化学は、自然界に存在しない性質を持つ物質を数多く生み出してきた。例えば、銅酸化物やコバルト酸化物、ルテニウム(Ru)酸化物と呼ばれる化合物における高温超伝導は、天然に存在する金属や合金の超伝導とは大きく異なっており、しばしば“非”従来型超伝導と呼ばれる。これらの物質はすべて研究室で人工的に生成した物であり、この事実は非従来型超伝導は自然現象ではないと言う考えに繋がってきた。
だが今回、エイムズ国立研究所の物理学者は、自然界に「ミアサイト(miassite)」という鉱物として存在するRh17S15の合成試料において、これが高温超伝導体に見られるような特性を示す、非従来型超伝導である有力な証拠を手に入れた事を報告している。
超伝導体は、エネルギーを失うことなく電気を伝導するため、魅力的であると同時に非常に有用である。これは通常、電子がクーパー対と呼ばれる同一性を共有することで、原子の間を比較的簡単に通り抜けることができるおかげである。
非従来型超伝導体のクーパー対は、超伝導に関する初期のモデルでは説明されていなかった方法で結合しており、その方法は、より高い温度でも現れることを意味している。
ミアサイトは自然界に存在するが、自然界に存在するミアサイトの破片が、非従来型の超伝導体として機能するのに必要な純度を持つとは考えにくいことは指摘しておく価値がある。
アイオワ州立大学の物理学・天文学特別教授であり、エイムズ研究所の科学者でもあるPaul Canfield氏は、「ミアサイトはロシアのチェリャビンスク州のミアス川の近くで発見された鉱物ですが、一般的には整った結晶として成長しない珍しいものです」と、説明する。彼はこのプロジェクトのために高品質のミアサイト結晶を合成した。
「直感的には、これは集中的な探索の過程で意図的に作られたものであり、自然界に存在するはずがないと考えるでしょう。しかし、実際はそうだということが分かりました」とアイオワ州立大学の物理学者Ruslan Prozorov氏は述べている。
ミアサイトの非従来型超伝導を証明するために、弱い磁場に対する物質の反応を測定する、3つの異なるテストが用いられた。
この発見は、量子科学などの分野を発展させるために、新しい新奇な材料を見つけようとする努力の一環としてなされた。そこで研究チームは、高融点元素(ロジウム)と揮発性元素(硫黄)を組み合わせたミアサイト(Rh17S15)にたどり着いた。
Canfield氏は、「純粋な元素の性質とは逆に、私たちは、蒸気圧を最小限に抑えて結晶を低温成長させることができる、これらの元素の混合物の使い方をマスターしてきました」と言う。
超伝導体は、MRIスキャナーや大型粒子加速器などの技術にすでに広く使われているが、ここにはさらに多くの可能性がある。ミアサイトのユニークな性質を考えれば、その可能性の大きな部分を占めるかもしれない。
非従来型超伝導体は複雑かもしれないが、物理学における新たな発見や超伝導技術の新たな用途を解き放つことが期待できるため、エキサイティングでもある。
「非従来型超電導の背後にあるメカニズムを解明することは、超電導体を経済的に正しく応用するための鍵となります」とProzorov氏は述べている。
論文
- Communication Materials: Nodal superconductivity in miassite Rh17S15
参考文献
- Ames Laboratory: Scientists reveal the first unconventional superconductor that can be found in mineral form in nature
- bbb
研究の要旨
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