Googleの新たなカスタムチップ「Tensor G2」について判明したこと全て

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本日、Googleの新たなスマートフォン「Pixel 7」と「Pixel 7 Pro」が発表された。Pixel 7シリーズには、Google Tensorチップセットの後継機がである、「Tensor G2」が搭載されている。このチップセットは、GoogleがSamsung Semiconductorと共同で構築したセミカスタム・シリコンの第2世代だ。

目次

スペックだけ見れば、各社のミドルレンジ以下の性能

オリジナルのGoogle Tensorは、ベンチマークテストではあまりパッとしないチップであったが、そこはGoogleとして求めている機能をこなすための設計思想の反映の結果であり、同社は画像処理、機械学習、および特定のユーザー体験を強化するためのセキュリティシリコンとしての性能を優先して開発を行っていたためだ。ただ、設計の問題か、製造プロセスの問題か、発熱に関して多少の問題はあった。それでも全体としては素晴らしい体験をユーザーにもたらしていた。

Googleは、Tensor G2でも同じアプローチを取っている。チップのスペックを見ると、各社のフラッグシップ製品に搭載されているチップに比べるとはるかに見劣りするミドルレンジクラス以下の性能しか持っていない。しかし、Pixel 7シリーズは、Googleの次世代カスタムAIと組み合わせることで、Googleのカスタムスピーチ、コンテキストサポート、イメージングとビデオ、およびセキュリティ体験の向上に繋げている。

Pixel発表イベントのステージで、Google副社長のブライアン・ラコウスキ(Brian Rakowski)氏は、「Tensor G2がPixel 7の音声機能を強化し、アシスタントの問い合わせの高速化をはじめ、音声翻訳や音声入力などを実現する」と述べている。音声入力はキーボードを使うよりも2.5倍ほど速く、より多くの人が頼る機能になっていると指摘した。また、音声入力中に「ハートの目の猫の絵文字」と発言すると、絵文字が入力されるなど、絵文字を視覚的に説明することもできるようになるという。

Pixel 7とPixel 7 Proでは、Tensor G2によって、ピンぼけ写真を鮮明にできる「Photo Unblur」や、画質をあまり落とさずに写真をデジタル的に拡大する「超解像ズーム」も可能になった。その他の機能としては、Tensor G2では、夜景写真の処理速度が2倍になり、動画のフォーカスを芸術的に演出するシネマティックぼかしモードが搭載されている。

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Photo Blur機能 (Image Credit: Google)

Tensor G2のスペックと前モデルとの比較

Tensor G2チップは、先代と同じく2つの「Big」CPUコア、2つの「Medium」コア、4つの「Small」コアを備えている。クロック速度は、文字通りBigコアとMediumコアの間でわずか5MHzと10MHzと、ほんの少し高くなっている。GoogleはBigコアとSmallコアのArm Cortex X1とA55の採用には変更がない。唯一の大きなアップデートとなるのは、Tensor G2のMediumコアが、A76の代わりにArm A78を使用しているところだろう。また、Googleによると、G2には「次世代」TPU AIアクセラレータも搭載されているようだ。

スクロールできます
Google Tensor G2Google Tensor
CPU・Arm Cortex-X1 (2.85GHz):2コア
Arm Cortex-A78 (2.35GHz):2コア
・Arm Cortex-A55 (1.80GHz):4コア
・Arm Cortex-X1 (2.80GHz):2コア
・Arm Cortex-A76 (2.25GHz):2コア
・Arm Cortex-A55 (1.80GHz):4コア
GPUArm Mali-G710 MP7Arm Mali-G78 MP20
キャッシュ・L3キャッシュ:4MB
・システムキャッシュ:8MB
・L3キャッシュ:4MB
・システムキャッシュ:8MB
RAMLPDDR5LPDDR5
機械学習ユニット次世代のTensor Processing UnitTensor Processing Unit
メディアデコードH.264, H.265, VP9, AV1H.264, H.265, VP9, AV1
モデム4G LTE
5G sub-6Ghz and mmWave
4G LTE
5G sub-6Ghz and mmWave
製造プロセスSamsung 5nmSamsung 5nm

※10月11日追記:Tensor G2は製造プロセスの変更がなく5nmのままであることが判明しました。お詫びして訂正いたします。

上の表にあるように、オリジナルのTensorとTensor G2との間には、ほんの少しコアに変更がなされているだけであり、恐らくベンチマークテスト上では大きな向上が見込めるような内容ではなさそうだ。

大きく変わった部分は、ミドルコアのCortex-A76が、Cortex-A78への変更されたことだが、これにより、面積と消費電力をわずかに増やす代わりに、性能を約25%向上させることができている。しかし、他のCPUコアはほとんど変わらず、2世代前の強力なCortex-X1(最新世代は、2022年6月に発表されたCortex-X3で、2022年後半に登場予定のSnapdragon 8 Gen 2に搭載されると見られる)がパフォーマンス作業用、4つの低消費電力Cortex-A55がバックグラウンドタスク用となっている。CPUの全体的なレイアウトはほとんど変わらないが、ゲームやその他の持続的な作業負荷に対しては少し高い性能を提供するはずだ。

GPUのレイアウトも同様に変更されている。こちらは、Armの2021年製Mali-G710マイクロアーキテクチャに移行することで、Mali-G78と比較して性能と電力が20%向上し、機械学習は最大35%向上している。ただし今回、Googleは、Mali-G78での20コアから、Mali-G710では7コアへと、コア数を大きく減らしている。効率の向上を考えてのことだろうか。とは言え、アーキテクチャが違うので、単純にコア数のみでは性能の比較はできない。

