ワシントン州ケント市に本拠を置く航空宇宙企業Blue Originは、月の石からソーラーパネルを製造するプロセスを実証した事を発表した。
Amazonの創業者として知られるJeff Bezos氏が2000年に設立したBlue Originは、現在ニューグレン・ロケットの開発に着手している途中である。しかし、月面での活動を可能にするという志の一環として、同社は今週初め、「Blue Alchemist」プロセスにより、地球から輸送する材料を一切必要とせず、月面にある素材だけでのソーラーパネル製造に成功したことを明らかにした。このプロセスは、高温での電気分解によって鉄、シリコン、アルミニウムから酸素を分離するもので、Blue Originは、このプロセスをスケールアップすることで、あらゆるレベルの月面作業をサポートすることができると述べている。。
「Blue Alchemist」プロセスでは、月の岩の模擬物質を使用した
このプロセスをテストするために、研究者たちはまず、月の岩石を模したものを独自に開発した。Blue Originによると、この材料は「レゴリス・シミュラント」と呼ばれ、化学的に月の岩石に似たものだ。この模擬物質を「溶融レゴリス電解」と呼ばれるプロセスに通すと、高温と電流にさらされて構成元素が互いに分離される。
Blue Originは、「溶融レゴリス電気分解」と呼ばれるプロセスを太陽電池製造のための最先端技術「Blue Alchemist」プロセスに進歩させた。このプロセスでは、レゴリス・シミュラントに直接電流を流し、摂氏1,600度以上の高温にする。この電気分解プロセスにより、月のレゴリスから鉄、シリコン、アルミニウムを抽出することができる。Blue Originによると、溶融レゴリスの電気分解により、99.999%以上の純度のシリコンが製造できたとのことだ。
半導体と同じように、ソーラーパネルもシリコンを原料として製造される。そして、太陽光を効率よく取り込んで発電するためには、このシリコンの純度が非常に高くなければならない。シリコンは化学物質で処理され、太陽光の光子が表面に当たると、電子を移動させることができるようになる。電子は原子の構成要素の一つであり、電線の中で電子が移動することで電気が発生する。
また、Blue Alchemistプロセスは、電流を使用してアルミニウム、鉄、シリコンから酸素をする事も出来るため、ロケットの燃料や生命維持システムに活用することも出来る。
月で酸素を生産できるようになると、さまざまなメリットがある。生命維持装置に必要なガスなので、人間が持続的に活動するために重要なだけでなく、ロケットの打ち上げにも欠かせないのだ。ロケットエンジンの燃料は、SpaceX社の「Falcon9」のようなケロシンや、NASAのスペースローンチシステム(SLS)ロケットのような水素だ。この燃料に点火用の酸素を混ぜて着火させる。このため、NASAでは月面に5kmのパイプラインを敷設し、酸素を発生源から貯蔵プラントまで運ぶパイロットプロジェクトも開発している。
また、Blue Originによると、このプロセスは、地球上のように有害な化学物質を一切使用せずに、シリコンを99.99%まで精製できるため、完全に環境にやさしいという。また、月面で稼働するソーラーパネルを過酷な環境から保護し、寿命を縮めるコーティングに必要なガラスを製造することも可能だ。
月面基地の開発は、NASAのArtemisプログラムの中心的な部分であり、NASAはすでにSpaceXのStarship月着陸船をクルーが月へ移動するために選定しています。Blue OriginはNASAの第二次提案に参加しており、昨年末にBlueMoon着陸船の提案書を提出している。Blue Origin社は、月面でのソーラーパネル製造は環境に優しく、地球での応用も大いに期待できるとしている。
Source
- Blue Origin: Blue Alchemist Technology Powers our Lunar Future
- via Ars Technica: Blue Origin makes a big lunar announcement without any fanfare
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