ASML、米国による更なる対中制裁や地政学的リスクが事業に影響を及ぼす可能性を警告

masapoco
投稿日
2024年2月16日 16:13

世界最先端の極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィ装置を製造している唯一の企業であるオランダのASMLは、すでに米国による中国への制裁の中で、リソグラフィ装置の出荷が出来ない事から売上が減少するなどの影響を受けているが、2024年に到来すると予想される更なる制裁に触れ、自社がコントロールできない地政学的な動きがビジネスに予期せぬ影響を及ぼす可能性を懸念している事を報告している。

同社は2023年の年次報告書を発表したばかりだが、これらの報告書には事業の将来的な懸念に関するガイダンスが含まれているため、同社にとってさらなる中国制裁と「地政学的緊張」は懸念リストのトップに位置づけられている。

ASMLの2023年版年次報告書は350ページを超え、2023年に同社が直面した困難、そして今後も直面するであろう困難が列挙されている。それらの課題には、PC市場の低迷、COVID-19のサプライチェーン問題、事業に影響を与えた輸出規制などが含まれている。報告書には、「当社は国際事業における経済的、地政学的、その他の動向にさらされている」と露骨に書かれており、これには中国の制裁だけでなく、中東やウクライナで進行中の軍事作戦も含まれている。

現在の予想では、ASMLの2024年の売上高は2023年の売上高とほぼ同水準となると予想している。

半導体業界は現在、ダウンサイクルの底を突いているが、グリーンエネルギー転換やAIなどのトレンドに牽引され、先端半導体と成熟半導体の両方に対する需要が増加していると見ている。同社では、今後10年の間に半導体産業が倍増すると予想している。

多くの国や地域が、半導体の安定供給と技術的リーダーシップを確保するために「技術主権」を推進しており、米国のCHIPS法やEUのEuropean Chips Actのような動きが、新しい製造施設の建設に弾みをつけている。

しかし、経済の不確実性が続いているため、一部の市場セグメントの顧客は慎重な姿勢を崩しておらず、期待される回復の到来と立ち上がりは依然として不透明である。

地政学は依然としてASMLのビジネスに影響を与える可能性があると、ASMLは年次報告書で警告している。オランダ政府は昨年、半導体装置に関する新たな輸出規制を発表し、9月に発効した。この規制は、ASMLの最先端成膜装置や液浸露光装置のようなチップ製造技術に焦点を当てたものである。

その後、米国政府は輸出規制を更新し、一部の成熟したリソグラフィ装置でさえ、中国を含む特定の国の顧客に送ることを制限した。

これらにより、ASMLは最先端のDUVおよびEUV装置についてオランダの輸出ライセンスを申請し、さらに中国向けの一部の成熟したシステムについては米国のライセンスを申請しなければならなくなった。必要な輸出許可を与えるかどうか、また、課される可能性のある追加条件をASMLに通知するかどうかは、これらの政府次第である。

ASMLによると、制限される顧客のリストと制限の範囲は変更される可能性があるという。中国の顧客は2023年の総売上高の26.3%を占めているため、これ以上の制限は同社の収益を圧迫する可能性がある。報告書では、「中国など特定の国で技術を提供する当社の能力は、必要なライセンスや承認を得る能力によって影響を受けてきたし、今後も影響を受け続ける」と述べられている。

報告書は、米国政府の制裁措置に対して触れ、これが同社にネガティブな影響を与えていると述べている「米国政府は、国家安全保障規制や特定の中国企業との取引制限を含む貿易措置を制定し、ライセンスなしに特定の製品やサービスを提供する能力を制限している」。

同社にとってのもうひとつの問題は、「地政学的緊張」と中国という国の両方の結節点にある台湾にも大きく依存していることだ。報告書によれば、台湾は2023年の純売上高の29%、2022年の売上高の38%を占めており、その影響の大きさが分かるだろう。また、2023年の売上高の25%を韓国が占めているため、北朝鮮との関係が悪化すれば、ASMLにとって大きな問題となる可能性がある。これらのことは、報告書の59ページに詳しく記載されている。

2023年3月、ASMLの本拠地であるオランダは、米国とともに中国への深紫外(DUV)リソグラフィ装置の販売を制限した。したがって、ASMLを阻んでいるのは米国の法律だけでなく、自国の法律でもある。このような状況ではあるが、ASMLは報告書の中で、国際的な規制を常に遵守すると繰り返し述べている。


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