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我々は300年もの間、ニュートンの法則について勘違いしていた

かのIsaac Newtonは、1687年に著した『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』によって古典力学を創始し、我々の宇宙で物体の運動がどのように支配されているかを説明する3つの普遍的な原理を概説した。

これはその後300年以上支持され、人類の発展に寄与してきたが、ヴァージニア工科大学の哲学者Daniel Hoek氏は、最近『Philosophy of Science』誌に掲載された論文の中で、私たちは偉大な物理学上の成果である「運動の第1法則」の正確な表現について、ずっと間違って解釈していたのかもしれないと主張している。原因はラテン語“quatenus”の誤訳にあると。

『Scientific American』誌のStephanie Pappas氏が指摘しているように、Newtonの運動法則は一般相対性理論や、その間に何世紀もかけて開発された他の理論に取って代わられたので、これが現在の物理学会に問題を引き起こすことはないと思われる。しかし、今日でも彼の理論は、地球上の現象を予測するための非常に利用しやすい近似値を提供しているため、非常に重要である。

大いなる誤訳

Hoek氏は、Newtonのラテン語版『プリンキピア』の1729年の英語原文に「不器用な誤訳」があることを発見し、「記録を正したい」と考えたのだ。

問題の翻訳は、Newtonの死後、1729年にAndrew Motteがラテン語から英語に翻訳した際に起こった。彼は、以下のように翻訳したのだ。

Every body perseveres in its state of rest, or of uniform motion in a right line, unless it is compelled to change that state by forces impress’d thereon.

(すべての物体は、そこに作用する力によってその状態を変えざるを得ないのでない限り、静止した状態、あるいは直線を描いて一様に運動する状態を維持する。)

この翻訳に基づき、それ以来、無数の学者や教師がNewtonの運動の第1法則を、「物体は外力が介入しない限り、直線上を動き続けるか、静止したままである」と解釈してきた。

だが、タフツ大学の哲学者であり、Newtonの著作の専門家であるGeorge Smith氏は言う。「第1法則の要点は、力の存在を推論することです。Newtonが執筆していた当時、物体を動かすのに力が必要であることはまったく当然視されていなかった。たとえばAristotleは、天体はエーテルと呼ばれる理論上の物質でできており、自然に円を描いて動くと考えていました。Newtonは著作の中で、こうした古い考えをすべて否定し、何の力も作用していない物体など存在しないと指摘したのです」。

そして、1999年、2人の学者が、見落とされていたラテン語の“quatenus”の訳語を発見した。I. Bernard Cohen氏と、Anne Whitman氏による新たな『プリンキピア』の翻訳では、以下のようにMotte版からの変更が行われているのだ。

Every body perseveres in its state of being at rest or of moving uniformly straight forward, except insofar as it is compelled to change its state by the forces impressed.

(すべての物体は、その状態を変えざるを得ない力によって変化させられる場合を除き、静止している状態、あるいは一様に直進している状態を維持する。)

Hoek氏にとって、これがすべての違いを生んだ。同氏によれば、この新しい読み方は、「物体に力が加わらなかった場合に物体の運動量がどのように維持されるか」を説明するのではなく、「物体の運動量のあらゆる変化、つまり、あらゆる衝撃、傾斜、旋回、噴出が外力によるものである」ことをNewtonが意味していることを示しているという。

「この忘れ去られた一語(insofar)を元の位置に戻すことで、物理学の基本原理のひとつが本来の輝きを取り戻したのである」と、Hoek氏は説明する。

しかし、その重要な訂正が広まることはなかった。現在でも、何世紀にもわたって繰り返されてきたことの重みに抗して、支持を得るのに苦労しているかもしれない。

「私の読みはあまりに荒唐無稽で型破りで、まともに取り合わないという人もいます。他の人たちは、それがあまりにも明らかに正しいので、ほとんど主張する価値がないと考えています」と、同氏は言う。

これは確かにただの意味論に聞こえるかも知れない。加えて、Hoek氏もこの再解釈が物理学を変えることはないし、これからも変えることはないだろうと認めている。しかし、Newton自身の著作を注意深く調べると、先駆的な数学者が当時何を考えていたかが明らかになる。

もし、物体が力によってそうでなくなるまで直線で進むという一般的な解釈をするならば、Newtonはなぜ外力のない物体について法則を書いたのだろうか?

実際、Newtonは運動の第一法則を説明するために3つの具体的な例を挙げている。Hoek氏によれば、最も洞察力のある例は回転するコマである。

「この例をあげることによって、Newtonは、彼の理解する第一法則が、力を受けて加速する物体にどのように適用されるのか、つまり、現実世界の物体にどのように適用されるのかを明確に示したのです」。

Hoek氏によれば、この解釈の修正によって、Newtonの最も基本的な考え方のひとつが、当時としてはまったく革命的なものとなったという。つまり、惑星、恒星、その他の天体はすべて、地球上の物体と同じ物理法則に支配されていると事を彼は示していたのだと

「原子の群れから渦巻く銀河まで、速度の変化も方向の傾きも、すべて運動の第1法則に支配されています」と、Hook氏。

改めて天才の偉業に敬意を表したい。


論文

参考文献

研究の要旨

Newtonの運動の第1法則は一般的に、力のない物体の運動のみを支配すると理解されている。本稿では、この法則が実際にはより強力で一般的な原理であることを、文章的・概念的根拠に基づいて論じる。第1法則は、どのような物体であっても、その運動状態を変化させることができる範囲を限定している。この誤解は、Newtonの死の数年後に出版されたNewtonの『プリンキピア』の最初の英訳における誤りにまで遡ることができる。

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