AMDの第4四半期の純利益は、データセンターは好調だったものの、ゲームグラフィックスやコンシューマーPC向けチップの売上が減少し、利益はわずかな物となった。
GAAPベースのAMDの純利益は1株当たり1セント(2,100万ドル)で、前年同期の9億7400万ドルから98%減となった。
非GAAPベースの当期純利益は、前年同期と同水準の1株当たり69セント、11億ドルとなった。非GAAPベースの売上は、前年同期の48億3,000万ドルから16%増加し、55億9,000万ドルとなった。
2022年通年に関しては、AMDは236億100万ドルを稼ぎ出し、2021年の164億3400万ドルから44%もの大幅な増益となった。これはAMDが過去に計上した通期決算の中で最も高い数字だが、第3四半期と第4四半期にコンシューマー向けプロセッサーとグラフィックスカードの需要がより強ければ、もっと高い数字になった可能性がある。
全体として、AMDは2022年、Intelからシェアを奪い、好調な1年となっている。これを受けて、時間外取引でAMDの株価は上昇を見せている。
AMDによると、組み込み用とデータセンター用チップの分野が成長を牽引したが、クライアントPCとゲーム用チップの売上が鈍化したことで相殺されたという。ゲーム分野では、セミカスタム・コンソール用チップの売上は増加したものの、PC向けゲーム・グラフィックス・チップの売上が大きく減少している。
AMDは昨年10月の段階で、PC市場の需要が軟化していることを指摘し、減速の影響を感じ始めていた。先週、ライバルのIntelは、第4四半期にマクロ経済減速の影響を受け大きな打撃を被った事を報告している。
AMDのLisa Su CEOは声明で、「2022年は、下半期のPC環境の低迷にもかかわらず、クラス最高の成長と記録的な収益を実現し、AMDにとって力強い1年となりました。データセンターの勢いを加速させ、Xilinxの戦略的買収を完了し、事業を大幅に多様化し、財務モデルを強化することができました。需要環境はまちまちですが、2023年に市場シェアを獲得し、差別化された製品ポートフォリオに基づく長期的な成長を実現できると確信しています。」と、プレスリリースで述べている。
アナリスト向け電話会議でSu氏は、AMDは現在、世界最速のスーパーコンピューター100台以上と、世界で最もエネルギー効率の高いスーパーコンピューター20台のうち15台を支えていると述べた。また、AMDの最新のEpycサーバー・プロセッサーは、ライバルのIntelが発表したばかりのチップよりもエネルギー効率が80%優れていると述べている。
また、ハイパースケーラーで公開されている600以上のインスタンスが、AMD Epycプロセッサを使用していると報告している。Su氏は、同社がRyzen 7000シリーズCPUを搭載した超薄型ゲームおよび商業用ノートブックの設計で250以上の勝利を収めていると述べた。
PC向けグラフィックスチップの需要が鈍化しているため、全体的にゲームは低調だったが、ホリデーシーズンにはゲーム機の需要が好調だったという。また、AMDは新世代のRadeonチップを準備しているため、PC用グラフィックスチップ投入の影響が出るのはこれからだろう。
AMDは先に、第4四半期の売上高は約55億ドル(プラスマイナス3億ドル)で、前年同期比約14%増、前四半期比横ばいとの見通しを示した。 2022年第4四半期は、組み込み部門とデータセンター部門が前年同期比と前四半期比で成長すると予想した。
Mercury Research社によると、Intelはサーバー用プロセッサーの市場で70%以上のシェアを占めている。しかし、Intelはここ最近、新製品の投入が遅れ、シェアを落としている。両社の大きな違いは、Intelが自社でチップを製造しているのに対し、AMDはTSMCなどの委託製造業者を使っていることだ。この戦略的な違いが最近はAMDに有利に働いている。
第4四半期のAMDのGAAPベースの粗利益率は、Xylinx買収に伴う無形資産の償却もあり、前年同期比7%減の43%だった。非GAAPベースの売上総利益率は51%だった。
AMDは、前年同期の12億ドルの営業利益に対し、1億4,900万ドルの営業損失を計上した。AMDの当四半期の現金および短期投資額は59億ドルとなった。
当四半期のデータセンターの売上は合計17億ドルで、42%増加。同分野の営業利益は4億4,400万ドルで、前年同期の3億6,900万ドルから増加している。
クライアントPC分野の売上は、PC市場の低迷による出荷台数の減少とPCサプライチェーン全体での在庫調整により、前年同期比51%減の9億300万ドルだった。平均販売価格は前年同期並みだが、AMDは、前年同期の5億3,000万ドルの営業利益に対し、1億5,200万ドルの営業損失を計上した。
ゲーミング分野の売上は16億ドルで、前年同期比7%減となった。ゲーミンググラフィックカードの売上減は、セミカスタム製品の売上増で一部相殺された。営業利益は、前年同期の4億700万ドルから減少し、2億6,600万ドルとなった。
エンベデッド分野の売上は、買収したXylinxのエンベデッド製品の売上が加わったことにより、前年 同期比1,868%増の14億ドルとなった。営業利益は、前年同期の1,800万ドルに対し、6億9,900万ドルとなった。
今後の見通し
2023年第1四半期(3月31日締め)のAMDの売上高は53億ドル(プラスマイナス3億ドル)と予想している。これは、1年前と比較して10%減少している。
前年同期比では、クライアントおよびゲーム分野が減少し、組み込みおよびデータセンター分野の成長で一部相殺されると予想される。AMDは、2023年第1四半期に非GAAPベースの粗利益率が約50%になると予想している。
Su氏は、一部のクラウド顧客で在庫が増加しているため、上半期は軟調に、下半期は好調に推移する可能性があると述べている。また、2023年のPC市場は10%減になると予想する。同社の製品ポートフォリオは強力であり、コンソールの需要はかなり強く、2023年にはダウンする可能性があると述べた。
「今後数年間、当社の最大の成長機会の1つは、ほぼすべての業界のサービスや製品を変革する初期段階にあるAIです」とSu氏は述べている。
一方、他のハイテク企業と同様に、AMDは2023 年後半の適切な見通しが立たないため、通年の見通しを提供しなかった。
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