欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)が施行されてから、まだ1か月も経っていない中、欧州委員会(EC)はゲートキーパーに指定された6社のうち3社(Apple、Google、Meta)に対し、違反の疑いがあるとして詳細な調査を行っていると発表した。
ECのプレスリリースでは、今回調査の対象となった3社のコンプライアンス違反に関して、具体的に以下の慣行を調査しているようだ:
- AlphabetによるGoogle Play Storeでのステアリングに関する規則
- AlphabetによるGoogle検索の自己参照
- AppleのApp Storeにおけるステアリングに関する規則
- AppleによるSafariの選択画面
- Meta社のサービス利用に関する「有料または同意」モデル
欧州委員会は、DMAを遵守するための各社の措置が、効果的な遵守には至っていないのではないかと疑っている。
ステアリング防止規定では、ゲートキーパー各社は、“自社のプラットフォーム上で事業を行っている事業者が、このプラットフォーム以外での購入や購読のための安価な選択肢をユーザーに知らせることを禁止することはできない”と定めている。
ECの懸念の核心は、Googleの親会社であるAlphabetとAppleが、「アプリ開発者がゲートキーパーのアプリストア外で、消費者を無料でオファーに”誘導”する」ことを十分に認めていない、とする点にある。「欧州委員会は、アプリストアに関連する義務に関してAlphabetとAppleが実施した措置がDMAに違反しているかどうかを評価するための手続きを開始した。DMAの第5条4項では、ゲートキーパーは、アプリ開発者がゲートキーパーのアプリストアの外にあるオファーに消費者を “誘導 “することを無料で許可することが義務付けられている」とECは述べ、両社の誘導措置が「さまざまな制限や制約を課しているため、完全に遵守されていない可能性がある」と懸念している。
また、Google検索が、Google参加のサービスの自己参照によって、自社のサービスを不当に優遇している可能性についても触れている。ECは、Google検索がGoogleショッピング、Googleフラフィと、Googleホテルと言ったサービスを検索結果で優先的に表示することで、その行動が同様のライバルサービスに与える影響に焦点を当てた調査を行うとしている。「欧州委員会は、DMAを遵守するためにAlphabetが実施している措置が、DMA第6条5項が要求するように、Googleの検索結果ページに掲載される第三者のサービスが、Alphabetのサービスと比較して公正かつ非差別的に扱われることを保証しない可能性があることを懸念している」と述べている。
Appleについても、ECはiOSにおけるユーザー選択の義務(エンドユーザーがアプリを簡単にアンインストールできるようにすること、デフォルト設定を簡単に変更できるようにすること、iPhoneのブラウザや検索エンジンなどの代替デフォルトサービスを効果的かつ簡単に選択できるようにすること)を遵守しているかどうかを調査するとしている。「欧州委員会は、Webブラウザの選択画面のデザインを含むApple社の措置が、DMA第6条3項に反して、Apple社のエコシステム内でユーザーが真にサービスを選択することを妨げているのではないかと懸念している」と、述べている。
Metaに関しては、EUユーザー向けに最近導入された「pay or consent」モデルがDMA第5条2項に準拠しているかどうかを調査すると発表した。この規制の一部は、「ゲートキーパーが異なるコアプラットフォームサービス間で個人データを組み合わせたり、相互利用しようとする場合、ユーザーから同意を得ることを求めている」と指摘している。
欧州委員会のMargrethe Vestager副委員長(競争政策担当)は声明の中で、5つの調査について次のように述べた:「我々は、3社が提示した解決策がDMAに完全に準拠していないのではないかと疑っている。欧州における開かれた競争可能なデジタル市場を確保するため、各社がDMAを遵守しているかどうかを調査する」と述べた。
「デジタル市場法は3月7日に施行された。我々は、ゲートキーパーが適応できるよう、数カ月にわたって話し合いを続けており、すでに市場で変化が起きているのを目の当たりにしている。しかし、我々は、アルファベット、アップル、メタによる解決策が、欧州市民と企業にとってより公平でオープンなデジタル空間のための義務を尊重しているとは確信していない。我々の調査がDMAの完全な遵守を欠いていると結論づけた場合、ゲートキーパーは重い罰金に直面する可能性がある」と、EUのThierry Breton域内市場委員は述べている。
加えて、ECはAmazonに関する「調査措置」を発表した。ECは、AmazonがDMAに違反して自社ブランド商品を自己紹介している「可能性がある」として、Amazonのマーケットプレイスにおけるランキング手法を調査していると述べた。この措置は正式なコンプライアンス違反の手続きではないが、EUがこのような措置を取ることを予見させるものである。
ECの調査は1年以内に終了する予定だ。対象企業がコンプライアンスに違反していると判断された場合、全世界の総売上高の最大10%の罰金が科されるリスクがある。違反が繰り返された場合、罰金は20%に跳ね上がる可能性もある。
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