雷というと、地上に落ちるイメージが多いと思うが、実はその驚異は雲の上で起こることが多い。このたび科学者たちは、これまで観測された中で最も強力な「巨大ジェット」雷の詳細を発表した。この雷は、通常の稲妻60本に相当するという、驚異のエネルギーを宇宙に向かって吹き上げている。
- 論文
- Science Advances : Upward propagation of gigantic jets revealed by 3D radio and optical mapping
- 参考文献
巨大ジェットとは、超高層雷放電の一種で、成層圏から中間圏に渡って伸びる強力な電気エネルギーの爆発である。この現象は、嵐の際に大気圏上層部で発生する過渡現象に属し、その高度のため観測が困難だ。そのため、この現象がどのように発生するのか、またなぜ発生するのか、ほとんど分かっていない。
今回、ジョージア工科大学研究所(GTRI)とテキサス工科大学、ロスアラモス国立研究所などを含む研究グループは、これらの巨大なジェットの1つを、これまで以上に詳細に研究した。この現象は2018年5月にオクラホマ上空で発生した嵐で、地上のLightning Mapping Array、宇宙空間のGeostationary Lightning Mapper (GLM) と静止気象衛星 (GOES) ネットワーク、低照度カメラで写真を撮る市民科学者など複数の機器で同時に撮影されたものである。
このように、同じ現象を多くの異なる視点からとらえることで、科学者チームはこれまでよりもはるかに詳細な研究を行うことができた。その結果、この巨大な噴流はこれまでで最も強力で、約300クーロンの電荷を上空に投げ出すことが判明した。ちなみに、通常の稲妻は5クーロン程度である。
「私たちは、本当に高品質のデータでこの巨大なジェットを3次元でマッピングすることができました。衛星とレーダーデータを使って、放電の非常に高温のリーダー部分が雲の上のどこにあるのかを知ることができました。」と、ジョージア工科大学研究所(GTRI)の研究員で論文の責任著者であるLevi Boggs氏は述べている。
また、ジェット内のさまざまな構造から、さまざまな種類の電磁波が放射された。高度22〜45kmで超高周波(VHF)帯の電波が、高度15〜20kmの雲底で光が検出された。このことは、巨大ジェットや雷の構造について多くのことを明らかにしている。
「雷からのVHF帯の電波は、発達中の雷の先端にあるストリーマと呼ばれる小さな構造物から放射され、強い電流はこの先端のかなり後方にあるリーダーという導電性のチャネルを流れるという、研究者が疑ってはいたがまだ証明されていなかったことが、今回のVHFと光の信号で決定的になった」と、この研究の著者であるSteve Cummer氏は述べている。
ストリーマは約204℃と比較的低温だが、リーダーは4,425℃を超える猛烈な温度に達することが判明した。しかし、この巨大な噴流についてはまだ不明な点が多く、特に、なぜ上向きに噴射するのかについてはよく分かっていない。とはいえ、科学者たちはそれぞれの理論を持っている。
Boggs氏は、「何らかの理由で、雲から地面への放電が抑制されることが多いのです。負の電荷が蓄積され、嵐の頂上の条件によって、通常は正である最上部の電荷層が弱められると考えられます。通常見られる雷放電がない場合、巨大なジェット機が雲中の過剰な負電荷の蓄積を緩和しているのかもしれません。」と述べている。
雷の謎にさらに光を当てるためには、さらなる研究が必要だ。
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