ダークマター粒子を探すには、主に2つのアプローチがある。1つ目は、通り過ぎるときに自然に崩壊する粒子を探すことだ。これには通常、アイスキューブのようなニュートリノ観測所が関与し、ダークマター粒子が原子核に衝突すると、かすかな光のバーストが起こるかもしれない。これまでのところ、この方法では何も見つかっていない。第2のアプローチは、粒子加速器で粒子を衝突させることである。このアプローチもダークマター粒子を見つけることはできなかったが、CERNが挑戦する事を示す興味深いヒントがあった。最新の研究では、ダークフォトン(暗黒光子)と呼ばれるものを探しているようだ。
ダークフォトンは素粒子物理学の標準モデルに対する一般化の一部である。ダークマターが存在するとすれば、それは通常の物質の陽子、中性子、電子を構成するクォークやレプトンとは異なる、まったく新しい形の物質であるに違いないという考えだ。そして、もしダークマターがそれ自身と相互作用できるのであれば、光子が電荷の相互作用を可能にし、強い力が原子核をつなぎとめるグルーオンを持つように、暗黒物質にも力を運ぶボソンが存在するはずである。ダークマターの力のキャリアとなる仮説は、ダークフォトンと呼ばれている。
標準模型では、電磁気力と弱い力は連結しているので、光子は放射性崩壊と連結している。一般化モデルでは、ダークフォトンも同様の関係にあり、ミューオンなど特定の粒子の崩壊に影響を与えるはずだ。ダークフォトンはミューオンの磁気モーメントにも影響を与えるはずであり、今年の初めにまさにそのような効果が示唆された研究があった。
大型ハドロン衝突型加速器の最新運転は、コンパクト・ミュオン・ソレノイド(CMS)実験の3回目の運転である。2022年7月に始まったこの実験は、ディスプレースミューオンとして知られる効果を探している。これは、高エネルギー粒子衝突の一般的な領域からミューオンがやってくるが、衝突点そのものからはやってこないというものである。これは、最初の衝突でCMSでは検出できないダークフォトンが生成され、それが崩壊して検出可能なミューオンになるためである。
つまり、ダークフォトンの証拠は今のところない。さらなる観測で何かが見つかるかもしれないが、もし見つからなければ、ダークフォトンの存在にさらなる制約が加わることになる。これは、ダークマターのパターンと同じである。ダークマターの間接的な証拠は見つかっても、直接的な証拠はまだ見つかっていない。今のところ、私たちにできることは、この謎を解く手がかりがもっと見つかることを期待して、今回のような研究を続けることだけである。
論文
- Journal of High Energy Physics: Search for long-lived particles decaying to a pair of muons in proton-proton collisions at sqrt[s] = 13 TeV.
この記事は、氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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