太陽光発電パネルと言えば、ガラスの様な平らな板状の物をイメージするだろうが、新たな研究では、この表面に、点字ブロックのような小さなドームを設けることで、よりその発電効率を高めることが出来る事が示唆されている。それも、わずかな向上ではなく、最大6割以上もの大幅な向上が見られると言うことだ。
トルコのアブドゥッラー・ギュル大学の研究者らは、太陽光発電パネルの表面にシリカで作った球状のナノシェルを埋め込むなど、表面の形状を工夫してきた。このナノシェルは、太陽光を捕捉して循環させ、デバイスが太陽光からより多くのエネルギーを取り込めるようにする。この新しい研究のために、研究者らは、ドーム状のバンプが有機太陽電池の表面をどのように向上させるかについて複雑なシミュレーションを行った。
研究チームは、P3HT:ICBAと呼ばれる有機ポリマーを活性層とし、その上にアルミニウム層とPMMA基板を載せ、さらにITO(酸化インジウムスズ)の透明保護層で覆った太陽電池を研究した。このサンドイッチ構造は、ドーム全体、つまり研究チームが言うところの「半球状のシェル」全体を通して保たれている。
研究者らは、3D有限要素解析(FEA)と呼ばれるものを実施した。これは、複雑なシステムの要素を管理しやすい塊に分解し、より良いシミュレーションと解析ができるようにするものである。
平坦な表面と比較して、凹凸が点在する太陽電池は、光の偏光に応じて36%および66%の光吸収率の向上を示した。また、バンプは平らな面よりも広い方向から光を取り込むことができ、最大82度の角度をカバーすることができた。
これはまだシミュレーションの段階で有、実際に動作するプロトタイプなどは製作されていないが、原理がうまくいけば、屋上ソーラーだけでなく、ウェアラブル・エレクトロニクスのように光の状態が変化するシステムにも役立つ可能性がある。
「改良された吸収特性と無指向性特性により、提案された半球殻状の活性層は、バイオメディカルデバイス、発電窓や温室、モノのインターネットなどのアプリケーションなど、有機太陽電池のさまざまな応用分野で有益であることが判明するでしょう」と、この研究の著者であるDooyoung Hah教授は語っている。
論文
- Journal of Photonics for Energy: Hemispherical-shell-shaped organic photovoltaic cells for absorption enhancement and improved angular coverage
参考文献
研究の要旨
有機薄膜太陽電池の構造として半球殻形状を提案し、光吸収と角度被覆の両方を高めることを目的とする。三次元有限要素解析法を用いて、半球シェル形状の活性層内の吸収スペクトルを調べた。その結果、入射光が横電(TE)偏光と横磁(TM)偏光の場合、提案構造は平板構造のデバイスに比べてそれぞれ66%と36%の吸収率向上をもたらすことが明らかになった。また、提案された半球状シェル構造は、以前に報告された半円筒状シェル構造と比較して、13%(TE)および21%(TM)という高い吸収改善効果があることもわかった。提案された構造の角度被覆率も改善され、81度(TE)および82度(TM)に達し、入射角が不規則に変化するウェアラブル・エレクトロニクス・アプリケーションに非常に有用である。これらの改善は、デバイスの半球シェル形状によって可能になった、活性層を介した優れた光結合と導光によるものと考えられる。
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