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オリオン宇宙船が月の向こう側から覗いたように、宇宙から眺めてみれば、地球は青く輝く水の惑星である事が分かる。だが、豊富なのは海水であり、実は昔から淡水は不足している。これは、人口の増加などの要因もあり、今後ますます悪化することが予想されている。特にアジア圏では、水資源の確保は切実な問題に発展してきている

こうした水需要に応えるために、これまでにも多くの研究が行われてきた。特に、既に一部地域では海水淡水化プラントが導入されているが、これには生成される塩水と重金属を含む廃水が環境に与える問題がある。また、廃水のリサイクルなどの方法もあるが、必要量を確保するには到底足りず、根本的な解決にはならないだろう。求められているのは、「新しい水源」の確保なのである。

そうした新しい水源の候補として今回新たな論文で報告されているのが、「海の上の水蒸気」に着目した研究だ。地球上の海洋面積を考えれば、これが利用できればほぼ無尽蔵とも言える水の供給が可能になるという。論文では、この水蒸気を飲料水に変換するために、どのような収穫構造が可能かについて概説している。

メカニズムとしては、「水を運び、凝縮し、集める」と言う、自然の水循環をそのまま再現した物だ。海の近くに設置された、幅210m、高さ100mと言う巨大な設備によってそれを実現する。

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海洋水蒸気を取り入れるシステムのイメージ図 (Credit: Praveen Kumar/Rahman et al., )

湿った空気は海面直上から近くの海岸まで運ばれ、そこで冷却装置が水蒸気を凝縮して液体にすることができる。これらはすべて、再生可能な風力や太陽エネルギーで賄えるという。

研究チームは、設計の詳細を明らかにしていないが、世界各地の14の研究施設で抽出可能な水分の量について計算を行った。試算によると、このような設備が1つあるだけで、約50万人が1日に必要とする平均的な飲料水を満たすことができる可能性があるとのことだ。そして、海洋表面で水分を捕捉することは、世界中の水不足に悩む多くの地域で実現可能であるとの結論に達したとのことだ。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の土木・環境エンジニア、Praveen Kumarsi 氏は、「いずれは、真水の供給量を増やす方法を見つける必要があります。私たちが新しく提案する方法は、大規模なスケールでそれを実現できると考えています。」と述べている。

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Praveen Kumar教授と共著者の一人であるAfeefa Rahman氏(右)は、海洋上の湿った空気を取り込み、米国南東部に多くの淡水を供給することが可能かどうかを検討した。(Credit: (Praveen Kumar/Rahman et al., )

安全で飲用可能な水の不足は、世界で最も貧しい人々を直撃し、健康、安全、収入に影響を及ぼす。今回提案されたシステムは、生態系や周囲の環境にダメージを与えることなく、大きな変化をもたらす可能性を秘めている。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の大気科学者Francina Dominguez氏は、「これまで実現しなかったのは、研究者が陸上での解決策にばかり目を向けているからだと思います。飲料水や入浴、灌漑に必要な淡水は、世界の水のわずか3パーセントしかなく、そのほとんどが汚染されていたり、アクセスしにくいために便利に利用することができません。私たちは、淡水資源へのアクセスを向上させる有望なプロジェクトをいくつか見てきましたが、大規模な変化を本当にもたらすことができる技術がまだ待たれています。」と述べている。

また、研究チームでは、今後地球は、乾燥した地域はより乾燥し、湿潤な地域はより湿潤になると言う確実性の高い気候変動の予測に基づき、このシステムの有用性についても検討した。その結果、世界が温暖化してもシステムは持続可能であると結論づけている。

「気候予測によれば、海洋の水蒸気フラックスは時間とともに増加し、より多くの淡水が供給されるようになります。ですから、私たちが提案するアイデアは、気候変動下でも実現可能なのです。」と、研究チームの一員で、大学院生のAfeefa Rahman氏は述べている。


論文
参考文献

研究の要旨

地球の大部分はすでに深刻な淡水不足に直面していますが、増加する世界人口と経済成長を維持し、気候変動に適応するためには、より多くの淡水が必要になると予測されます。消費ニーズと経済成長に破滅的な結果をもたらす可能性のあるこの課題に対処するための現在のアプローチは、既存の資源の効率的な利用を高めることに依存しています。しかし、淡水資源の利用可能性は、乱開発や気候変動により急速に低下しているため、将来のニーズに持続的に対応することは難しく、解決策や関連する投資の見直しが必要となっています。本論文では、海洋上の湿った空気を取り込むことによって淡水を大幅に増やすことが可能であることを立証し、既存のアプローチとは異なる大胆な方法を提示します。陸地に近い海洋上空の大気は、適切に設計された構造物を用いて、地球上の大規模な人口密集地を支えるのに十分な量の淡水を生み出すことができることを示す。海洋からの水蒸気の供給は実質的に無限であるため、この方法は気候変動下でも持続可能であり、現在および将来の水の安全保障の問題に対処する我々の能力を変革することができる。このアプローチは、現在および将来の世代に淡水の安全保障を持続的に提供し、経済的に実行可能なメカニズムを確立する上で、変革をもたらすと想定される。

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