中国科学院上海応用物理研究所(SINAP)は、2018年9月に甘粛省武威市で建設を開始したトリウム溶融塩炉の実験炉「TMSR-LF1」の運転免許を取得した。
TMSR-LF1が成功すれば、2030年までにさらに大規模な実証施設を開発・建設する道が開かれる可能性がある。さらに、2040年代前半には、トリウム・ウランサイクルの利用を可能にするTMSR燃料塩バッチパイロプロセス実証施設の建設につながる可能性があるとのことだ。
中国初の認可を受けたトリウム溶融塩炉となる
国家核安全保障局(NNSA)は7日、「トリウム燃料溶融塩実験炉運転申請書と関連技術文書を審査し、申請書が関連安全要件を満たしていると判断し、2MWt液体燃料トリウム燃料溶融塩実験炉に運転許可証を発行することを決定した」と声明で述べた。
世界原子力協会(WNA)によると、トリウム(Th)はウラン(U)よりも豊富である。しかし、トリウムは「核分裂性」ではなく「肥沃性」であり、リサイクルされたプルトニウムのような核分裂性物質と組み合わせてのみ燃料として使用することができる。トリウムを一次エネルギー源として利用することは以前から魅力的だったが、その潜在的なエネルギー価値をコスト効率よく抽出することは困難だった。
TMSR-LF1は、LiF-BeF2 -ZrF4 -UF4 [+ThF4 ]の燃料塩混合物とLiF-BeF2の冷却塩を利用する液体フッ化トリウム実験炉である。トリウムとウラン235の組み合わせで、重量比19.75%の濃縮度で運転され、最高温度650℃で最長10年間の運転が可能だ。液体燃料の設計は、1960年代にオークリッジ国立研究所で行われた溶融塩炉実験に基づくものである。
SINAPの資料によると、この原子炉の目的は、熱処理、燃料補給、連続ガス除去技術の試験、運転の安定性と安全性の研究、トリウム・ウラン燃料サイクルの実験である。
NNSAによると、SINAPはTMSR-LF1の運転中、安全を最優先しなければならない。原子炉の安全な運転を確保するために、運転免許の規制や許可条件を遵守しなければならない。原子炉の建設は当初2024年に終了する予定だったが、作業の前倒しにより2021年8月に早期終了した。
成功すれば、中国は2030年までに更に大きなものを建設する計画
昨年8月、SINAPは生態環境部からTMSR-LF1の試運転の認可を受けた。燃料はU-235を20%以下に濃縮したもので、トリウムの在庫は約50kg、転換比は約0.1である。原子炉は、99.95パーセントのLi-7とUF4を含むフッ化ベリリウムリチウム(FLiBe)の肥沃なブランケットに燃料を供給する予定だ。
中国は、TMSR-LF1が成功した場合、2030年までに373MWtの原子炉を建設する意向である。
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