavapeddy氏にインタビューを行い、AirJetの実演を動画に収めて公開している。
デモンストレーションでは、同社の「Mini」チップがまさに“ファン”のように空気を送り、ピンポン玉を押し上げる様子が紹介されている。Madhavapeddy氏によると、AirJetが発生させる背圧(空気の移動によって生じる力の大きさ)は、10倍以上の大きさのファンに匹敵するほどとのことだ。
「メンブレインが振動することで、上部から空気を吸い込み、自動的にチップ内に吸引力が生まれます。そして、空洞の底にあるふるいのようなものから、空気が押し出されるのです。シャワーヘッドのようなもので、空気は上部から入ってきて、このふるいを通って下に押し流されます…。この脈動する噴流が銅製のヒートスプレッダに当たると、熱の移動が起こります。銅製のヒートスプレッダから非常に高い効率で熱を取り出し、そして空気は外に出ていきます」。
Dr. Seshu Madhavapeddy, Chief Executive, Frore Systems
同社は4年前から活動しているシリコンバレーのスタートアップで、すでにIntel、Qualcomm、GiSと協力し、各社のデバイスにAirJet技術を搭載することを検討しているという。ただし、現時点でわかっている情報は、Intelの副社長兼モバイルプラットフォーム担当ゼネラルマネージャーであるJosh Newman氏が、将来的にIntel EvoベースのノートPCのデザインに新しいAirJet技術が採用されると引用しているだけで、PCWorldとのインタビューの中でMadhavapeddy氏が他の将来のプロジェクトについて明らかにすることはできなかった。
「大きなアドバンテージは、枕やマットレスの上に置いたときの動作です。一般的なノートPCの場合、吸気口は底面にあります。ほとんどのノートPCの底面には、たくさんの穴が開いているはずです。机の上に置く場合は、ノートパソコンを少し持ち上げて隙間を作り、空気がその隙間からノートパソコン底面の通気孔を通ってファンに送られるようになっているので大丈夫です。ところが、枕やマットレスの上に置くと、その壁がすべて塞がれてしまい、ファンが詰まってしまうのです。その結果、ファンの恩恵を受けられなくなるのです。
Dr. Seshu Madhavapeddy, Chief Executive, Frore Systems
私たちの場合、底面に通気孔を設ける必要がないため、その問題を解消することができます。」
AirJetは、この冷却システムを搭載した最初のデバイスを年内に発表する予定だという。
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