絶滅した鳥「ドードー」を復活させるプロジェクトが始動 – 期待の一方で倫理的な批判も

masapoco
投稿日
2023年2月3日 6:41
Didus cucullatus

起業家のBen Lamm氏とハーバード大学の遺伝学者George Church氏が2021年に設立したColossal Biosciences社は、原産地のモーリシャス島で人間の干渉により急速に絶滅した後、動物の絶滅の象徴となった飛べない鳥「ドードー」を復活・再生させる計画を発表した。

ドードーの名前の由来は、植民地時代に人間の狩猟を恐れない姿を揶揄して、ポルトガル語で「愚か者」を意味する「ドードー」からきている。七面鳥より大きく、体重は23kg、ブルーグレーの羽、大きな頭、無駄のない小さな翼、頑丈な黄色の脚を持っていた。

Colossal社は既に、マンモスやタスマニアタイガーの再生にも取り組んでいることで知られている。その過程で、自然保護生物学やヒューマンヘルスケアなどにも応用できる新しい技術を開拓していきたいと考えているとのことだ。

とはいえ、ドードーの完全なクローンを作り上げられるわけではなく、「DNAを編集したそっくりな鳥」を世に放つことになるようだ。

絶滅種のゲノムを解読する際、科学者は劣化したDNAを扱うという難題に直面する。劣化したDNAからは、絶滅した動物のゲノムを完全に復元するのに必要な遺伝情報をすべて得ることはできない。

だが、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の生態学・進化生物学教授であり、Colossal社の古生物学者リーダーであるBeth Shapiro氏は、デンマークにあるドードーの遺体から抽出した遺伝物質をもとに、古代のDNAからドードーのゲノムを完全に解読する事を完了しているという。

科学者はゼロから生命を再現することはできないので、生きている動物の胚にドードー特有の遺伝子を入れ、その遺伝子情報を、ドードーに最も近いハト科の鳥ニコバル鳩や、絶滅した巨大な飛べない鳩であるロドリゲス・ソリティア(かつてモーリシャスに近い島に生息していた飛べない巨大ハト)などの近縁種の鳥の遺伝子と比較して、「ドードーをドードーたらしめる」突然変異を見つけ出すことが必要になる、とShapiro氏はCNNに語っている。

しかし、この動物を復活させるために必要なその後の作業、すなわち、生きているドードーの親戚の細胞に失われた鳥のDNAをプログラミングすることは、かなり困難なようだ。Shapiro氏は、精子と卵子の前駆体である始原生殖細胞を使った既存の技術を応用する事を想定しているとのことだ。

この方法は、卵子から始原生殖細胞を取り出し、実験室で培養し、目的の遺伝形質を持つ細胞を編集してから、同じ発生段階にある卵子に注入するというものだ。

しかし、Shapiro氏は、「こうした合成生物学的手法を完成させることは、鳥類の保護にとってより広い意味を持つでしょう。」と、CNNに語っている。この技術によって、科学者は特定の遺伝形質を鳥の種間で移動させることができ、生息地の縮小や気候の温暖化に伴う鳥の保護に役立てることができるのだ。

「この技術はニワトリで使えますが、これが鳥の生態系を横断する多くの異なる鳥で使えるようになれば、鳥類の保護に大きな影響を与えることになるでしょう。」

Shapiro氏は、究極の計画は、人間によって絶滅する前に生息していたモーリシャスに、この鳥を再導入することだと言う。

このような方法で作られた鳥は、その祖先に似たハイブリッドになるであろう。

とはいえ、こういったプロジェクトにはもちろん倫理的な批判もある。

欧州分子生物学研究所のEwan Birney氏は、The Guardian誌に対し、「”象徴的な鳥”であることに間違いはないでしょう。しかし、問題は、『できる』ではなく、『やるべきか』です。できることだからやるべきだという人もいますが、私はそれが何の役に立つのか、これが本当に最適な資源配分なのかどうか、よくわかりません。絶滅する前に、今ある種を救うべきなのです。」と、述べている。

一方で、Colossal Biosciences社は、これらの動物を復活させることだけが目的ではないと主張している。

これらの壮大な計画は、自然保護研究のためのムーンショットとしても機能し、動物たちが現在の生物多様性の危機を生き残るための有用なツールが途中で発見されることが期待されている、と同社は述べている。

「私たちは今、明らかに絶滅の危機に瀕しています。そして、今起きている絶滅の危機について考える動機付けとなるようなストーリーと興奮を人々にもたらすことが、我々の責任です。特に、鳥類と鳥類保護に焦点を当てた遺伝子レスキューツールのさらなる発展を期待しています。」と、Shapiro氏はCNNに語った。

Colossal社はこのプロジェクトのために、2021年以降、さらに1億5000万ドルを調達し、合計2億2500万ドルを調達している。同社の最新の投資額は、15億ドルに達しているとのことだ。。


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