10月11日(現地時間)、NASAは小惑星ベンヌから新たに採取されたサンプルの研究結果を発表した。
先月地球に持ち帰られたサンプルの予備評価は、NASAのOSIRIS-REx(Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification and Security-Regolith Explorer)科学チームによって行われた。当初NASAは、「予想外に多量の物質を含んでいること」から、公表が遅れることを告知していた。
NASAによれば、小惑星ベンヌから回収されたサンプルの初期の評価では、「水と高炭素含有量の証拠を示している」とのことで、生命の基本的な構成要素を含んでいることが確認出来たとのことだ。
「OSIRIS-RExのサンプルは、これまで地球に届けられた中で最大の炭素を多く含む小惑星のサンプルであり、今後何世代にもわたって、科学者が私たちの惑星の生命の起源を調査するのに役立つだろう。私たちがNASAで行っていることはほとんどすべて、私たちが何者で、どこから来たのかという疑問に答えようとしている。OSIRIS-RExのようなNASAのミッションは、地球を脅かす可能性のある小惑星についての理解を深めるとともに、その先にあるものを垣間見せてくれるだろう。サンプルは地球に戻ってきましたが、まだ多くの科学が残されています」と、NASAのBill Nelson長官は述べている。
小惑星ベンヌのサンプルに対する多様な分析
NASAジョンソン宇宙センターの科学者たちは、サンプルの研究のために特別に作られたクリーンルームで10日間にわたって作業した。
走査型電子顕微鏡による画像のほか、X線回折、化学分析、赤外線測定など、さまざまな分析が行われた。
X線画像は、粒子のサンプルの3Dモデルを作成するために使用された。その結果、さまざまな特徴を誇る豊かな内部が明らかになり、その中には、NASAが現在サンプルに含まれている可能性が高いと信じている、豊富な炭素と水の最も初期の証拠も含まれていた。
NASAの科学者たちは、今後数十年のうちに、このサンプルの継続的な研究によって、我々の太陽系のような惑星近傍の形成過程や、生命が地球上でどのように誕生したかを含む重要な洞察が得られることを期待している。
また、OSIRIS-RExによって得られた情報は、ベンヌのような地球近傍天体が衝突の危険をもたらすほど接近した場合に、地球を確実に防衛するのに役立つという点で、極めて重要なものになる可能性があるため、惑星の安全対策も現在の研究課題である。
OSIRIS-REXミッションの次のステップ
NASAのOSIRIS-RExミッションは、地球近傍小惑星ベンヌの探査を目的としていた。OSIRIS-REx “は “Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security-Regolith Explorer”の略である。このミッションの主な目的は、ベンヌの表面から物質のサンプルを採取し、科学的調査のために地球に持ち帰ることであった。
今後2年間、OSIRIS-RExミッションチームは、ミッションの目的と科学目標に沿って、可能な限り多くの情報を得るための追加解析を行う。
分析は、9月に地球に持ち帰られたサンプルの限られた部分を使って実施され、サンプルキャニスターに含まれる石や塵の70%近くはジョンソン宇宙センターで保存され、その後数十年にわたって世界中の科学者が利用できるようになる。
現在、世界中の200人近い科学者が小惑星サンプルの特性を測定するための分析を行う計画が進行中である。NASAはまた、今年後半にサンプルをスミソニアン博物館をはじめとする多くの施設や教育センターに貸し出し、一般公開すると発表している。
アリゾナ大学ツーソン校のOSIRIS-REx主任研究者であるDante Lauretta氏は、「小惑星ベンヌの塵や岩石の中に保存されている古代の秘密を覗き込むとき、我々は太陽系の起源に深い洞察を与えるタイムカプセルの鍵を開けているのです。炭素を豊富に含む物質や水を含む粘土鉱物の豊富な存在は、宇宙の氷山の一角に過ぎません。これらの発見は、長年にわたる献身的な協力と最先端の科学によって可能となったもので、我々の天体の近隣だけでなく、生命の始まりの可能性を理解する旅へと我々を駆り立てます。ベンヌから発見されるたびに、私たちは宇宙の遺産の謎の解明に近づいているのです」と語る。
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