Appleは、新たなフラグシップiPhone「iPhone 15 Pro」及び「iPhone 15 Pro Max」を発表し、それと共に、その頭脳となる世界初の量産型3nmチップセット「A17 Pro」を発表した。前モデルのA16 Bionicも、Android陣営と比較して、性能面・効率面で大きな優位性を保っていたが、今年のA17 Proはどれ程の違いを持つのだろうか?本稿では、現時点(9月16日)で判明している情報を元に、A17 ProとA16 Bionicの徹底比較をお送りする。
ハードウェアスペック
A17 Proは、Appleによれば「業界初の3nm(ナノメートル)チップ」だ。A16 Bionicと同様に6つのCPUコアを搭載しているが、マイクロアーキテクチャと設計の改良により、より高速で高性能になっている。
Appleによると、A17 Proは “あらゆるスマートフォンで最速のシングルスレッド性能”を提供するという。
また、GPUも大きな変化が見られる。これまで5コアだったコア数が、A17 Proでは6コアに増加しているのだ。さらに、いくつかのアップグレードと機能を備えている。また、Neural Engineは16コアのままだが、A16のNeural Engineに比べて2倍高速になっているとのことだ。
Apple A17 Pro | Apple A16 Bionic | |
---|---|---|
プロセスノード | 3nm | 4nm |
トランジスタ数 | 190億個 | 160億個 |
CPUコア | 6 (高性能コア2基、高効率コア4基) | 6 (高性能コア2基、高効率コア4基) |
GPUコア | 6 | 5 |
ニューラル・コア | 16 | 16 |
ニューラル・エンジン処理性能 | 毎秒35兆回 | 毎秒17兆回 |
RAM | 8GB | 6GB |
CPUベンチマークのスコア
Appleによれば、A17 ProのCPUパフォーマンスコアはA16 Bionicより最大10%高速だという。実際のGeekBenchの最初の結果は、この発言を裏付けるものとなっている。
シングルコア性能では、A17 ProはA16より約10%高速だった。マルチコアでは、約5%高速だった。
A17 Pro | A16 Bionic | A15 Bionic | |
---|---|---|---|
シングルコアスコア | 2914 | 2643 | 2183 |
マルチコアスコア | 7199 | 6886 | 5144 |
A17 Proのベンチマークはシングルコア性能ではついにM1を上回ったが、マルチコア性能では依然M1を下回っている。
CPU電力効率
- Appleは、A17 ProとA16の効率比較を共有していない。
- Appleによれば、A17 Proは「最も効率的なモバイルCPU」であり、効率的なコアによって「競合他社」よりもワットあたり3倍優れたパフォーマンスを提供するとのことだ。
メモリ
A17 ProのRAMは8GBで、A16 Bionicの6GBから2GB増加した。
これにより、アプリの起動や切り替えがより高速でスムーズになるはずだ。AndroidスマートフォンはiPhoneよりもRAMが多い状態が続いているが、AppleはiPhoneのハードウェアとiOSソフトウェアを微調整できるため、少ないRAMでAndroidスマートフォンを上回る性能を発揮するのが一般的だ。
A17 Pro vs A16 GPUパフォーマンス
A17 ProのGPUは、A16 Bionicよりも3つの側面に重点を置き、さらに大きく改善されている:
- パフォーマンスと効率性
- 複雑なアプリケーション
- 新しいレンダリング機能
スピード
AppleはこのGPUを「プロクラス」と呼び、新しい6コア設計がA16より20%速いグラフィック性能を提供すると述べている。また、メッシュシェーディングなどの機能により、長時間のゲームセッションでも効率的なパフォーマンスを維持する。
実際のMetal GPUのベンチマークスコアが報告されているが、以下のような結果だ。
A17 Pro | A16 Bionic | A15 Bionic | |
---|---|---|---|
GPUスコア | 27158 | 22946 | 15186 |
A17 Proにおける、GPUコア数の増加が顕著に出ており、20%超という大きな性能向上に繋がっている。
ハードウェアベースのレイトレーシング
A17 Pro GPUのもう一つの大きな変更点は、ハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングだ。Appleによれば、より高いフレームレートでより滑らかなグラフィックスを実現するという。これは、A16 Bionicよりも4倍高速なレイトレーシングだ。
CAPCOMのようなデベロッパーは、この新しいA17 Pro GPUのおかげで、『バイオハザード4』や『バイオハザード・ヴィレッジ』のようなコンソールクオリティのゲームがiPhoneでプレイできるようになったと述べている。
USB 3
Appleによれば、A17 Proチップによって可能になったもうひとつの特徴は、iPhone 15 Proの新しいUSB-Cポートを介したUSB 3パフォーマンスだという。
データ転送速度は10Gbpsの転送速度(USB 3.2 Gen 2)を実現する。これは、A16 Bionicを搭載したiPhone 15のUSB-Cポートの480Mbpsと比べて20倍高速なものだ。
ただし、A15チップを搭載したiPad miniのUSB 3.1は5Gbpsで、iPhone 15やA16チップよりもはるかに高速な点も興味深い。
メディアエンジン
今年のA17 Proでは、専用のProResコーデックとProディスプレイエンジンに加えて、AV1デコーダーが追加された。Appleによれば、これによりiPhone 15 Proでのビデオストリーミング体験が向上するはずだという。
A17 ProとA16 Bionicの比較
一見すると、A17 ProのA16に対する改良点はそれほど大きくないように思えるかもしれないが、総合的に、世界で最もパワフルで効率的なモバイルチップであることには変わりない。特にグラフィックスとニューラルエンジンのパフォーマンスが顕著に向上している点は特筆に値する。ハードウェア・レイトレーシングに対応したゲームの登場も楽しみだ。
ほとんどの人にとって、これだけの性能が必要かは分からないが、最高のものを求める人にとっては、A17 Proは間違いない選択肢となる。
コメントを残す