日本の国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、標準的な直径の光ファイバーによるデータ伝送の新速度記録を樹立した。1芯の光ファイバーに55の「モード」の信号を流すことで、1.53ペタビット/秒(Pbit/s)のデータ転送が可能になったということだ。
NICTの研究チームは、55種類の異なる光の周波数で情報を符号化(多重化)することにより、1秒間に約1.53ペタビットという帯域幅を達成した。これは、全世界のインターネットトラフィック(推定毎秒1ペタビット以下)を1本の光ファイバーケーブルで伝送できる帯域幅である。日常的に聞く、ギガビット(Gbit)単位からすると、途方もない転送速度だ。
技術的には、史上最速のデータ転送速度ではない。これまでの史上最速の記録は、1.84ペタビット/秒という驚異的な速度を記録した最近の光チップがその栄誉に輝いているが、この技術はまだ実験的なものであり、実用化にはほど遠いものだ。
しかし、今回の新記録は、標準的なクラッド径0.125mmの光ファイバーで達成されたことが大きな特徴となる。つまり、既存のインフラとほぼ互換性があるのだ。
NICTによると、「このデモは、将来の大容量バックボーン ネットワーク向けのマルチモード伝送の可能性を示している」とのことで、既存のネットワークの大幅なアップデートにも繋がる可能性を示している。
この技術は、光の周波数の違いを利用したものだ。可視光と不可視光のスペクトルの中で、それぞれの「色」は他のすべての光とは異なる独自の周波数を持っているため、独自の情報ストリームを伝送することができるのだ。研究者らは、332ビット/秒/Hz(1Hzあたりの1秒あたりのビット数)というスペクトル効率を引き出すことに成功した。これは、2019年に行われた、105ビット/秒/Hzのスペクトル効率を達成した、彼らの以前の最高の試みよりも3倍高い効率だ。
研究者たちは、184の異なる波長を通してCバンドの情報を伝送することに成功した。これは、光ファイバーケーブル内で情報を同時に伝送するために作られた、重ならない別々の周波数である。光ファイバーケーブルで送信する前に、光は55の別々のデータストリーム(モード)を送信するように変調された。変調された後(現在配備されているほとんどの光ファイバーケーブルと同様)、すべてのデータを伝送するために1つのガラスコアが必要だった。データが送信されると(184の波長と55のモードにわたって)、受信機は異なる波長とモードをデコードしてそのデータを収集する。実験では、送信側と受信側の距離を25.9kmに設定した。
なお、伝送容量についても、周波数帯域の拡大により、まだ改善の余地があるとしている。
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