様々なテストによると、新しいMali-G710の1コアあたりの性能は、Mali-G78と比較して2倍から3倍に相当する性能を提供することが分かっている。このことを考えると、G2のグラフィックス性能は、クロック速度によっては、オリジナルのTensorを上回る可能性もありそうだが、Mali-G710 MC10(10コア)を採用するDimensity 9000+やSnapdragon 8+ Gen1よりも、性能面で劣ることは間違いないだろう。

Snapdragon 8cx Gen 3

また、恐らく最も大きな違いは、GoogleがTensor G2に次世代のカスタムTensor Processing Unit(TPU)を導入していることだ。画像パイプラインに密接に結合されたTPUは、リアルタイム翻訳から画像・動画処理まで、幅広い機械学習タスクを処理する。

加えて、このチップセットには、サムスンが先日発表した5Gモデム「Exynos 5300」も採用されている。この新しいモデムに関する詳細は不明だが、より高速で電力効率に優れていることが予想される。第1世代のTensorチップは、バッテリーの消耗が早く、ここが問題になっていたが、モデムも省電力化されることで、改善が期待できる。その他の接続機能としては、GPS、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2、NFC、USB Type-C 3.2が搭載されている。

古いCPUコンポーネントと比較的コンパクトなGPUクラスタにより、GoogleのTensor G2は、Qualcomm Snapdragon 8+ Gen 1、Mediatek Dimensity 9000+、Samsung Exynos 2200、Apple A16 Bionicなどのフラッグシップチップとは、ベンチマークの結果は、恐らくライバルにはならなそうだ。

Tensor G2と各社の現行フラッグシップチップとの比較

最近のベンチマークから分かるように、AppleとQualcommの最新チップセットは、オリジナルのTensorやTensor G2をはるかに凌ぐパフォーマンスを発揮する。Googleのチップセットは、Mediatekの非常に高性能なDimensity 9000+と同じGPUコアを共有しているが、コア数が少ないため、高性能ゲームでのフレームレートが低くなることは間違いないだろう。

Qualcommが8+ Gen 1モデルの過熱を解決するために採用したTSMCのN4ノードは、より効率的だ。Googleはカスタム機械学習シリコンでまだ十分な影響力を持っているかもしれないが、ライバルも最近はこの分野に力を入れているため、その差が縮まるのも時間の問題かも知れない。

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Google Tensor G2Apple A16 BionicSnapdragon 8+ Gen 1Exynos 2200
CPU・Arm Cortex-X1 (2.85GHz):2コア
・Arm Cortex-A78 (2.35GHz):2コア
・Arm Cortex-A55 (1.80GHz):4コア
・Everest (3.46GHz):2コア
・Sawtooth (2.02GHz):4コア
・Cortex-X2 (3.2GHz):1コア
・Cortex-A710 (2.75GHz):3コア
・Cortex-A510 (2.0GHz):4コア
・Cortex-X2 (2.8GHz):1コア
・Cortex-A710 (2.52GHz):3コア
・Cortex-A510 (1.82GHz):4コア
GPUArm Mali-G710 MP7Apple 5-core GPUAdreno 730Xclipse 920
キャッシュ・L3キャッシュ:4MB
・システムキャッシュ:8MB
・システムキャッシュ:24MB・L3キャッシュ:6MB
・システムキャッシュ:4MB
不明
RAMLPDDR5LPDDR5LPDDR5LPDDR5
機械学習ユニット次世代 Tensor Processing Unit16-core Neural EngineHexagonDual-core NPU
メディアデコードH.264, H.265, VP9, AV1H.264, H.265, VP9H.264, H.265, VP9H.264, H.265, VP9, AV1
モデム4G LTE
5G sub-6Ghz ミリ波
4G LTE
5G sub-6Ghz ミリ波
4G LTE
5G sub-6Ghz  ミリ波
4G LTE
5G sub-6Ghz ミリ波
製造プロセスSamsung 5LPE (5nm)TSMC N4 (4nm)TSMC N4 (4nm)Samsung 4LPE (4nm)

だが、Qualcomm、Mediatek、Samsungの次世代チップセットも、2023年早々に登場することを考えると、Googleが最新のArmv9アーキテクチャに移行していないことはやはり残念でならない。各社のフラッグシップチップは、強力なCortex-X3やCortex-A715のCPUが含まれており、更に大きく性能が向上することが予想される。Pixel 7シリーズは今のところそれほど性能が劣っては見えないが、半年後にどう感じるだろうか。

Arm Cortex X3 Cortex A715 CPU cores 768w 432h.jpg

確かに、日常的な作業では少し古いプロセッサの性能でも恐らく不満はないだろう。より要求の高いアプリが突然登場しない限りは、問題にはならないと思われる。

だが問題になるのは、この老朽化した設計が、電力効率に関して競合他社に比べてはるかに劣ってくることだろう。特に競合他社はより新しく、より効率的な製造プロセスの恩恵を受けているため、その差は大きくなる一方だ。Googleは、Tensor G2のすべてのサブシステムをアップグレードして、日常的なワークロードの消費電力を削減したと主張しているが、それだけで、この差を縮めることができるだろうか。ライバルメーカーが設計した性能重視のSoCとは全く異なる哲学を持つTensor G2が成功するかどうかは、消費電力が決め手となりそうだ。

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