英国軍は、高精度で低コストでターゲットを攻撃できる強力なレーザー兵器の実用化に近づいているようだ。“DragonFire”と呼ばれる高出力レーザー兵器を初めて空中の標的に向けて発射する試験が国防省のヘブリディーズ射撃場で行われ、成功に終わったことが報告されている。
低コストでの運用
現代のミサイルは、ウクライナ、イスラエル、紅海で示されたように、非常に効果的に空中の脅威を取り除くことができるが、1発数百万ドルもするミサイルの有限の備蓄を、数千ドルしかしないドローンやロケットを打ち負かすために使用することには問題がある。だが、DragonFireはレーザー指向性エネルギー兵器(LDEW)で、1発あたりの運用コストは10ポンド(1,880円)以下であり、従来のミサイルよりもはるかに安価だ。
レーザーにはその他にも多くの利点がある。各「ショット」は非常に長い距離を光速で移動し、レーザー兵器は複数のターゲットを同時に攻撃することができる。他の兵器よりも正確に敵を攻撃できる「ピンポイント精度」も実現できる。光速で標的を切り裂き、構造物に損傷を与えたり、弾頭を爆発させたりすることもできる。
英国政府はDragonFireについて多くを語っていないが、わかっていることもある。ドープされたグラスファイバー束を、英国が設計したビーム結合システムに接続した、50kW級の固体レーザー兵器である。砲塔には電気光学カメラと、目標捕捉とビーム集束のための二次レーザーが搭載されている。
射程距離も機密扱いだが、政府は空中の脅威を追跡し、対抗する能力を実証したと発表している。英国政府によれば、1ポンド硬貨を1kmの距離から命中させる精度を持つという。国防省の国防科学技術研究所(Dstl)が率いるチームが1億ポンド(188億円)をかけて開発中のこの兵器は、イギリス陸軍とイギリス海軍での使用が検討されている。
今回の試みは、英国による「初の静的高出力レーザー発射」を含む、これまでのテストに基づくものだ。2017年に開始された1億ポンドのDragonFireプログラムは、MoDと産業界が共同で資金を提供している。MBDAはコマンド、制御、ターゲット追跡システムを提供し、Leonardo は高度なビーム・ディレクターと光学系を作り、QinetiQは精密レーザー光源を提供している。
DragonFireプロジェクトは、国防省を代表して国防科学技術研究所(Dstl)が主導し、産業界のリーダーであるMBDA、Leonardo 、QinetiQと提携している。このプロジェクトは、この最先端技術を陸軍と英国海軍に提供することを目的としている。
Grant Shapp国防長官は、「この種の最先端兵器は、高価な弾薬への依存を減らすと同時に、巻き添え被害のリスクを下げることで、戦闘空間に革命をもたらす可能性があります。DragonFireのような先端技術への産業界パートナーとの投資は、非常に競争の激しい世界では非常に重要であり、我々が戦闘で勝利する優位性を維持し、国の安全を守るのに役立ちます」と、述べている。
国防省は、この技術を研究段階から運用段階に移行させるため、数百万ポンド規模のプログラムに資金を提供する予定である。
この最新の試験は、さまざまな政府機関によって支援され、すべての安全性と規制要件が満たされていることが確認された。
DstlのチーフPaul Hollinshead博士は、次のように述べている:
「これらの試験によって、指向性エネルギー兵器の大きな可能性と課題が示されました。我々の豊富な知識、技術、経験をもってすれば、Dstlは軍隊が将来に備えるのを支援するのに不可欠です」。
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