ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、晩年、自身の健康上の問題を世間に公表したが、彼がなぜ死んだのかは長い間謎のままだった。だがこのたび、残された彼の髪の毛から全ゲノムの解読が行われ、ベートーヴェンの死因を解明する新たな手がかりが明らかになった。
ベートーヴェンは1827年3月26日に亡くなっており、遺伝子解析は困難と思われるかも知れない。
だが、ベートーヴェンの生涯最後の7年間に採取された5本の毛髪のDNAが、ベートーヴェンの祖先と一致する一人の人物から採取されたものであることが明らかになった。研究者は、遺伝子データと綿密に調査された出所履歴を組み合わせることで、これらの5本の毛髪は「ほぼ確実に本物である」と結論付けている。これは、ベートーヴェンのゲノムを網羅的に解読するには十分な数であった。その結果、ベートーヴェンが晩年に健康を害した原因について、いくつかの手がかりを得ることができた。
「私たちの主な目標は、ベートーベンの健康問題に光を当てることでした。これには、20 代半ばから後半に始まり、最終的には 1818 年までに機能的な難聴に至る進行性難聴が含まれます」と、ドイツ・ライプチヒのマックス・プランク進化人類学研究所のJohannes Krause氏は声明で述べている。
「ベートーベンの難聴や胃腸障害については、決定的な原因を見つけることができませんでした。しかし、肝疾患の重大な遺伝的危険因子をいくつも発見した。また、遅くともベートーヴェンが最期を迎える数カ月前には、B型肝炎ウイルスに感染していた証拠も見つかりました。それらが彼の死につながったと思われます」と、Krause氏は付け加えている。
また、ルートヴィヒのY染色体が現代の親族と一致しないことが判明したため、ベートーヴェン家の家系に婚外恋愛があったことが明らかになった可能性があるという。この発見は、1572年にベルギーのカンペンハウトでヘンドリック・ファン・ベートーヴェンが受胎するまでの間に、彼の父系で不倫があった可能性を示している。
この発見は、ベートーヴェンが遺伝性疾患に屈したという説や、女性の毛髪サンプルから推測された鉛中毒による死亡説を否定するものだ。後者については、その可能性はあるが、真正の毛髪サンプルによる検査はまだ行われていない。
今回の研究では、彼の熱心な飲酒に加え、遺伝的な肝臓病の素因、B型肝炎の感染が確認されたことから、重度の肝臓疾患が死因の可能性が高いと結論付けている。
論文
参考文献
- Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology: Beethoven’s genome
- via EurekAlert!
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